- A1 消化管 一般各論
- A2 血液 一般各論
- A3 耳鼻咽喉科 一般各論
- A4 免疫 一般各論
- A5 産婦人科 一般各論
- A6 小児科 一般各論
- A7 感染症 一般各論
- A8 皮膚科 一般各論
- A9 消化管 一般各論
- A10 産婦人科 一般各論
- A11 免疫 一般各論
- A12 精神科 一般各論
- A13 感染症 一般各論
- A14 小児 一般各論
- A15 産婦人科 臨床各論
- A16 循環器 臨床各論
- A17 消化管 臨床各論
- A18 産婦人科 臨床各論
- A19 皮膚科 臨床各論
- A20 血液 臨床各論
- A21 眼科 臨床各論
- A22 救急 臨床各論
- A23 耳鼻咽喉科 臨床各論
- A24 呼吸器 臨床各論
- A25 精神科 臨床各論
- A26 耳鼻咽喉科 臨床各論
- A27 小児科 臨床各論
- A28 泌尿器科 臨床各論
- A29 腎 臨床各論
- A30 血液 臨床各論
- A31 消化管 臨床各論
- A32 小児科 臨床各論
- A33 消化管 臨床各論
- A34 循環器 臨床各論
- A35 神経 臨床各論
- A36 内分泌代謝 臨床各論
- A37 神経 臨床各論
- A38 皮膚科 臨床各論
- A39 循環器 臨床各論
- A40 皮膚科 臨床各論
- A41 呼吸器 臨床各論
- A42 肝胆膵 臨床各論
- A43 腎 臨床各論
- A44 感染症 臨床各論
- A45 産婦人科
- A46 耳鼻咽喉科 臨床各論
- A47 神経 臨床各論
- A48 整形 臨床各論
- A49 泌尿器科 臨床各論
- A50 産婦人科 臨床各論
- A51 呼吸器 臨床各論
- A52 感染症 臨床各論
- A53 循環器 臨床各論
- A54 免疫 臨床各論
- A55 免疫 臨床各論
- A56 免疫 臨床各論
- A57 救急 臨床各論
- A58 眼科 臨床各論
- A59 内分泌代謝 臨床各論
- A60 消化器 臨床各論
- A61 循環器 臨床各論
- A62 眼科 臨床各論
- A63 産婦人科 臨床各論
- A64 血液 臨床各論
- A65 感染症 臨床各論
- A66 加齢老年学 臨床各論
- A67 整形外科 臨床各論
- A68 小児科 臨床各論
- A69 内分泌代謝 臨床各論
- A70 消化管 臨床各論
- A71 産婦人科 臨床各論
- A72 肝胆膵 臨床各論
- A73 産婦人科 臨床各論
- A74 血液 臨床各論
- A75 神経 一般各論
- アンケート結果
A1 消化管 一般各論
問題
胃がんリスク層別化検診(ABC検診)で行われるHelicobacter pyloriの検査はどれか。
- 鏡検法
- 尿素呼気試験
- 迅速ウレアーゼ試験
- 便中Helicobacter pylori抗原測定
- 血清抗Helicobacter pylori抗体測定
解説
【テーマ】ピロリ菌検査
【正答】e
胃がんリスク層別化検診(ABC検診)は、人間ドックなどで行われるHelicobacter pyloriの検査です。胃がんリスク層別化検診では、一次スクリーニングとして、血清または尿中から抗Helicobacter pylori抗体を測定し、二次精密検査として胃内視鏡検査を行います。
鏡検法、培養法、迅速ウレアーゼ試験は、胃粘膜の検体が必要なので、内視鏡検査前の段階では行えません。尿素呼気試験、便中Helicobacter pylori抗原測定、血清抗Helicobacter pylori菌抗体測定、(選択肢にはないですが)尿中抗Helicobacter pylori抗体測定は、内視鏡検査を必要としないので、スクリーニングに適しています。
胃がんリスク層別化検診では、Helicobacter pylori検査と同時に胃粘膜萎縮の評価を血清ペプシノゲン測定により行います。したがって、スクリーニングに適した上記の検査の中でも、両方同時に測定できる血液検査が最も適しており、ABC健診で使われています。
作問者コメント

