I 呼吸器

Hb酸素乖離曲線とチアノーゼ

I 呼吸器
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こんにちは、ちちもげです。

ややこしい呼吸器系が続きます。

今回は、Hb酸素乖離曲線とチアノーゼについてまとめておきます。

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Hb酸素乖離曲線とは

SaO2(動脈血酸素飽和度)PaO2(動脈血液酸素分圧)の関係を表したグラフ。

赤血球周囲の酸素分圧によって、赤血球中のヘモグロビンが酸素化された状態でどのくらい存在するかを示している。

PaO2 60[torr]= SaO2 90[%]になることは必ず覚えておく。

PaO2などの用語が分からない人はこちら→【呼吸器】酸素化の指標

このグラフはヒルの式という関数で表されていて、代表的なものが酵素反応速度曲線(ヒル係数=1)である。

この関数は、ヒル係数が1より大きければ、正の共同性(周囲の飽和率が高いほど結合は促進される)を持つ。

ヘモグロビンのヒル係数は2.8〜3であるため、ヘモグロビンに酸素が結合しているほど、さらに酸素と結合しやすいという性質を持つことが分かる。

ヘモグロビンと酸素の乖離度は、PaO2以外にも、PaCO2や2,3-DPGで変化する。

 

MOREp50(酸素飽和度50%における酸素分圧)
SaO2が50%のときのPaO2のこと。p50の上昇はヘモグロビンの酸素との親和性が低下したこと、つまり肺におけるヘモグロビンへの酸素取り込みの低下の代償として組織への酸素放出が高まったことを示す。

PaCO2↑(ボーア効果)

Wikipedia ボーア効果

まず説明のため、Hbと酸素の運搬について復習する。

赤血球は肺胞においてヘモグロビン中の鉄にO2を結合し、末梢組織へ向かう。

赤血球の炭酸脱水素酵素は、末梢組織で代謝によって産生されたCO2をHCO3-とH+にする。

H+によって赤血球内のpHが低下することで、ヘモグロビンは酸素を解離する。

  • Hb+O2=HbO2(酸素化ヘモグロビン)
  • CO2+H2O→HCO3- + H+
  • HbO2 + H+ → HbH + O2

すなわち、CO2↑=酸性環境において、ヘモグロビンは酸素とより解離しやすい。

これをボーア効果という。

サンプル画像

ちなみにこのボーアさんは、原子モデルを提唱した有名なボーアのお父さんです。

PaCO2↑を上昇させる原因としては、以下がある。

  • 体温上昇(組織の酸素消費量が増加→代謝亢進→CO2上昇)
  • 激しい運動(乳酸が蓄積→代謝亢進→CO2上昇)
  • Ⅱ型呼吸不全(気管支喘息、肺気腫などの閉塞性肺障害、神経筋疾患などによる呼吸筋麻痺など)
  • アシドーシス(血中のH+が上昇→酸塩基平衡→CO2が上昇)

以上より、PaCO2の上昇はヘモグロビン酸素乖離曲線の右方偏移をおこす。

2,3-DPG↑

2,3-DPG(2,3-ジホスホグリセリン、2,3-ビスホスホグリセリン酸)とは、赤血球内に高濃度に存在する物質で、解糖系に入ることでATPを産生するためにミトコンドリアを持たない赤血球にとって貴重なエネルギー源となっている。

また、2,3-DPGはヘモグロビンと結合することで酸素分子との親和性を低下させ、組織に酸素を供給しやすくしている。

2,3-DPGを上昇させる原因としては、以下がある。

  • 慢性貧血
  • チアノーゼ性心疾患
  • 慢性呼吸不全
  • 高地トレーニング

したがって2,3-DPGの上昇もヘモグロビン酸素乖離曲線の右方偏移をおこす。

MORE胎児の赤血球に含まれるヘモグロビンFは、成人のヘモグロビンAよりも2,3-BPGに対する結合が弱く、そのため酸素親和性が高い。これは胎盤内で母親側から酸素を受け取らなければならないためである。

チアノーゼ

チアノーゼとは還元型ヘモグロビン濃度が5g/dlを上回った状態である。

口唇の色が青紫になることで確認できる。

低酸素血症(PaO2<60[torr])を伴うものを中心性(中枢性)チアノーゼ、伴わないものを末梢性チアノーゼという。

中枢性チアノーゼの原因は、

  • メトヘモグロビン血症
  • 右左シャント(ファロー四徴症、アイゼンメンジャー症候群、肺動静脈廔など)
  • 低換気など

 

POINTチアノーゼがおこるSaO2はHb量から求められる。

例えばHb(総Hb)が15g/dlのとき、SaO2が(15-5)/15≒66[%]以下でチアノーゼを生じる。

 

貧血/多血とチアノーゼ

貧血ではチアノーゼがおこりにくく多血ではチアノーゼがおこりやすい。

理由は、定義が「5g/dl以上」という絶対値で決められているため、SaO2(相対値)が同じでも、ヘモグロビン量によって還元型ヘモグロビンの量も変わってくるからである。

 

MORE新生児は生理的多血であり、チアノーゼをおこしやすい。肺で呼吸をするのに比べて、胎盤を通して受け取れる酸素量が少ないので、胎児は赤血球を多く生産している。出生後に脾臓で赤血球が壊される(生理的黄疸)ため、しばらくすると多血はおさまる。

メトHb/COHbとチアノーゼ

また、一酸化炭素中毒ではチアノーゼがおこりにくくメトヘモグロビン血症はチアノーゼがおこりやすい。

理由について説明する。

メトヘモグロビンは酸素を結合できないため、還元型Hbとして換算される。MetHbが15%を超えるとチアノーゼが生じる。

またカルボキシヘモグロビンは酸素を250倍も結合しやすい(そのため解離しにくい)ため、酸化Hbとして換算される。

どちらも酸素を組織に共有出来ないため、低酸素血症の原因となりうる。

まとめ

ヘモグロビン酸素乖離曲線を右方移動させるのは、

  • 酸性環境(高体温、PaCO2↑、H+↑)
  • 2,3-DPG上昇

また、チアノーゼは還元型ヘモグロビン濃度が5g/dlを上回った状態であり、

  • 貧血、CO中毒でおこりにくい
  • 多血、MetHb血症でおこりやすい

チアノーゼがおこるSaO2はHb量から求められることを知っておく!

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