予防接種〈ワクチン〉
ワクチンの種類を覚える時は、
- 摂取時期(1歳まで/1歳半まで/3歳まで/それ以外)
- 摂取経路(皮下/皮内/経口/筋注)
- 摂取区分(定期摂取A/定期摂取B/任意)
- 病原体の種類(不活化/弱毒生/トキソイド)
- 注意点(摂取不適当者、摂取要注意者、脾臓摘出前)
以上のことに注目しましょう。
予防接種スケジュールに沿って、紹介していきたいと思います。

ワクチンはあくまでも「予防」であって「治療」じゃないよ。一部のトキソイドを除いて、病気になってから打つものではないんだ。
予防接種スケジュール
1歳まで
- HBV
- Hib(インフルエンザ桿菌B型)
- 肺炎球菌(13価)
- DPT-IPV ※1(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)
- BCG (結核菌)
- ロタ ※任意
緑字はトキソイド、赤字は生ワクチン、それ以外は不活化ワクチンです。
ロタウイルス以外は、全て「定期摂取A」に分類されます。
ワクチンは基本的に皮下注射ですが、BCGは皮内注射(はんこ注射)、ロタウイルスは経口投与と例外的なのでおさえておきましょう。

BCG摂取部位が1か月程で腫れるのは普通だよ。でも、10日以内に摂取部位が発赤する「コッホ現象(結核の既往感染)」や、イチゴ舌などの症状とともに摂取部位が発赤する「川崎病」には注意したいね。
※1:DPT-IPV=ジフテリア(Diphtheria)、百日咳(Pertussis)、破傷風(Tetanus)、不活化ポリオ(Inactivated Polio Vaccine)
1歳半まで
- MR(麻疹・風疹)※
- 水痘
- ムンプス(流行性耳下腺炎) ※任意
すべて生ワクチンです。
MRワクチンにムンプスも含めて「MMRワクチン」として接種することも可能です。
※:MMR=麻疹(Measles)、ムンプス(Mumps)、風疹(Rubella)、
3歳まで
- 日本脳炎
- 髄膜炎 ※任意
どちらも不活化ワクチンです。
成人以降~
- 季節性インフルエンザ
- 肺炎球菌(23価)
- HPV(2,4型)
- 帯状疱疹 ※任意
紫字のものは「定期摂取B」にあたります。
肺炎球菌は肺炎の原因菌1位であり、小児だけでなく、65歳以上 または 60歳以上で疾患持ち の高齢者でも接種します。
HPVワクチンは「定期摂取A」にあたりますが、副反応の観点から「積極的な接種勧奨の一時差し控え」という難しい立場に置かれています。(2020年1月現在)
HPVワクチンは筋肉注射です。女性だけでなく男性も接種可能です。
帯状疱疹は50歳以上の高齢者で接種出来ます。
特殊なもの(海外渡航前)
- 黄熱
- HAV
- 狂犬病
黄熱のみ、生ワクチンです。
全て任意接種で、海外渡航前など特殊な場合にのみ打ちます。
黄熱は2007年以前は検疫感染症として指定されていました。(詳しくは感染症の類型と検疫感染症の語呂合わせ・覚え方)
摂取経路
- 皮下注射:大多数のワクチン
- 皮内注射:BCG
- 経口投与:ロタ
- 筋肉注射:HPV
摂取区分
- 定期摂取A:大多数のワクチン
- 定期摂取B:季節性インフルエンザ、肺炎球菌(23価)
- 任意:ロタ、ムンプス、髄膜炎、帯状疱疹、海外渡航前ワクチン
「定期摂取A」が集団予防を目的とするのに対し、「定期摂取B」は個人予防を目的とします。
病原体の種類
- 不活化ワクチン:大多数のワクチン
- 生ワクチン:BCG、麻疹、風疹、水痘、黄熱、ロタ、ムンプス
- トキソイド:ジフテリア、破傷風
生ワクチンは摂取間隔を4週間、不活化ワクチンは1週間開ける必要があります。
また、妊婦に生ワクチンは禁忌です。
ポリオは生ワクチンが主流でしたが、副反応の観点から現在は不活化ワクチン(inactivated polio vaccine)が使われています。
生ワクチンのゴロ合わせ・覚え方
風:風疹
水:水痘
結果:結核(BCG)
黄色い:黄熱
ローター:ロタ
マシン:麻疹
トキソイドのゴロ合わせ・覚え方
恥:破傷風
じる:ジフテリア
時:トキソイド
ワクチン接種時の注意点
接種不適当者
- 接種日の発熱(37.5℃以上)
- 重篤な急性疾患にかかっている
- 過去に受けた同じ予防接種でアナフィラキシーをおこした
上記に当たる場合は、予防接種は行うことが出来ません。
接種要注意者(一部略)
- 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患及び発育障害等の基礎疾患あり
- アレルギー体質(薬剤・食物など)
- 気管支喘息
- けいれん既往
- 免疫不全者
- 妊婦
上記に当たる場合は、注意しながら予防接種を行う必要があります。
特に卵アレルギーのある人は、卵の成分が使われているインフルエンザ、麻疹、ムンプス、黄熱ワクチンには注意しなければなりません。
おまけ①:莢膜多糖体(ポリサッカライド)
インフルエンザ桿菌B型、肺炎球菌、髄膜炎などは、細胞壁の外側に莢膜多糖体(ポリサッカライド)を持ちます。
莢膜多糖体を持つ細菌は貪食に対して抵抗性を示すため、脾臓において産生された莢膜多糖体に対する特異抗体がオプソニン化する必要があります。
したがって、脾臓摘出前は重症化を防ぐため、Hib、肺炎球菌、髄膜炎のワクチンを接種が推奨されています。
おまけ②:ワクチンが存在しない病原体
- HCV
- HEV
- HIV
- HTLV-1
- アデノウイルス
- ボツリヌス