胎児心拍数陣痛図とは
胎児心拍数陣痛図〈CTG:cardiotocography〉とは、妊婦(または胎児)に付けたモニターによって、胎児心拍、胎動、子宮収縮をリアルタイムに計測した図です。
CTGを計測することを、胎児心拍数モニタリングといいます。
CTGは、妊婦検診においてNST〈non-stress test〉を行ったときに得られます。
NSTで所見が得られないときは、バックアップテスト(胎児にストレスを加えるVAST〈vibro-acoustic stimulation test〉やCST〈contraction stress test〉)を行います。
ある程度胎児の心臓と神経が発達していないとモニタリングされないため、妊娠初期には意義が低いとされています。
胎児心拍数陣痛図の見方
まず、胎児心拍数陣痛図は3段に分かれています。(胎動は計測していない場合もあります)
- 上段:胎児心拍
- 中段:胎動
- 下段:子宮収縮
紙送り速度は3cm/分、すなわち1マス(1cm)が20秒に当たります。

ちなみに心電図は25mm/秒、すなわち大マス1つ(0.5mm)が0.2秒に当たるよ。心電図の方が圧倒的に細かいね。
胎児心拍の段において、色分けされている場合は、以下のようになっています。
- 110/分以下:黄色(頻脈)
- 110~160/分(基準値):白色
- 160/分以上:ピンク色(徐脈)
胎児心拍陣痛図の計測法
胎児心拍陣痛図の計測法には外側法と内側法があります。
外側法は、子宮底部で子宮収縮を、児背に当たる部位で胎児心拍を、腹部表面からモニタリングします。
内側法は、子宮内にカテーテルを挿入して子宮収縮を、子宮内児の頭皮に電極を付けて胎児心拍を、子宮内部からモニタリングします。
外側法より内側法の方が正確とされますが、侵襲性が強いため通常は外側法で行います。
胎児心拍数陣痛図の読み方講座
まずは上段(胎児心拍)をチェック
基線
10分以上連続している山以外の部分が、基線に当たります。
基準値は110~160/分です。
上述した通り、胎児心拍の段において、白色の範囲内にあれば基準値内として判断できます。(黄色の段は頻脈、ピンク色の段は徐脈)
絨毛膜羊膜炎〈CAM〉など、母体に感染が存在すると、持続性頻脈になることが知られています。

後述するけど、一過性の頻脈はむしろ胎児が元気である良好な所見だよ。持続しているのがマズイんだ。
基線細変動〈variabirity〉
基線細変動は、基線の揺れのことで、基準値は5~25/分です。
胎児の交感神経と副交感神経の相互作用の生理的なゆらぎにより生じる、正常な所見です。
サイヌ(ナ)ソイダルパターン⚠
sinusoidal pattern という名前の通り、基線が細変動や一過性頻脈を伴わず、連続したsin(サイン)カーブを描きます。

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胎児貧血を示唆する危険な所見であるため、サイヌソイダルパターンがみられたら胎児血流測定を行います。
胎児血流測定とは、超音波ドプラによって、胎児中大脳動脈〈MCA〉、臍帯動脈、胎児下大静脈などの血流を評価するものです。
胎児貧血が持続していると、血液の再分配によりMCAの血流速度が上昇したり、静脈系の血流波形に異常がみられたりします。
上段と下段の関係をチェック
一過性頻脈(acceleration)
一過性頻脈とは、子宮収縮に一致して胎児心拍数が一過性に上昇するもので、良好な胎児の所見(reactive=RFS:reassuring fetal status)です。

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反対に、子宮収縮に対して胎児心拍数の反応がない(non-reactive)は良くない所見です。
早発一過性徐脈(early deceleration)⚠
子宮収縮に一致して胎児心拍数が一過性に減少する。
児頭圧迫による脳圧上昇→圧受容体が感知→副交感神経興奮→徐脈がメカニズム。
遅発一過性徐脈(late deceleration)⚠
子宮収縮から遅れて胎児心拍数が一過性に減少する。
胎盤の機能低下による低酸素血症→化学受容体が感知→交感神経興奮→血圧上昇→圧受容体が感知→副交感神経興奮→徐脈がメカニズム。
メカニズムが間接的なことからも分かるように、「早発」よりも「遅発」のほうが子宮収縮と徐脈の間に時間が開く。
変動一過性徐脈(variable deceleration)⚠
子宮収縮に対して胎児心拍数が一過性に減少する。
「早発」「遅発」との違いは徐脈がおこるタイミングや程度がさまざまであること。
臍帯圧迫による臍静脈血流低下→化学受容体が感知→交感神経興奮→血圧上昇→圧受容体が感知→副交感神経興奮→徐脈がメカニズムその①。
臍帯圧迫による臍動脈血流低下→圧受容体が感知→副交感神経興奮→徐脈がメカニズムその②。
臍帯圧迫による低酸素血症→化学受容体が感知→交感神経興奮→血圧上昇→圧受容体が感知→副交感神経興奮→徐脈がメカニズムその③。
徐脈になるメカニズムが複数並行するため、タイミングが前後する。
また臍帯圧迫の程度によって、徐脈の程度も変動する(山が大きかったり小さかったり)
圧迫の時間が長く、徐脈が2分以上続くと「遷延一過性徐脈」と定義される。