伝音難聴と感音難聴
難聴(音が聞こえにくい)の原因は、
- 伝音難聴:外耳〜中耳の障害
- 感音難聴:内耳〜聴神経の障害
の2つに大きく分けられます。
難聴の検査所見における国試的なポイントとしては、
- 伝音難聴と感音難聴の違い
- 伝音難聴:鼓膜所見から鑑別
- 感音難聴:オージオグラムから鑑別
このあたりかと思います。
それでは、丁寧にみていきましょう!
伝音難聴と感音難聴の違い
オージオグラムのA-Bgap(気道骨導差)
オージオメトリー(純音聴力検査)において、
- 伝音難聴はA-B gap(気導-骨導差)が出来る
- 感音難聴はA-B gap(気導-骨導差)が出来ない
のが鑑別点です。
A-B gapとは、気導(Air)と骨導(Bone)の伝わり方に差があることを指します。
気道・骨導ともに障害される感音難聴に対し、伝音難聴では内耳障害がないため骨導は正常となります。
例)109D53:右伝音難聴(骨導と気導の間にgapあり)
おまけ:純音聴力検査の方法と語呂合わせ・覚え方
気導聴力検査は、
- 右:赤・左:色になるように機械を耳に付ける
- 音が聞こえたらボタンを押す
- 音の大きさと高さを変えて繰り返す
- 結果を用紙に記録(右:〇・左:×)
骨導聴力検査は、
- 機械を耳介後部に付ける
- 震えを感じたらボタンを押す
- 音の大きさと高さを変えて繰り返す
- 結果を用紙に記録(右[・左 ])
のように行います。
オージオグラムを読むためには、左右の気導・骨導を表す記号は必ず覚えましょう。
- [=右耳の形っぽい(右耳)
- [=カタカナのコっぽい=コつどう(骨導)
- 〇=右(文字に〇が入っている)※消去法で気道
Rinne試験の時間差
Rinne試験は音叉を用いた検査です。
具体的な方法は、
- 音叉を鳴らして耳介後部に付ける
- 震えがなくなったと感じたら、耳介後部から離して、耳穴の前に近づける
- 音が聞こえるか/聞こえないかを答えてもらう
です。
これは、気導での聴取時間が骨導での聴取時間より長いことを利用した試験です。
伝音難聴では、外字~中耳障害により気導での聴取時間が短縮しているため、耳穴の前に音叉を移動させたとき既に音は聞こえません。(Rinne陰性)
Weber試験の左右差
Weber試験は音叉を用いた検査で、
具体的な方法は、
- 音叉を鳴らして額に付ける
- 音が左右どちらで大きく聞こえるかをを答えてもらう
です。
これは片側の外字~中耳障害があると、反対側の内耳機能が増強することを利用した試験です。
伝音難聴では、健側で音が大きく聞こえます。

これまでをまとめると、伝音難聴は、A-B gapあり・Rinne陰性・Weber健側で増強、ということだね!感音難聴はその逆だよ。
伝音難聴の検査所見
耳鏡で見た鼓膜の所見
- 鼓膜周辺が全体的に赤い→急性中耳炎
- 鼓膜下に気泡→滲出性中耳炎
- 鼓膜が穿孔して中耳が見える&鼓膜が石灰化して白い塊になる→慢性中耳炎
急性中耳炎

112F66
耳管咽頭口から中耳に感染するので、起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ桿菌が多いです。
対応は、軽症:経過観察、中等症:アモキシシリン(ペニシリン系抗菌薬)経口投与、重症:鼓膜切開 です。
滲出性中耳炎

113D30
慢性中耳炎
外耳道から鼓膜穿孔して中耳に感染するので、起炎菌はブドウ球菌や緑膿菌が多いです。
感音難聴の検査所見
オージオグラム
聴覚補充現象
聴覚補充現象(Recruitment現象)は、聴音域を超えると急に音が大きくなったように聞こえる現象です。
例)40dB以上しか聞こえない人に、オージオメトリーで30、40、50dBと連続して音を聴かせると、30dBは聞こえない、40dBは聞こえる、50dBは70dBぐらい大きく聞こえる。
内耳障害でのみ陽性となります
中耳炎

109G52 より引用
滲出性中耳炎などの伝音性難聴ではこのようにA-Bgap(気導-骨導差)が出来るのが特徴です。
真珠腫性中耳炎では進行すると、加えて感音性難聴をきたして混合性難聴になります。
耳硬化症
耳硬化症はA-Bgapに加えて、2000Hz付近の骨導の聴力低下=Kahart’s notch(カハートのくぼみ)がみられることが特徴です。
耳硬化症はアブミ骨の固着が原因ですが、固着させている蛋白が2000Hz付近を感知する蛋白と構造が似ているため聞こえにくくなるらしいです。(私もよくわからない)
伝音性難聴に感音性難聴が混ざっているので、混合性難聴となります。
メニエール病

109G52 より引用
感音性難聴では、気導・骨導両方とも聴力が低下します。
中でも、メニエール病では回転性めまいに伴う低音域から障害される難聴が特徴的です。
老人性難聴

補聴器愛用会 より引用
老人性難聴では高音域から障害されるので、グラフは右肩下がりになります。
加齢による有毛細胞の変性が原因です。
会話の音域(低音域)が障害されないので、初期は気づかれにくいことも特徴でしたね。
騒音性難聴

109G52 より引用
騒音性難聴では以下の3つが特徴になります。
- 4000Hz付近=C5dipでの聴力低下
- 会話音域(500~2000Hz)が正常
- 5年以上の騒音の暴露歴がある(音響外傷性難聴を除く)
老人性難聴との鑑別が難しい(というかオーバーラップしている疾患なのでは)と思っていたのですが、国試ではグラフだけで解かせる問題はないみたいです。
オージオグラム以外の情報も踏まえて判断したいですね。
縦が音の大きさ(dB=デシベル)、横が音の高さ(Hz=ヘルツ)です。
おまけ:新生児と聴覚検査
ABRと聴覚スクリーニング