I 呼吸器

【まとめ】呼吸不全の病態と酸素化の指標

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呼吸不全の定義

呼吸不全の定義は動脈血酸素分圧(PaO2)≦60[Torr]の状態。

動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の違いによって、Ⅰ型とⅡ型に分けられる。

Ⅰ型:PaO2≦60[Torr]かつPaCO2≦45[Torr]

Ⅱ型:PaO2≦60[Torr]かつPaCO2≧45[Torr]

また呼吸不全では肺胞から動脈への酸素の受け渡しが障害されるので、肺胞酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)に差が生じる。すなわち、AaDO2(=PAO2-PaO2)が開大する。

ただし、呼吸不全の中でも純粋に換気のみが障害される場合は、そもそも酸素が肺まで到達しないため、AaDO2は開大しない。(例:神経・筋の障害による呼吸運動の低下)

呼吸不全の原因

呼吸不全の原因として換気血流拡散のうち、どこかの障害が考えられる。

具体的には、肺胞低換気、AVシャント、換気血流比不均等、拡散障害によっておこる。

換気の障害(肺胞低換気)

換気とは、呼吸運動によって空気を肺胞へと運ぶ働きのこと。

肺胞低換気では、そもそも空気が運ばれてこないため、ガス交換を行えずにPaO2、PaCO2となる。(=Ⅱ型呼吸不全)

もちろんAaDO2も開大しない。

原因

  • 経・筋の障害による呼吸運動の低下=筋ジストロフィー、ALS、ギラン・バレー症候群(GBS)など
  • 不可逆性の気道抵抗の上昇COPD、肺結核後遺症

血流の障害(AVシャント)

AVシャント(肺静脈短絡路)とは、静脈血が肺胞を介さずに直接動脈血に流れ込むこと。

ガス交換が行われない血流が存在するので、全体としてPaO2となる。

ただし二酸化炭素は酸素に比べ20倍拡散しやすいため、シャントによる影響はほとんど出ずにPaCO2となる。

したがって、PaO2PaCO2となる。(=Ⅰ型呼吸不全)

原因

  • AVシャント=肺動静脈瘻、先天性チアノーゼ疾患など

換気と血流の障害(換気血流比不均等)

換気血流比(VA/QC)とは、肺胞内の酸素と肺毛細血管の血流の量的なバランスのこと。1に近づくほど望ましい。

すなわち、換気と血流のどちらかが障害されると換気血流比は低下する。

「換気血流比」不均等とは、換気血流比が大きい部分(ガス交換)と、小さい部分(ガス交換)低換気)部分が混在しているということである。

ガス交換が低下している部分を通った血液はPaO2↓となるが、PaO2は正常値がほぼ上限値であるため、ガス交換が亢進している部分を通った血液と合わさってもPaO2が頭打ちになり、全体としてPaO2となる。

また、PaCO2はガス交換の亢進・低下に伴い上下するが相殺し合うため、全体として換気血流比の影響を受けず、PaCO2となる。

したがって、PaO2PaCO2となる。(=Ⅰ型呼吸不全)

原因

  • 換気×血流〇=COPD、肺結核後遺症、無気肺など
  • 換気〇血流×=AVシャント(肺動静脈瘻、先天性チアノーゼ疾患)、肺血栓塞栓症(PTE)など

POINT健常人では血流は重力によって肺の下部に多く流れているので、換気血流比はもともと1ではない。換気と血流にそれ以上に差がおこると呼吸不全となる。

拡散の障害(拡散障害)

拡散とは、物質が濃度の高い方から低い方へと移動する現象のこと。

ガス交換においての拡散とは、換気後に肺胞中から肺胞壁を介して血中の赤血球のヘモグロビンまで酸素が移動することである。二酸化炭素ならその逆の経路で拡散する。

すなわち肺胞内~肺胞壁~血中のどこかが障害されることで拡散障害がおこり、PaO2となる。

ただし二酸化炭素は酸素に比べ20倍拡散しやすいため、拡散障害の影響はほとんど出ずにPaCO2となる。

したがって、PaO2PaCO2となる。(=Ⅰ型呼吸不全)

原因

  • 肺胞膜の肥厚(間質性肺炎など)
  • 肺胞壁の破壊によるガス交換面積の減少(COPDなど)

 

MORE拡散は、%DLCO(肺拡散能力)として測定できる。

DLCO検査は、肺胞から肺胞毛細血管膜を通って血液中に至るまでのガスの拡散しやすさを、一酸化炭素(CO)を用いて測定する呼吸機能検査である。拡散障害があるとDLCO2が低下する。

まとめ

呼吸は換気、血流、拡散の3要素からなる。

呼吸不全は肺胞低換気、AVシャント、換気血流比不均等、拡散障害によっておこる。

特に覚えておくべきことは、

  • COPDではⅡ型呼吸不全にもなること
  • 純粋な低換気ではAaDO2は開大しないこと
  • 拡散障害は閉塞性、拘束性肺疾患ともにおこること!
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