治療の覚え方
まず前提として、
- 内視鏡治療
- 外科的切除(オペ)
- 化学療法(ケモ)&放射線療法(ラジ)
の優先順位があることを覚えておきます。
以下、食道癌、胃癌、大腸癌の治療について、ざっくりとまとめておきます。
※正確には各ガイドラインを参照
内視鏡治療について
視鏡的粘膜切除術(EMR)と、内視鏡的粘膜下層切除術(ESD) があります。
内視鏡治療は、深さや大きさによって、どちらかを選択します。

E「S」Dはsub-(下)だから、粘膜下層の方だよ。
おまけ:内視鏡治療の覚え方
- 英語(EMR、ESD)=癌
- 漢字(硬化療法、結紮療法)=静脈瘤
- カタカナ(クリッピング、アルゴンプラズマ、エタノール)=潰瘍(による出血)
食道癌
治療
すでにリンパ節転移していることが多いので、基本は外科手術です。
※粘膜層まで(早期癌)であれば内視鏡治療可能なことも
粘膜下層以深ではリンパ節転移をしていることが多いので、食道切除(&胃や小腸を使った再建)&リンパ節郭清という大掛かりな外科手術を行います。
食道の狭窄を解除するために、姑息的に内視鏡でステントを設置することもあります。
遠隔転移があれば化学療法や放射線療法を行います。
食道癌は(予後が悪いためか)有効な治療方法が確立できていない印象がもたれます。
復習:早期癌の定義
胃癌や大腸癌など一般的な癌では、~粘膜下層を早期癌とします。
食道癌では~粘膜を早期癌、~粘膜下層を表在癌とするので区別しましょう。
胃癌
治療
胃癌健診やピロリ除菌の普及で発見率も良くなり、EMRに加えてESDが出てきたことで適応病変が拡大したため、内視鏡治療がメインです。
2018年にガイドラインが改定され、「リンパ節転移がなくて、腫瘍が一括で取れそうなもの」が内視鏡治療の適応となりました。
「腫瘍が一括で取れそうなもの」に関しては、EMDの絶対適応が2cm以内・潰瘍なし・生検結果が分化型、ということも余力があれば覚えましょう。
※拡大適応はいろいろと細かいので省略します
内視鏡治療の適応を外れた場合は外科手術(胃切除→再建&リンパ節郭清)です。
遠隔転移があれば化学療法や放射線療法(効きにくい)を行います。
胃切除後の合併症
ゴロ「ループをジャンプして、瀕死」
ループ→blind loop症候群(急性/慢性)
ジャンプ→ダンプ→ダンピング症候群(早期/後期)
瀕→貧血(鉄欠乏/Vit.B12欠乏)
死→石→胆石症
解説
blind loop症候群(輸入脚症候群)は、十二指腸の輸入脚を残すBillroth(ビルロート)Ⅰ法という胃切除術をした際にみられます。
急性では、食物が輸入脚に詰まり内圧が上がることで、腹痛や嘔吐がみられます。
慢性では、さらに詰まった食物が腐ることで、輸入脚を通る胆汁組成が変化し、脂肪の吸収不良をきたします。
ダンピング症候群は、食後に交感神経が亢進します。
早期では食物との浸透圧差によって食後すぐに、後期では食物による血糖上昇に対してインスリンが過剰分泌されることで食後3時間ごろにおこります。
食物を数回に分けて少しづつ食べることで防げます。
無胃性貧血では、胃酸低下による鉄欠乏性貧血が術後1年、内因子低下による巨赤芽球性貧血が術後数年でみられます。
鉄剤の経口投与や、内因子の皮下注によって改善できます。
胆石症は、手術時に迷走神経を切除するため胆嚢収縮が低下し、胆汁がうっ滞することでおこります。
大腸癌
治療
基本は外科手術(腸管切除+周囲のリンパ節郭清)です。
結腸癌では、腹腔鏡やロボット支援手術で行われることが多いです。
※粘膜下層まで(早期癌)であれば内視鏡治療可能なことも
遠隔転移があっても、可能ならば積極的に原発巣と転移巣を切除していくのが特徴です。
遠隔転移がある場合は、化学療法や放射線療法も行います。
結腸癌の切離動脈
結腸癌では、切除する結腸を栄養する動脈は当たり前ですが切離されます。
上腸間膜動脈(SMA)は十二指腸~横行結腸まで(腸のメイン血管!)を栄養しますが、下腸間膜動脈(IMA)は下行結腸~S状結腸のみを栄養します。
したがって、結腸左半切除術とS状結腸切除術では、IMAごと切除するのがポイントです。
- 回盲部切除術→回結腸動脈
- 結腸右半切除術→回結腸+右結腸+中結腸動脈
- 横行結腸切除術→中結腸動脈
- 結腸左半切除術→IMA+左結腸動脈
- S状結腸切除術→IMA+S状結腸動脈
直腸癌の術式
直腸癌では、切除する部位によって術名が異なります。
腹膜より前方(口側)で切除する術式には、高位と低位があります。
Raは腹膜より「上側(above)」ですが、術式は「低位」前方切除である点がややこしいです。
- Rs(S状結腸のs、肛門外線から15cm):高位前方切除
- Ra(aboveのa、肛門外線から10cm):低位前方切除
- Rb(belowのb、肛門外線から5cm):腹会陰式直腸切除術(Miles術)
Miles術や、姑息的な手術(Hartmann手術)では、人工肛門(ストーマ)が必須になります。
おまけ:分子標的治療薬
胃癌は免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)が適応可能です。
※食道癌はまだ海外のみの承認
大腸癌では、EGFR受容体抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)が適応可能です。
EGFR受容体抗体薬については、以下の記事を参照してください。