尿素呼気試験と迅速ウレアーゼ試験しか知らない人が多そうなので出題しました。よく分からなくても「検診で行うんだから血液検査一択でしょ」で正解に至れればOKです。
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A2 血液 一般各論
問題
Hodgkinリンパ腫の治療薬として正しいのはどれか。2つ選べ。
- ニボルマブ
- セツキシマブ
- モガムリズマブ
- パニツムマブ
- ブレンツキシマブ ベドチン
解説
【テーマ】分子標的薬
【正答】a,e
- ニボルマブは、悪性黒色腫治療を目的とし、非小細胞肺癌などに適用拡大された分子標的治療薬の一つで、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品であり、当時の京都大学医学部における本庶佑の研究チームが開発に貢献し、ノーベル医学生理学賞を受賞した。商品名オプジーボ®︎。「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」にも適応が拡大された。
- セツキシマブ は、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合して、EGFRの働きを阻害するモノクローナル抗体である。大腸癌などに適応がある。
- モガムリズマブは抗CCR4ヒト化モノクローナル抗体。再発性・難治性のATLなどに使用。
- パニツムマブは、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とする完全ヒト型IgG2モノクローナル抗体である。K-ras変異のない大腸癌に適応がある。
- ブレンツキシマブ ベドチンは抗CD30モノクローナル抗体に微小管阻害薬のモノメチルアウリスタチンEが結合した分子標的治療薬。「再発または難治性のCD30陽性のホジキンリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫」を適応として製造承認された。
作問者コメント

ノーベル賞とったので流行るかなと思っての出題。
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A3 耳鼻咽喉科 一般各論
問題
発生にヒトパピローマウイルスの関与が強いとされる頭頸部癌はどれか。
- 上咽頭癌
- 中咽頭癌
- 下咽頭癌
- 甲状腺癌
- 喉頭癌
解説
【テーマ】HPV関連頭頸部癌
【正答】b
HPV関連の癌としては子宮頸癌が有名ですが、中咽頭癌も重要です。アメリカでは新規発生のHPV関連の癌としてはもはや中咽頭癌が最多になっています。
ほかの頭頸部領域のウイルス関連癌としては、上咽頭癌がEBV関連であることが有名です。
作問者コメント

HPV関連中咽頭癌は頭頸部癌において一つの重要なトピックスです。とくにHPV非関連中咽頭癌と比較して予後が良いという特徴もあるので、これも押さえておきたいポイントです。
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A4 免疫 一般各論
問題
家族性地中海熱について誤っているのはどれか。
- 周期性発熱がみられる。
- 常染色体劣性遺伝である。
- コルヒチンが有効である。
- 原因遺伝子は特定されていない。
- インフラマソーム機能の破綻が原因である。
解説
【テーマ】家族性地中海熱
【正答】d
各選択肢に関して、以下の通り。
家族性地中海熱は自己炎症性疾患の一つである。自己免疫性疾患が獲得免疫の異常であるのに対し自己炎症性疾患は自然免疫の異常と対照される。自己炎症性疾患の多くは周期性の発熱、関節炎、腹部症状、眼症状などを伴う。
家族性地中海熱はインフラマソーム制御タンパク(pyrin)の遺伝子の異常であり、常染色体劣性遺伝の形式をとる。38℃以上の周期性発熱を認め、胸膜炎、腹膜炎、関節炎を伴う。治療薬としてはコルヒチンが有効である。
作問者コメント

平成30年度よりガイドラインに追加になった項目ということで出題してみました。自己炎症性疾患の疾患概念も確認しておくといいと思います。
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A5 産婦人科 一般各論
A6 小児科 一般各論
問題
手足口病について正しいのはどれか。2つ3つ選べ。
- 接触感染する。
- 瘢痕を伴うことがある。
- 軟口蓋の水泡形成が特徴的である。
- 口腔粘膜にアフタ性病変をきたす。
- 合併症として無菌性髄膜炎に注意する必要がある。
解説
【テーマ】手足口病
【正答】a,d,e
2019年に大流行した手足口病に関する問題。10歳以下の小児に多く、夏から秋に多発する。
- 主な感染経路は飛沫感染。だが、接触感染することもあるとされる。
- 発疹を認めるが、色素沈着や瘢痕は伴わない。
- 軟口蓋の水疱形成はヘルパンギーナの所見。
- 正しい。水疱性、アフタ性病変を認める。
- 正しい。エンテロ、コクサッキーなどのウイルスが原因となり無菌性髄膜炎をきたす。
作問者コメント

手足口病がかなりニュースになったことを踏まえ出題してみました。よく比較されるヘルパンギーナを押さえておくと選択肢の評価がスムーズになると思います。
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A7 感染症 一般各論
問題
ヒトパルボウイルスB19感染症について誤っているのはどれか。
- 予防接種が存在する。
- 予後は比較的良好である。
- SLEとの鑑別が必要である。
- 妊婦の初感染が胎児水腫の原因となる。
- 成人例では関節痛の症状がみられることが多い。
解説
【テーマ】ヒトパルボウイルスB19感染症
【正答】a
- 予防接種は存在しない。
- 予後良好で対症療法で通常は軽快する。
- 症例によっては抗核抗体の上昇、補体の低下などSLEとの鑑別が必要となる所見がみられる。
- 妊婦の初感染により、胎児水腫、胎児貧血、流産の原因となる。
- 両側手の手、足首、膝関節などに関節痛を50%の症例がきたす。
【参考】112A46
関連する疾患として、ムンプス感染症(おたふく風邪)があります。こちらは予防接種が存在します。
作問者コメント

