グラム染色
意義
細菌は細胞膜の外側に細胞壁を持つ。グラム陽性菌の細胞壁は厚いペプチドグリカン層、グラム陰性菌の細胞壁は外膜+薄いペプチドグリカン層で出来ている。
喀痰のグラム染色を行うと、細菌を壁構造の違いによってピンク色(陰性)と紫色(陽性)に分類することが出来、この結果は菌の特定と共に、抗菌薬(抗生物質)選択の指標となる。
原理(Huckerの変法)
まずクリスタルバイオレットによって細菌の細胞壁の成分(ペプチドグリカン層)を青紫色に染め、この色をルゴールで固定する。
アルコール(エタノール)で脱色を行い、この時色が抜けずに紫色のままである細菌を「グラム陽性菌」とする。
逆に色が抜けてしまった細菌は、紫色と対比させるためにサフラニンによって細胞壁の成分をピンク色に染める。これを「グラム陰性菌」とする。
グラム染色液の順番のゴロ
「gramで来る朝」
く→クリスタルバイオレット(紫に染める)
る→ルゴール(固定)
あ→アルコール(脱色)
さ→サフラニン(対比として赤に染める)

有名パンケーキ店「gram」で朝食を取らないと1日が始まらないキラキラ女子のイメージ
グラム染色での細菌の分類
グラム染色と形で4つに分類できる。
- 陽性(positive)
- 陰性(negative)
- 丸い(球=cocci)
- 細長い(桿=rods)
グラム陰性桿菌(GNR)は多いので、その他のものとして覚える。
グラム陽性球菌(GPC)の覚え方
「球」がつく
- 肺炎球菌
- 連鎖球菌
- ブドウ球菌
- 腸球菌
グラム陰性球菌(GNC)の覚え方
「インキュベーター・リズモ」
インキュベーター→陰性球菌
リ→淋菌
ズ→髄膜炎筋
モ→モラクセラ・カタラーリス
※強そうな機械のイメージ。もっといいゴロ探し中。
グラム陽性桿菌(GPR)の覚え方
「尻(4り)羊羹」
- クロストリジウム属(+バシラス属)
- コリネバクテリウム
- ジフテリア
- リステリア
※羊羹を尻に挟んでいるイメージ。下品。
グラム染色で染まらない細菌
グラム染色で染まらない≠グラム染色陰性なので注意!
抗酸菌
結核菌、NTM、らい菌などのマイコバクテリウム属は、細胞壁に疎水性のミコール酸を含むため、グラム染色で染まらない。
抗酸菌はZiehl-Neelsen(チール・ネルゼン)染色で染まる。
マイコプラズマ
細胞壁を持たないため、グラム染色で染まらない。
マイコプラズマはHoechst(ヘキスト)染色で染まる。
細胞内寄生菌
リケッチア、クラミジア、レジオネラなどは細胞内寄生菌であるため、グラム染色で染まらない。(ただし外膜を持つのでグラム陰性菌とすることもある)
レジオネラはGimenez(ヒメネス)染色で染まる。
スピロヘータ
梅毒トレポネーマ、ワイル病レプトスピラ、ライム病ボレリアなどのスピロヘータはグラム陰性のらせん桿菌だが、細胞壁が薄いためグラム染色で染まりにくい。
スピロヘータはGimsa(ギムザ)染色、Warthin-Starry(ワルチンスターリー)染色で染まる。
グラム染色で染まらない細菌のゴロ
「レジェンドマリックは下手に降参しない」
レジェンド→レジオネラ
マ→マイコプラズマ
リッ→リケッチア
ク→クラミジア
下手→スピロヘータ
降参→抗酸菌
しない→染まらない
※マジシャン「Mr.マリック」