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分子標的薬の種類と副作用の語呂合わせ・覚え方

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分子標的薬とは

分子標的薬は、がん細胞における遺伝子変異が産生する特定のタンパク質(チロシンキナーゼや表面抗原など)を阻害する治療薬です。

一般的な抗癌剤(細胞障害性抗癌剤)は正常細胞も含めて攻撃しますが、分子標的薬は癌細胞のみを攻撃するため、ピンポイント療法とも呼ばれます。

抗体薬と小分子薬

分子標的薬は、抗体薬(語尾が-ab)小分子薬(語尾が-ib)に分けられます。

抗体薬は癌細胞の外側から、小分子薬は癌細胞の内側から、特定のタンパク質を攻撃します。

また、抗体薬は特異性が高く副作用が少ないというメリットがありますが、薬価が非常に高く、経静脈投与に限られるというデメリットもあります(抗体薬は自身もタンパク質なので経口投与だと分解されてしまう)。

ホリカ
ホリカ

例えば、抗EGFR抗体薬であるセツキシマブは37289円/瓶で、EGFR-TKI阻害薬であるゲフィチニブは5155.4円/錠だよ。どちらも高いけど差は圧倒的だね。

分子標的薬の種類(癌によるもの)

大腸癌に使用する分子標的薬

  • セツキシマブ(抗EGFR抗体薬):大腸癌(K-ras変異のないもの
  • パニツムマブ(抗EGFR抗体薬):大腸癌(K-ras変異のないもの
  • ベバシズマブ(抗VEGF抗体薬):大腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、加齢黄斑変性症

抗EGFR抗体薬の語呂合わせ・覚え方「サクマドロップ無くて節子パニック」

サクマドロップ→サKマドRップ→K-ras(がん遺伝子)

無くて→(変異)なし

節子→セツキシマブ

パニック→パニツムマブ

乳癌に使用する分子標的薬

  • トラスツズマブ(抗HER2抗体薬):乳癌、胃癌
  • ペルツズマブ(抗HER2抗体薬):乳癌
  • ベバシズマブ(抗VEGF抗体薬):大腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、加齢黄斑変性症
  • ラパチニブ(EGFRおよびHER2阻害薬):乳癌
  • オラパリブ(PARP阻害薬):BRCA陽性の遺伝性乳癌卵巣癌症候群〈HBOC〉

非小細胞肺癌に使用する分子標的薬

  • ゲフィチニブ(EGFR阻害薬):非小細胞肺癌
  • オシメルチニブ(EGFR阻害薬):非小細胞肺癌
  • エルロチニブ(EGFR阻害薬):非小細胞肺癌
  • アファチニブ(EGFR阻害薬):非小細胞肺癌
  • クリゾチニブ(ALKおよびROS1阻害薬):非小細胞肺癌
  • アレクチニブ(ALK阻害薬):非小細胞肺癌
  • セリチニブ(ALK阻害薬):非小細胞肺癌
  • ダブラフェニブ(BRAF阻害薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌
  • トラメチニブ(BRAF阻害薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌
  • ベバシズマブ(抗VEGF抗体薬):大腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、加齢黄斑変性症
  • ニボルマブ(抗PD-1抗体薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頚部癌、胃癌、悪性胸膜中皮腫など

EGFR阻害薬の語呂合わせ・覚え方「非常に推しのエロゲ、アハ」

非常=非小細胞肺癌

推し=オシメルチニブ

エロ=チニブ

ゲ=フィチニブ

アハ=アファチニブ

出典:オリジナル

悪性黒色腫に使用する分子標的薬

  • ダブラフェニブ(BRAF阻害薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌
  • ベムラフェニブ(BRAF阻害薬):悪性黒色腫
  • トラメチニブ(BRAF阻害薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌
  • ニボルマブ(抗PD-1抗体薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頚部癌、胃癌、悪性胸膜中皮腫など
  • ペンブロリズマブ(抗PD-1抗体薬):悪性黒色腫
  • イピリムマブ(抗CTLA-4抗体薬):悪性黒色腫

腎細胞癌に使用する分子標的薬

  • ソラフェニブ(VEGFR-TK阻害薬):腎細胞癌(遠隔転移あり)、肝細胞癌
  • スニチニブ(VEGFR-TK阻害薬):腎細胞癌
  • アキシチニブ(VEGFR-TK阻害薬):腎細胞癌
  • パゾパニブ(VEGFR-TK阻害薬):腎細胞癌
  • エベロリムス(mTOR阻害薬):腎細胞癌
  • テムシロリムス(mTOR阻害薬):腎細胞癌
  • ニボルマブ(抗PD-1抗体薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頚部癌、胃癌、悪性胸膜中皮腫など
ホリカ
ホリカ

腎臓はソラ豆の形をしているよね。腎細胞癌の転移例にはソラフェニブだよ。

慢性骨髄性白血病〈CML〉に使用する分子標的薬

  • アレムツズマブ(抗CD52抗体薬):CML
  • オファツムマブ(抗CD20抗体薬):CML
  • イマチニブ(Bcr-Abl TK阻害薬):CML、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)、消化管間質腫瘍(GIST)
  • ダサチニブ(Bcr-Abl TK阻害薬):CML、Ph+ALL
  • ニロチニブ(Bcr-Abl TK阻害薬):CML、Ph+ALL
  • ポナチニブ(Bcr-Abl TK阻害薬):CML、Ph+ALL
  • ボスチニブ(Bcr-Abl TK阻害薬):CML(多剤耐性のもの

Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害薬の語呂合わせ・覚え方「ボスはイマイチダサくてポチに似る」

ボスは→ボスチニブ

イマイチ→イマチニブ

ダサくて→ダサチニブ

ポチに→ニブ

似る→ロチニブ

出典:オリジナル

悪性リンパ腫に使用する分子標的薬

  • リツキシマブ(抗CD20抗体薬):非ホジキンリンパ腫
  • ブレンツキシマブ ベドチン(抗CD30抗体):ホジキンリンパ腫
  • ニボルマブ(抗PD-1抗体薬):悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頚部癌、胃癌、悪性胸膜中皮腫など

多発性骨髄腫に使用する分子標的薬

  • デノスマブ(抗RANKL抗体薬):多発性骨髄腫(骨病変に対して)、骨粗鬆症
  • エロツズマブ(抗SLAMF7抗体薬):多発性骨髄腫
  • ダラツムマブ(抗CD38抗体薬):多発性骨髄腫
  • ボルテゾミブ(プロテアソーム阻害薬):多発性骨髄腫(第一選択薬
  • カルフィルゾミブ(プロテアソーム阻害薬):多発性骨髄腫
  • イキサゾミブ(プロテアソーム阻害薬):多発性骨髄腫

そのほか押さえておくべき分子標的薬

  • ゲムツズマブ オソガマイシン(抗CD33抗体薬):急性骨髄性白血病〈AML〉
  • モガムリズマブ(抗CCR4抗体薬):成人T細胞白血病/リンパ腫〈ATL〉
  • ルキソリチニブ(JAK阻害薬):真性赤血球増加症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症
  • バンデタニブ(VEGFおよびEGFRおよびチロシンキナーゼ阻害薬):甲状腺髄様癌

分子標的薬の種類(癌以外のもの)

関節リウマチ〈RA〉に使用する分子標的薬

  • インフリキシマブ(抗TNF-α抗体薬):RA
  • アダリムマブ(抗TNF-α抗体薬):RA
  • セルトリズマブ ペゴル(抗TNF-α抗体薬):RA
  • ゴリムマブ(抗TNF-α抗体薬):RA
  • エタネルセプト(抗TNF-αR抗体薬)
  • トシリズマブ(抗IL-6R抗体薬):RA
  • アバタセプト(T細胞活性化抑制性剤):RA
ホリカ
ホリカ

関節リウマチなどの自己免疫疾患に使う分子標的薬は、「生物学的製剤」と呼ばれるよ。

加齢黄斑変性症に使用する分子標的薬

  • ベバシズマブ(抗VEGF抗体薬):大腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、加齢黄斑変性症
  • ラニビズマブ(抗VEGF抗体薬):加齢黄斑変性症
ホリカ
ホリカ

抗VEGF抗体薬が使用できる眼科疾患は、加齢黄斑変性症のほか、糖尿病や網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫だよ。こちらも覚えておこう。

気管支喘息に使用する分子標的薬

  • オマリズマブ(抗IgE抗体薬):気管支喘息
  • メポリズマブ(抗IL-5抗体薬):気管支喘息
  • ベンラリズマブ(抗IL-5抗体薬):気管支喘息

そのほか押さえておくべき分子標的薬

  • パリビズマブ(抗RSV抗体薬):RSウイルス感染
  • エクリズマブ(抗C5抗体薬):発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉
  • ニンテダニブ(抗VEGF抗体薬):特発性肺線維症
  • ブロスマブ(抗FGF23抗体薬):骨軟化症

分子標的薬の副作用

一般的な抗癌剤の副作用とは異なり、分子標的薬それぞれに特異性のある副作用がみられることが多いです。

インフュージョンリアクション(急性輸注反応)

インフュージョンリアクションとは、投与から24時間以内に起こるアナフィラキシー様反応のことです。(ただしアレルギーとの関連性はない

抗体薬全般でみられやすいです。

間質性肺炎

EGFR阻害薬、抗EGFR抗体薬、抗HER2抗体薬などでみられやすいです。

特にEGFR阻害薬であるゲフィチニブ(イレッサ®)による間質性肺炎は、薬害イレッサ事件として有名です。

皮膚障害

抗EGFR抗体薬(ほぼ必発)、EGFR阻害薬、HER2阻害薬などでみられやすいです。

心毒性

HER2抗体薬、HER2阻害薬でみられやすいです。

ホリカ
ホリカ

心毒性は、非ホジキンリンパ腫の治療で使う非アントラサイクリン系抗癌剤(アドリアマイシンなど)の副作用としても有名だよね。

高血圧、出血、創傷治癒遅延

VEGF抗体薬、VEGFR阻害薬でみられやすいです。

末梢神経障害

ボルテゾミブほぼ必発)でみられやすいです。

手足症候群、剝脱性皮膚炎

ソラフェニブでみられやすいです。

練習問題:113A4

EGFR遺伝子変異陽性、遠隔転移を有する進行肺腺癌に対する初回治療で、分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)の副作用として頻度が高いのはどれか。

  1. 貧血
  2. 皮膚障害
  3. 1型糖尿病
  4. 好中球減少
  5. 血小板減少
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