特に関節痛はYNでも太字、及び112A46の主訴としても挙げられているため、成人例での特徴について確認しておいたほうがいいかもしれません。
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A8 皮膚科 一般各論
問題
足白癬について正しいのはどれか。
- 第4趾間に好発する。
- 6時間以内に角層に侵入する。
- 内臓に病変を起こす可能性がある。
- 湿疹やびらんに対して外用抗真菌薬が有用である。
- 感染者と一緒に入浴することで感染リスクが2倍となる。
解説
【テーマ】足白癬
【正答】a
- 正解。 最も動きの少ない第4趾間に好発する。
- 角層に侵入するまで12時間以上かかると言われている。
- 角層に生息するため、角層を持たない内臓には基本的に感染することはない。
- 湿疹やびらんに対する抗真菌薬の外用は治癒を遅らせる。
- 感染者と一緒に入浴しても、シャワーなどでよく体を洗い流せば基本的に感染することはない。
作問者コメント

父親が足白癬でも娘には感染りませんでした(体験談)
【作問者をフォロー】アンキパン(Twitter)
A9 消化管 一般各論
問題
以下のうちから誤っているのはどれか。
- 刺激性下剤は長期連用で耐性が出現する。
- 便秘症には大建中湯などの漢方薬がよく用いられる。
- 痙攣性便秘に刺激性下剤を用いると腹痛を来しやすい。
- 酸化マグネシウムは腎機能障害を有する高齢者に良い適応である。
- 酸化マグネシウムを処方する際は定期的に血中マグネシウム値を測
定する。
解説
【テーマ】下剤
【正答】d
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」において、腎機能障害を有する高齢者には酸化マグネシウムを使用しないように、強く奨励されています。
作問者コメント

イヤーノートでも日本初の慢性便秘診療ガイドライン(2017)の発行を受け、便秘及び下剤の内容が刷新されています。狙われてもおかしくないと感じたため、作問させていただきました。
【作問者をフォロー】謙虚研修医先生(Twitter)、研修医こーたの出来たてクリニック
A10 産婦人科 一般各論
問題
「妊娠中の明らかな糖尿病」と診断できるのはどれか。
- HbA1c値6.9%
- 空腹時血糖100mg/dL
- 75gOGTT2時間値154mg/dL
- 確実な糖尿病網膜症がある者
- 過去に糖尿病と診断されている妊婦
解説
【テーマ】妊娠糖尿病
【正答】a
「妊娠中の明らかな糖尿病」は、空腹時血糖≧126mg/dLもしくはHbA1c値≧6.5%のいずれかがあれば診断できる。
また、「妊娠糖尿病」は、空腹時血糖≧92mg/dL、OGTT後1時間血糖≧180mg/dL、OGTT後2時間血糖≧153mg/dLのいずれかがあれば診断できる。
「糖尿病合併妊娠」は、もともと糖尿病の人が妊娠することである。
- 妊娠中の明らかな糖尿病と診断できる。
- 妊娠糖尿病と診断する。
- 妊娠糖尿病と診断する。
- 糖尿病合併妊娠と診断する。妊娠の間に確実な網膜症が新規発生することは考えにくい。
- 糖尿病合併妊娠と診断する。
【参考】113C51
作問者コメント

妊娠糖尿病と妊娠中の明らかな糖尿病と糖尿病合併妊娠を正しく診断できるかを確認する問題。
【作問者をフォロー】trino246(Twitter)
編集者コメント

良問だと思います。きちんと考えれば取れる問題ですが、落としている人が多くて残念です。
A11 免疫 一般各論
問題
Sjögren症候群について誤っているのはどれか。
- 悪性リンパ腫を合併しやすい。
- 腺組織に形質細胞浸潤がみられる。
- 高γ-グロブリン血症を合併しやすい。
- 口腔内乾燥に塩酸ピロカルピンが有用である。
- 間質性肺炎合併例では病理でOPパターンを示すことが多い。
解説
【テーマ】Sjögren症候群
【正答】e
Sjögren症候群に合併する間質性肺炎は、病理でNSIPパターンを示すことが最も多いとされる。
Sjögren症候群は遠位尿細管アシドーシスを合併することも有名です。
作問者コメント

正解した方はすごいです。是非リウマチ科にどうぞ。
【作問者をフォロー】アンキパン(Twitter)
A12 精神科 一般各論
問題
疾患ではなく状態と定義されているのはどれか。
- うつ病
- せん妄
- 認知症
- 統合失調症
- 双極性障害
解説
【テーマ】せん妄
【正答】b
せん妄は「疾患」ではなく、「状態」と定義されています。
類似の内容として、けいれんは「状態」ですが、てんかんは「疾患」ということも押さえておきましょう。
【参考】113C51
作問者コメント

