ピロリ菌とは
Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)菌は、グラム陰性のらせん状桿菌です。
発見者はBarry James Marshallで、2005年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
ウレアーゼ(尿素→二酸化炭素+アンモニアに分解)という酵素を持ちます。
ピロリ菌感染による疾患
- 食道:GERD(※諸説あり)
- 胃:胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃過形成ポリープ、胃癌、胃MALTリンパ腫
- 血液:ITP、鉄欠乏性貧血
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の検査には、以下のものがあります。
- 迅速ウレアーゼ試験:感染診断
- 鏡顕法
- 培養法
- 尿素呼気試験:感染診断、除菌判定
- 抗ピロリ菌抗体測定:人間ドック
- 便中ピロリ菌抗原測定
迅速ウレアーゼ試験、鏡顕法、培養法は、内視鏡検査によって胃粘膜を採取する必要があります。
(迅速)ウレアーゼ試験
胃粘膜を尿素を含む試薬に加えると、ピロリ菌が持つウレアーゼが尿素を分解してアンモニアが発生しすることを利用した試験です。
フェノールフタレインを使用しているため、アンモニア(アルカリ性)により溶液がピンク色になりればピロリ菌陽性と判断します。
ピロリ菌感染による胃炎を主訴として受診した患者さんに対して、治療前の感染診断として行います。
尿素呼気試験
ピロリ菌が持つウレアーゼが尿素を分解して、C13を持つ二酸化炭素が増加することを利用した試験です。
C13標識 尿素(ユービット試薬)を吸い込み、C13を持つ二酸化炭素が増加していなければ、ピロリ菌がいないと判断します。
抗ピロリ菌IgG抗体測定
採血によって、血清から抗ピロリ菌IgG抗体があるかどうかを判断します。
人間ドックで行われるABC検診(胃がんリスク検診)では、ピロリ菌感染の有無(血清ピロリ菌IgG抗体)と胃粘膜萎縮の程度(血清ペプシノゲン値)を測定し、胃癌のリスク度を評価します。
ピロリ菌の除菌方法
除菌の適応
ピロリ除菌の適応は、以下の条件が揃った時です。
- 半年以内の内視鏡検査で胃炎が判明
- ピロリ菌の検査が陽性

人間ドックでピロリ菌抗体が検出されただけでは適応にならないね。半年以内というところもポイントだよ。
除菌方法
除菌方法としては、除菌薬を、1日2回×1週間、内服します。
また、除菌中は原則アルコール摂取は禁止とされています。
除菌後は2か月空けて除菌診断を行います。
除菌薬
除菌薬には、一次除菌薬と二次除菌薬(一次除菌が失敗した場合)があります。
一次除菌薬
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)
- アモキシシリン(ペニシリン系抗菌薬)
- クラリスロマイシン(マクロライド系抗菌薬)
二次除菌薬
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)
- アモキシシリン(ペニシリン系抗菌薬)
- メトロニダゾール
ペニシリンアレルギーがある場合はテトラサイクリン系やニューキノロン系を使う場合もあるそうです。
ピロリ除菌薬の語呂合わせ・覚え方「PACMAN」
P→PPI
A→アモキシシリン(ペニシリン系)
C→クラリスロマイシン(マクロライド系)
※上記3つを一次除菌で使用
M→メトロニダゾール
※二次除菌でクラリスロマイシンの代わりに使用
A→Alchol
N→NG ※除菌中は飲酒禁止