Alport症候群
Alport症候群は、Ⅳ型コラーゲンの異常によって幼少期から血尿を繰り返す疾患です。

次に紹介する骨形成不全症はⅠ型コラーゲンの異常によるものだよ。混ざらないようにね!
小児+血尿メインの糸球体腎炎として扱われることが多いですが、進行すると蛋白尿、ネフローゼ症候群、腎不全へと移行します。
また白内障などの眼症状、両側の内耳障害による感音性難聴もきたします。
Ⅳ型コラーゲンは主に糸球体基底膜の成分であるため、電子顕微鏡で観察すると基底膜が網状や泡沫状に変性し肥厚している様子がみられます。
また、Alport症候群は性染色体優性遺伝〈XD〉という遺伝形式をとります。
XDは珍しいため、国試的には以下の3つを覚えておけばいいでしょう。
- Alport症候群
- 色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)
- Rett症候群
Alport症候群の症状の語呂合わせ・覚え方「珍しい鼻毛あるよん」
珍しい→性染色体優性遺伝〈XD〉
は→白内障
な→(両側の感音性)難聴
げ→け→血尿(進行すると+蛋白尿→腎不全)
ある→Alport症候群
よん→Ⅳ型コラーゲン異常
骨形成不全症
骨形成不全症〈van der Hoeve(ヴァンデルハーベ)症候群〉は、Ⅰ型コラーゲンの異常によって幼少期から骨折を繰り返す疾患です。
骨形成の3徴は以下の通りです。
- 易骨折性・骨変形
- 青色強膜
- 難聴(耳硬化症による伝音性難聴?)
また、常染色体優性遺伝〈AD〉の遺伝形式を取ります。
骨形成不全症の語呂合わせ・覚え方「滑稽な青い子が一番」
滑稽→骨形成不全症
な→難聴
青い→青色強膜(せいしょくきょうまく)
子→(易)骨折
一番→Ⅰ型コラーゲン異常
おまけ①:青色強膜

109I22
青色強膜はその名の通り、強膜が青色に見えます。(視力自体に異常はない)
骨形成不全症のほか、Marfan症候群、ホモシスチン尿症、Ehlers-Danlos症候群、偽性甲状腺機能低下症、commonな疾患だと鉄欠乏性貧血でもみられることがあります。
おまけ②:骨軟化症との違い
骨形成不全症も骨軟化症も、骨変形を伴います。
両者の違いを説明するために、骨の構造を鉄筋コンクリート造のマンションに例えてみます。
骨組みとなる鉄筋がⅠ型コラーゲン、その上から塗り固めたコンクリートがヒドロキシアパタイト(CaやP)に当たります。
Ⅰ型コラーゲンの異常が骨形成不全症、ヒドロキシアパタイトの異常が骨軟化症に当たります。
また、骨軟化症の原因として、VitD欠乏のほか、腫瘍から産生されるFGF23(線維芽細胞増殖因子)によるVitD抵抗性によるものがあります。
後者は腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)と呼ばれ、平成30年度の国試ガイドラインに新しく追加されました。
TIOの治療としては、分子標的薬であるブロスマブ(抗FGF23抗体薬)が使われます。
腫瘍性低リン血症性骨軟化症の原因の語呂合わせ・覚え方「富士山からなんかくるで」
富士山→ふじふじさん→FGF-23
なんか→骨軟化症
くるで→くる病(骨端線閉鎖以前の骨軟化症のこと)
練習問題:102A43
21歳の男性。難聴を主訴に来院した。10歳ころから両側難聴があったが原因不明と言われていた。3年前から両側難聴が進行し、昨年から補聴器を装用している。時々、浮動性めまいを自覚している。また、家族性腎炎の診断で7歳から透析を受けている。オージオグラムを示す。
考えられる疾患はどれか。
- Alport症候群
- Bartter症候群
- Goodpasture症候群
- Treacher Collins症候群
- von Recklinghausen病
練習問題:107D46
35歳の女性。腰痛を主訴に来院した。自宅近くの医療機関で腰椎骨密度低値を指摘され、紹介されて受診した。33歳時の分娩後から腰痛が出現し、以後持続している。28歳時の分娩後にも、同様に腰痛が出現していた。身長155cm、体重42kg。夫と子供2人の4人暮らしで、本人が家事と育児とを行っている。喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒である。体温、呼吸、脈拍および血圧に異常を認めない。眼球の青色強膜と難聴とを認める。脊柱には軽度の後弯変形を認めるが、上肢と下肢とに神経学的異常を認めない。
診断のために聴取すべき最も重要な情報はどれか。
- 骨折の既往
- 日光曝露
- 食習慣
- 運動歴
- 月経歴