せん妄は病気じゃない!とうちの大学の教授が熱く語っていたので出題してみました。定義、診断基準が国試においては重要だと思います。ふざけているようですが、結構まじめな気持ちで作った問題です。
【作問者をフォロー】きよすけ(Twitter)、現役医大生きよすけのブログ
A13 感染症 一般各論
問題
カルバペネム系抗菌薬が有効とされる多剤耐性菌はどれか。
- 多剤耐性緑膿菌〈MDRP〉
- バンコマイシン耐性腸球菌〈VRE〉
- 多剤耐性アシネトバクター〈MDRA〉
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉
- 基質特異性拡張型βラクタマーゼ〈ESBL〉産生菌
解説
【テーマ】多剤耐性菌
【正答】e
多剤耐性緑膿菌〈MDRP〉と多剤耐性アシネトバクター〈MDRA〉は、カルバペネム系・ニューキノロン系・アミノグリコシド系の抗菌薬が無効とされています。
また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉は、カルバペネム含めβラクタム系全般が無効です。有効な抗菌薬としてはバンコマイシンが有名です。ちなみにメチシリン「感受性」黄色ブドウ球菌であればカルバペネム系抗菌薬は有効です。
バンコマイシン耐性腸球菌〈VRE〉は、バンコマイシンに耐性を持った菌です。有効な抗菌薬は現在のところ存在せず、カルバペネム系抗菌薬も効きにくいとされています。
基質特異性拡張型βラクタマーゼ〈ESBL〉産生菌は、特殊なβラクタマーゼを産生する菌です。
βラクタマーゼは黄色ブドウ球菌などが産生し、ペニシリン系抗菌薬を分解する性質があります。したがって、βラクタマーゼ産生菌にはセフェム系の抗菌薬が有効とされています。
ESBLはペニシリン系抗菌薬だけでなくセフェム系抗菌薬まで耐性を持ちます。有効な抗菌薬はカルバペネム系やニューキノロン系とされています。
全て接触感染するため、易感染者の多い院内での発生が問題となります。
作問者コメント

逆にESBL産生菌以外にはカルバペネム系が効かないということを押さえておいてほしいです。耐性菌は世界的な問題です。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
A14 小児 一般各論
問題
重症先天性好中球減少症について誤っているのはどれか。
- 好中球数が200/μL未満となる。
- 抗菌薬の予防投与が必須である。
- 生後より細菌感染症を反復する。
- 頻度が高い遺伝形式は常染色体優性遺伝である。
- 根治療法として顆粒球コロニー刺激因子〈G-CSF〉投与がある。
解説
【テーマ】重症先天性好中球減少症
【正答】e
重症先天性好中球減少症〈SCN〉は好中球の量的異常の代表的疾患で、好中球減少を示し、生後より細菌感染症を合併するため、抗菌薬による感染予防が必須である。
末梢血好中球数は200/µL未満となり、骨髄検査では前骨髄球、骨髄球での成熟障害を認める。
SCNで最も頻度が高いのは、好中球エラスターゼをコードするELANE遺伝子の異常によるものであり、常染色体優性遺伝の形式をとる。
根治治療は造血幹細胞移植だが、顆粒球コロニー刺激因子〈G-CSF〉を投与されるようになり大半の症例で有効性を示し長期生存が可能になっている。
作問者コメント

重症先天性好中球減少症は原発性免疫不全症の項目に新しく追加されました。本項目に関する出題はまだないため、大筋の重要な点を抑えておきましょう。
【作問者をフォロー】ま(Twitter)
A15 産婦人科 臨床各論
問題
32歳の初産婦。産褥3日目で入院中である。妊娠38週5日に陣痛発来し、3,200gの女児を経腟分娩した。分娩時間は15時間で、分娩時出血量は250mlであった。本日朝の体温は37.4℃、悪露は赤色で少量であった。昼食後「血の塊が出た」との訴えがあり診察を行った。腹部の皮膚に縦走する多数の白色の線を、両側下腿に浮腫を認めた。子宮底は臍高で柔らかく触知し、腟鏡診で凝血塊を伴う中等量の血性分泌物と子宮口から持続する少量の出血とを認める。
対応として適切でないのはどれか。
- 双手圧迫
- 出血箇所の縫合
- オキシトシン投与
- エルゴメトリン投与
- 子宮底輪状マッサージ
解説
【テーマ】弛緩出血
【正答】b
弛緩出血は胎盤娩出後の子宮収縮不良によって、凝血塊を含む暗赤色血液が持続する病態です。
ショックやDICを合併していなければ、まず子宮収縮薬(オキシトシンやエルゴメトリン)投与や、子宮底輪状マッサージ、双手圧迫で、保存的治療を図ります。
鑑別として頸管裂傷による出血があり、こちらは鮮紅色の血液の流出が胎児娩出直後から持続します。対応は出血箇所の縫合です。
問題文からは頸管裂傷よりも弛緩出血が考えられるため、bが誤りとなります。
【参考】101E12、102B48、102F31、103G57、106A59、107E42、108E53
作問者コメント

