抗血小板薬、抗凝固薬とは
まず2つの違いについて。
- 抗血小板薬=一次止血の阻害
- 抗凝固薬=二次止血の阻害
一次止血は血小板が、二次止血は凝固因子がぞれぞれ活躍するんでしたね。
止血を阻害するので、どちらも血栓症に対する治療で使います。
特に、動脈血栓か静脈血栓化かで適応が変わります。※一般的な話で例外も多い!
- 抗血小板薬=動脈血栓(脳梗塞など)の予防
- 抗凝固薬=静脈血栓(肺塞栓症、DVTなど)の予防
止血を阻害するので副作用は易出血性(消化管、頭蓋内など)となります。
基本は一生内服であるため、手術時には何日か前から休薬したりと、注意が必要です。
アスピリン=A=動脈

いわゆる「血液をサラサラにするお薬」たちです。
抗血小板薬
一次止血では、破壊された血管内皮細胞に血小板が近づいた後
- 粘着(リストセチンによる)
- 凝集(ADPによる)
- サイトカイン放出(セロトニン、トロンボキサンなど)
という一連の流れが起きます。
検査では、出血時間が延長します。
抗血小板薬には、
- アスピリン
- シロスタゾール
- クロピドグレル
- プラスグレル
- チクロピジン
などがあります。
詳しい作用機序は省きますが、血小板薬がどこを阻害しているかは覚えておきましょう。
アスピリン(バイアスピリン🄬)
作用機序:アラキドン酸カスケードにおいてCOXを阻害することで、下流のTXA2(トロンボキサン)を阻害する。
低用量では抗血小板薬として作用し、高容量では+消炎・鎮痛薬として作用する(いわゆるNSAIDs)。
シロスタゾール(プレタール🄬)
作用機序:セロトニン放出の抑制、TXA2放出を抑制
クロピドグレル(プラビックス🄬)
作用機序:ADP受容体を阻害することで、ADPを阻害
プラスグレル(エフィエント🄬)
作用機序:ADP受容体を阻害することで、ADPを阻害
チクロピジン(パナルジン🄬)
作用機序:ADP受容体を阻害することで、ADPを阻害
抗凝固薬
一次止血が終わると、今度は凝固因子による二次止血が始まります。
具体的には、
- 外因系凝固の活性化&内因系凝固の活性化
- Ⅹ→Ⅹa
- Ⅴ→Ⅴa
- Ⅱ(プロトロンビン)→Ⅱa(トロンビン)
- Ⅰ(フィブリノゲン)→Ⅰa(フィブリン)
特に阻害因子として活躍している以下のものも覚えておきましょう。
- AT(アンチトロンビン)=Ⅱaを阻害
- プロテインC,S=Ⅴaを阻害
検査では、外因系凝固因子が阻害されるとPT延長、内因系凝固因子が阻害されるとAPTT延長がおきます。
抗凝固薬には、
- ヘパリン
- ワルファリン
- ダビガトラン
- リバーロキサバン
- エドキサバン
- アピキサバン
などがあります。
ダビガトラン以降の4つの凝固薬は、DOAC(ドアック、直接経口抗凝固薬)と呼ばれています。
ヘパリン、ワルファリンと違って、凝固因子特異的に活性を「直接」阻害するという作用機序であるため、こう呼ばれています。
副作用としての出血が他の凝固薬より少ないのがポイントです。
ヘパリン
作用機序:AT(アンチトロンビン)の結合を促進することで、Ⅱa(トロンビン)などの活性を阻害する。
APTT(内因系凝固を反映)で正常の1.5~2倍にモニタリングし、拮抗薬(プロタミン)によって調整する。
速効性があり、増えるのも減るのも動きが速い。
ワルファリン(ワーファリン🄬)
作用機序:ビタミンKを阻害することで、Ⅱ、Ⅸ、Ⅶ、ⅩなどのビタミンK依存凝固因子を阻害。
PT-INRでの基準値は1.0だが、弁置換後などは2.0~3.0になるようにモニタリングする。
上がり過ぎた場合は拮抗薬(vitK)で調節。
遅効性で、増えるのも減るのも動きが遅い(調節が難しい)。
ダビガトラン(プラザキサ🄬)
作用機序:Ⅱa(トロンビン)を阻害
拮抗薬:イダルシズマブ(※ダビガトラン以外のDOACの拮抗薬は、まだ開発中!)
リバーロキサバン(イグザレルト🄬)
作用機序:Ⅹaを阻害
エドキサバン(リクシアナ🄬)
作用機序:Ⅹaを阻害
アピキサバン(エリキュース🄬)
作用機序:Ⅹaを阻害
まとめ
抗血小板薬では、
- TXA2を阻害=アスピリン、シロスタゾール
- ADPを阻害=クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン
抗凝固薬では、
- ATを阻害(→Ⅱa)=ヘパリン
- vitKを阻害(→Ⅱ,Ⅸ,Ⅶ,Ⅹ,proteinC,S)=ワルファリン
- Ⅱaを阻害=ダビガトラン
- Ⅹaを阻害=リバーロキサバン、エドキサバン、アピキサバン
おまけ:外因系凝固
ゴロ「外でみんなでパーティ、わーい!」
外で→外因系
みんなで→(Ⅲ)、Ⅶ
パーティー=PT(プロトロンビン時間)-INR
わーい=ワルファリン
解説
凝固因子とその検査、阻害薬までまとめて覚えたかったのでゴロを作りました。
Ⅲ番は実質機能していないなので、カッコにしました。
ちなみに内因系の凝固因子はⅫ、Ⅺ、Ⅸ、Ⅷで、検査はAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)、阻害薬はヘパリンです。
凝固カスケードの覚え方
凝固カスケードは外因系と内因系と共通系から成ります。
共通系に関わる凝固因子は、Ⅹ、Ⅴ、Ⅱ(プロトロンビン)、Ⅰ(フィブリノーゲン)です。
覚えかたは「10×5×2=1」です。
外因系と共通系だけ覚えて、残りが内因系と考えるのが早いです。
ちなみに「PT=2文字=Ⅲ、Ⅶ」「APTT=4文字=Ⅻ、Ⅺ、Ⅸ、Ⅷ」と文字数で対応もしています。
vitK依存因子の覚え方
ゴロ「肉(Ⅱ、Ⅸ)、納豆(Ⅶ、Ⅹ)、寿司(プロテインS、C)」
※納豆自体は、実際はビタミンKが豊富に含まれているため、ワルファリンに対して拮抗作用を示します。
ワルファリンの効き始め(低用量)ではむしろ凝固「阻害」因子を「阻害」してしまうため、血栓傾向になります!