膣炎とは
膣に細菌などが感染すると膣炎をきたします。
感染元によって膣からの分泌物(いわゆる帯下:おりもの)の所見が異なるため、鑑別に有用です。
ちなみに正常の帯下は、透明~白色で、膣内が酸性のため少し酸っぱい匂いがします。
クラミジア性膣炎:漿液性帯下
クラミジア性膣炎は感染から潜伏期2週間で発症します。
陰部の違和感程度と症状に乏しいです。
膣炎をおこすと、水っぽく流れ出るような「漿液性の帯下」をきたしますが、実は膣炎はおこりにくいとされています。
尿道炎、子宮頚管炎、卵管炎のほか、骨盤腹膜炎などのPID(骨盤炎症性疾患)や肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)の原因としての方が有名ですね。
治療はマクロライド系、テトラサイクリン系抗菌薬です。
淋菌性膣炎:黄色膿性帯下
淋菌性膣炎は感染から潜伏期1週間で発症します(クラミジアより早いのがポイント)。
焼けるような痛みがあり、ドロッとした「黄色膿性の帯下」がみられます。
クラミジアと同じく尿道炎などもきたします。
治療はペニシリン系抗菌薬です。
細菌性膣症:灰白色クリーム色帯下
クラミジアや淋菌以外の細菌による膣炎の総称です。
ホルモンバランスの乱れなどで膣の自浄作用が低下して正常細菌叢が崩れ、異常細菌が繁殖することでおこります。
症状は乏しいですが、魚介類が腐った匂い(アミン臭)をともなう、まったりとした「灰白色クリーム色帯下」がみられます。
治療は原因細菌に合わせた抗菌薬です。

膣「炎」でなはく、膣「症」ということにも注意だよ。
カンジダ膣炎:ヨーグルト(酒粕)状帯下
カンジダ(真菌)は常在菌であるため、性感染症としてだけでなく、免疫低下による異常繁殖も問題となります。
細菌性膣症と並んで、膣感染症としても頻度が高いです。
外陰部の強い掻痒感と発赤に加え、白くぷるぷる(ボソボソ)とした塊、すなわち「ヨーグルト(酒粕:さけかす)状帯下」がみられます。
治療は抗真菌薬(イミダゾールなど)です。
トリコモナス膣炎:緑色泡沫状帯下
トリコモナス(原虫)による性感染症で、潜伏期1週間ほどです。
陰部の掻痒・灼熱感があり、性交痛を伴います(逆に男性は症状に乏しい)。
魚介類が腐ったような悪臭をともない、黄緑色で少し泡立ったような「緑色泡沫状帯下」がみられます。
治療は抗原虫薬(メトロニダゾール)などです。
萎縮性膣炎:血性帯下
加齢などのエストロゲン欠乏により腟粘膜が萎縮を起こし、上皮が炎症をおこすことでみられます(感染症ではない)。
粘膜がカサカサして出血しやすくなるため、性交痛や「血性帯下」がみられます。
血性帯下は婦人科系の癌やポリープでもみられるため、必ず鑑別しましょう。
治療はエストロゲン製剤の投与です。
まとめ
帯下の見た目以外での鑑別点を挙げておきます。
- 疼痛・掻痒感→淋菌、カンジダ、トリコモナス
- ほぼ無症状→クラミジア、細菌性膣症
- 悪臭を伴う→トリコモナス、細菌性膣症
- 性感染症を思わせる既往→クラミジア、淋菌、トリコモナス(+カンジダ)
- 免疫低下→カンジダ、細菌性膣症