弛緩出血は101~108回まで頻繁に出題されていましたが、最近の出題がないので出してみました。基本的な問題だと思います。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
A16 循環器 臨床各論
問題
78歳男性。呼吸困難と下腿浮腫を主訴に来院した。 現病歴:1か月前から歩行時の呼吸困難と下腿浮腫とを自覚するようになった。呼吸困難は徐々に悪化し、10mさえも歩くことが困難になり受診した。 既往歴:75歳時に心筋梗塞にて経皮的冠動脈形成術(薬剤溶出性ステント留置)。HMG-CoA還元酵素阻害薬、抗血小板薬を処方されている。 検査結果では左室駆出率は28%と高度に低下していた。
左室駆出率の低下した心不全の予後を改善させる治療薬はどれか。2つ選べ。
- β遮断薬
- ジゴキシン
- ループ利尿薬
- カルシウム拮抗薬
- アルドステロン受容体拮抗薬
解説
【テーマ】 慢性心不全の治療薬
【正答】a,e
β遮断薬は交感神経系の抑制、左室リモデリングの改善をもたらし、心不全の予後改善効果があることが示されている。
アルドステロン受容体拮抗薬はβ遮断薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を使用しても左室駆出率が35%以下で心不全症状がある場合に、心不全の予後改善効果があることが示されている。
作問者コメント

左室駆出率の低下した心不全患者において予後を改善する薬剤を把握しておきましょう。
【作問者】匿名希望
A17 消化管 臨床各論
問題
65歳男性。腹痛を主訴に救急搬送となった。
現病歴:起床時より上腹部痛を自覚していたが疼痛は間欠的で波があり、午後には近医にて透析を行い帰宅した。帰宅後より腹痛は持続的に変わり、徐々に増悪していったため、救急要請し搬送となった。
現 症:体温36.9℃、脈拍101/分、整。血圧215/128mmHg、呼吸数24/分、頸静脈怒張なし。心音、呼吸音に異常なし。腹部診察では上腹部と右側腹部に打診痛と圧痛がある。腹膜刺激徴候ははっきりとしない。冷汗あり。CVA叩打痛なし。下腿浮腫や冷感なし。
既往歴:慢性腎臓病ステージ5D、陳旧性心筋梗塞、動脈閉塞に対するバイパス術。血液所見:白血球7,500/μL、Hb15.1g/dL、血小板21.4万/μL。
血液生化学所見:Dダイマー 10.16μg/mL(基準1.0以下)、BUN 32.9mg/dL、クレアチニン 7.87mg/dL、AST 13IU/L、ALT 13IU/L、LD 330IU/L (基準値: 119~229)、CRP 0.75mg/dL。単純CTにおいて広範囲の小腸の拡張と液体貯留あり。closed loop様所見なし。腹水貯留なし。造影CTにて門脈内ガス、腸管の壁内気腫が認められた。また、上腸間膜動脈は起始部から7~8cm末梢まで造影されており、その後造影不良な腸管が広範囲に存在している。
考えられる疾患は次のうちどれか。
- 腸閉塞
- 敗血症
- 麻痺性イレウス
- 上腸間膜動脈塞栓症
- 非閉塞性腸間膜虚血
解説
【テーマ】非閉塞性腸間膜虚血〈NOMI〉
【正答】e
非閉塞性腸間膜虚血〈NOMI〉に関する出題。腸間膜虚血疾患の一つでその中でも診断が難しく、かつ稀で致死的である
NOMIのリスクには、慢性腎不全、心血管疾患の既往、心不全、末梢動脈疾患、血管収縮薬使用(コカインやメタンフェタミンを含む)、多臓器不全、ジゴキシン内服歴、重度熱傷などがある。NOMIをはじめとする腸間膜虚血疾患では乳酸の上昇とDダイマーの上昇が見られる。造影CTでは腸管壁の造影異常、腸管内気腫、門脈ガスなどの所見が認められるが、NOMIの25%においてCTが正常であるとの報告がなされている。腹膜刺激は乏しいことが多い。
- closed loop様所見が見られないことから否定的である。
- 腸間膜虚血が認められるため、否定的。
- 門脈内ガス、壁内気腫など器質的異常が認められているため、否定的。
- 上腸間膜動脈塞栓症であれば、心房細動などによって生じた血栓がSMAの近位部(起始部から3cm以内)に詰まる。したがって「起始部から7~8cm末梢まで造影されている」という造影CTの所見より否定的である。
- 正しい。
【参考】108D24、104I50
作問者コメント

NOMIは平成30年版医師国家試験出題基準より新たに追加された疾患である。uncommon criticalな疾患であり、鑑別として「想起」できるかどうかが重要な疾患である。新しく追加された疾患であり、出題されることは十分に想定されるため出題した。実際のNOMIの診断の流れとしては、腹膜刺激の乏しい腹痛やリスクなどから腸間膜虚血を臨床的に疑い、バイタルが許すなら造影CTを行い、ほかに腸間膜虚血を起こすSMA閉塞や塞栓、門脈内血栓症を除外し、血管造影検査を行うことになる。本問題においてもそうだが、NOMI患者は腎機能障害や急性腎障害を起こしている場合が多いが、造影検査を行うことが重要で、早期の外科的介入が必要となる。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A18 産婦人科 臨床各論
問題
37歳の1回経妊0回経産婦。妊娠35週0日。昨夜から胎動の減少を自覚し来院した。これまでの妊娠経過は順調であった。身長160cm、体重56kg(非妊時52kg)(①)。血圧110/68mmHg。尿検査:蛋白(-)、糖(-)。子宮底長28cm(②)、腹囲85cm。Leopold診察法では、第1頭位であった。NSTを行ったところ、胎児心拍は136/分(③)で、胎動に一致する胎児頻脈を20分間に1回のみ認めた。また超音波検査では、30分間の観察の間に、胎児の呼吸様運動と四肢の屈曲・伸展運動を認めたが、胎動は1回のみであった。また羊水ポケットは1cm(④)、胎児推定体重は1,790g(⑤)であった。
下線部①~⑤のうち、BPS(Biophysical profile score)の評価項目に含まれるのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説
【テーマ】BPS(Biophysical profile score)
【正答】d
BPS(Biophysical profile score)は以下で判定します。
判定 | ||
2(正常) | 0(異常) | |
呼吸様運動 | 30分に30秒以上続く運動が1回以上 | 左記よりも運動が少ない |
胎動 | 30分に3回以上の運動 | 左記よりも運動が少ない |
筋緊張 | 四肢の伸展および屈曲(手の開閉) | 左記よりも運動が少ない |
羊水量 | 2cm以上のポケットが1箇所以上 | ポケットが無いあるいは2cm未満 |
NST | 20分間に2回以上の胎動に一致した一過性頻脈(15秒以上15bpm以上の心拍数変化) | 左記に定義した一過性頻脈が少ない(reassuring) |
したがって、項目としてはdの羊水ポケットが正解です。
ここからは発展的な内容なので、読み飛ばしていただいても大丈夫です。
問題文より、BPSがつけられるようにしてあるので、計算してみましょう。
- 「胎動に一致する胎児頻脈を20分間に1回のみ認めた」→0点
- 「胎児の呼吸様運動と四肢の屈曲・伸展運動を認めた」→2+2点
- 「胎動は1回のみであった」→0点
- 「羊水ポケットは1cm」→0点
したがって、BPSスコアは4点となり、NRFS(胎児機能不全)を強く疑います。
また、胎児推定体重は1,790g(-2SD)であることから、背景にFGR(胎児発育不全)があると考えられます。
【参考】104G38、107B47
作問者コメント

BPSの項目についての出題は過去にありますが、スコアリングの問題はまだ無いです。出ても正答率はかなり低いと予想されますが…。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
A19 皮膚科 臨床各論
問題
24歳女性。上腕外側に赤く光沢のある瘢痕を認めており、拡大傾向にあるため来院した。瘢痕は10代の頃に虫に刺された箇所から発生した。瘢痕は圧痛と掻痒を伴い、掻痒は飲酒時に特に強くなる。瘢痕の写真を示す。
この病変の主座はどこか。
- 真皮
- 角質層
- 基底層
- 有棘層
- 皮下組織
解説
【テーマ】ケロイド
【正答】a
ケロイドや肥厚性瘢痕は、創傷を契機として、真皮で膠原繊維(コラーゲン線維)が過剰に増殖する病態です。どちらも圧痛や掻痒を伴うことがあり、特にや飲酒や入浴など血行が促進されたときに掻痒感が増します。
両者の違いとしては、肥厚性瘢痕は創部に限局し数年以内に萎縮しますが、ケロイドは創部を超えて拡大していく傾向にあります。
【参考】105E21
作問者コメント

ポリクリでケロイドにステロイド局注しているところを見たけど、我慢強い大人でも涙ぐむほど痛いみたいだよ。硬い瘢痕の中に液体を注入するのはメチャ痛だよね。
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A20 血液 臨床各論
問題
62歳の男性。血尿を主訴に来院した。1週間前に家族から顔が黄色いと言われ、同時期に血尿に気付いた。3日前から尿の赤みが増し、倦怠感もあるため受診した。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。脈拍84/分、整。血圧132/80mmHg。眼瞼結膜は貧血様であり、眼球結膜に黄染を認める。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見: 蛋白(-)、糖(-)、潜血3+、沈渣でヘモジデリンを認める。血液所見:赤血球176万、Hb 7.0g/dL、Ht 19%、網赤血球7%、白血球7,800(桿状核好中球10%、分葉核好中球70%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球12%)、血小板22万、PT-INR 1.3(基準0.9~1.1)、APTT 37.7秒(基準対象32.2)、血漿フィブリノゲン377mg/dL(基準200~400)、FDP 26μg/mL(基準10以下)、Dダイマー9.7μg/mL(基準1.0以下)、アンチトロンビン65%(基準80~130)。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン8.2mg/dL、直接ビリルビン1.1mg/dL、AST 35U/L、ALT 28U/L、LD 1,987U/L(基準176~353)、ALP 234U/L(基準115~359)、尿素窒素29mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖84mg/dL、Na 143mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 104mEq/L。
この疾患について誤っているのはどれか。
- 血管内溶血
- 汎血球減少
- Ham test陽性
- NAPスコア低下
- GPIアンカーの先天的な合成障害
解説
【テーマ】発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
【正答】e
- 赤血球が補体に破壊されることで血管内溶血をきたす。
- 赤血球のみならず他系統の細胞にもGPIアンカーが発現していることから汎血球減少をきたす。
- 塩酸を加え酸性状況し、易溶血性をみる試験である。補体がアシドーシス下で活性が強くなるためこの試験が陽性となる。
- GIPアンカータンパクは好中球アルカリフォスファターゼにも発現しているため、欠損していることでそのスコアは低下する。
- 誤り。PIG-A遺伝子に後天的変異を持った造血幹細胞がクローン性に拡大した結果とされる。
【参考】113A30
汎血球減少をおこす疾患の語呂合わせはこちら。
作問者コメント

GPIアンカータンパクが、CD55、CD59(全血球)、AChE(赤血球)、ALP(好中球)に発現していることは覚えておいた方がいいかもしれませんね。
【作問者をフォロー】trino246(Twitter)
A21 眼科 臨床各論
問題
26歳男性。一週間前から頭痛と発熱を認め、昨日から視力障害を感じたため受診した。視力は右0.1(0.7×+2.5SD)、左0.1(0.6×3.0SD)。眼圧は右 12mmHg 左 15mmHg。角膜、水晶体、硝子体に異常所見なし。眼瞼結膜、眼球結膜ともに異常なし。両眼ともに前房に細胞を認める。眼底検査、光干渉断層計の結果、漿液性網膜剥離を認めた。
患者に対して説明する言葉の中で正しいのはどれか。
- 「頭痛発熱と視力低下は別の病気と考えられます」
- 「耳にも影響がでうるので聴力検査を行います」
- 「日本人より欧米人に多いとされています」
- 「できる治療は安静しかありません」
- 「抗菌薬を用いましょう」
解説
【テーマ】Vogt-小柳-原田病
【正答】b
感冒様症状の後の視力低下。その後検査所見も全てVogt-小柳-原田病に矛盾しないものとなっています。
- 誤り。視力低下の前に感冒様(髄膜炎様)症状を呈します。
- 正しい。視力低下期に感音難聴を呈すことが知られています。
- 誤り。日本人に多いことが知られています
- 誤り。dで述べた通りです。
- 誤り。治療薬はステロイド、免疫抑制薬、またアトロピン点眼などを行うこともあります。
作問者コメント

よく浦島太郎になぞらえられる原田病。色素消失は有名ですが、感音難聴もおじいちゃんっぽいですよね。
【作問者をフォロー】きよすけ(Twitter)、現役医大生きよすけのブログ
作問者コメント

眼科の治療は病変部位を意識しましょう。
【作問者をフォロー】キョロ(Twitter)
A22 救急 臨床各論
問題
80歳の男性。心停止のため救急車で搬入された。施設で突然倒れたため、職員が救急車を要請した。救急隊到着時に隊員により心停止が確認され、心肺蘇生が開始された。胸骨圧迫ならびにバッグバルブマスクを用いた人工呼吸を実施しながら病院に到着した。搬入時、救急隊のストレッチャーから処置台に移動後、モニターを装着して末梢静脈路の確保がなされ、直ちに胸骨圧迫が再開された。2分間の蘇生処置の後にモニター波形を確認したところ、以下のような波形であった。脈拍は触知しない。
次に行うべき対応はどれか。
- ノルアドレナリン静注
- アドレナリン静注
- 除細動
- 気管挿管
- 血圧測定
解説
【テーマ】心肺蘇生〈ACLS〉
【正答】b
- 蘇生の1stチョイスでは用いない。血管収縮作用>強心作用
- 無脈性電気活動のためアドレナリン投与。1回目のパルスチェックでは、VT/VFではまず電気ショックを行う。アルゴリズムを確認してください。
- VT/VFに対して行う。無脈性電気活動/心静止には用いない。
- 心電図波形確認後に急いで行うことではない。実際の現場では末梢確保、採血と同時に気管挿管も行われていることが多い。
- 血圧測定しても測定不能になるだろう。脈拍が確認されてからでよい。
【参考】113F57、看護師国家試験
作問者コメント

ACLS のアルゴリズムを理解していることと、心電図波形を見て適切に対応出来るかを問いたかった。2分間のCPRごとにパルスチエックを行う。心電図の解析が必要な理由は、除細動が必要かどうかを判定するためである。
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A23 耳鼻咽喉科 臨床各論
問題
8歳男児。数年前から発熱をくりかえすため来院した。発熱は39℃台で、3〜4日続き、同時に口内炎が生じる。近医で診断的治療として処方されたプレドニゾロン内服によって、発熱から2時間程度で解熱する。
この疾患の説明として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 男児に多い。
- 低身長が合併することが多い。
- 口蓋扁桃摘出術は無効である。
- 発熱時には抗生剤投与が必須である。
- 思春期には自然軽快することが多い。
解説
【テーマ】 PFAPA症候群
【正答】a,e
小児期のくりかえす発熱の鑑別として、あまり知られていませんがPFAPA〈アフタ性口内炎、咽頭炎、およびリンパ節炎を伴う周期熱〉症候群があります。
選択肢としてまとめておいたので特徴を整理しましょう。
- 周期的に発熱が生じ、数日間続く
- 発熱の間の期間は特に問題ないので、成長発達には影響しないとされている
- 口内炎(アフタ性潰瘍)を伴うことがある(以前は診断のため必須だったのですが、最近はそうでもないようです)
- 男児に多い
- 原因は不明
- 発熱時はステロイドが著効する(診断的治療として用いられます)
- シメチジンも効くことがある
- 口蓋扁桃摘出術が有効(理由はわかりませんが、病巣感染症だという医者もいます)
- 思春期には軽快することが多い
作問者コメント

「意外と有病率は高いけどまだ知られていない疾患」というのは出題されやすいような気がしますがどうなんでしょうか。小児科の立場としては「思春期には治るのだから手術は不要」、耳鼻科の立場としては「手術で治るのだから、とっとと手術を」となりがちな疾患です。
【作問者をフォロー】ゑびす先生(Twitter)
編集者コメント

意外と正答率が高くて驚きました。
A24 呼吸器 臨床各論
問題
75歳男性。呼吸困難を主訴に夜間救急外来を受診した。呼吸困難で病歴聴取が難しい。意識は清明、体温36.8℃。脈拍96回/分、整。血圧130/80mmHg。呼吸数20回/分。体格は痩せ型で、胸鎖乳突筋が肥厚し、吸気時に肋間や鎖骨上窩の陥入を認め、呼気が延長している。口すぼめ呼吸をしており、疲労感の強い様子である。家族の話によると、5年ほど前から自宅近くの診療所で在宅酸素療法が導入されており、鼻カニューラで1L/分の酸素を吸入している。また、昨日から食事が摂れていなかったという。胸部レントゲン写真では横隔膜の平低化を認め、明らかな気胸や浸潤影は認めなかった。動脈血ガス分析(鼻カニューラ1L/分)pH7.29、PaCO2 60Torr、PaO2 70Torr。
酸素療法による適切な初期対応はどれか。
- 鼻カニューラ1.5L/分
- 酸素マスク5L/分
- リザーバーマスク10L/分
- 非侵襲的陽圧換気〈NIPPV)〉
- 侵襲的人工換気
解説
【テーマ】COPD急性増悪
【正答】d
参考にした111F24との違いは血液ガス所見である。111F24の患者の動脈血ガス分析(鼻カニューラ1L/分酸素投与下):pH 7.35、PaCO2 55Torr、PaO2 60Torr
今回の患者は高二酸化炭素血症を認め、代償できず呼吸性アシドーシスをきたしている。COPDに対するNIPPVの適応として、呼吸性アシドーシス(ph<7.35 PaCO2>45)がある。
111F24ではアシドーシスは認めない。本症例ではPaO2 60Torr以上で酸素化は保たれている。SpO2 90%を目安に調節すればよく、いきなり高濃度酸素を投与する必要はない。介入を必要としているのは高二酸化炭素血症であり、酸素化に対してではなく換気不全の改善である。
考え方:呼吸を評価する際には酸素化と換気に分けて考えることが重要。
酸素化は酸素が血液に取り込まれることで、PaO2 60mmHg(SpO2 90%以上)を目標とする。酸素化不良については吸入酸素濃度を上げることで対処する。
換気はCO2の値を目標にするのではなく、呼吸性アシドーシスによるアシデミアの程度を指標とし、pH 7.2〜7.25以上を保つことを目標とする。(pH 7.2未満では人間の臓器機能の維持が困難になるため) 換気不全に対しては補助換気で対処する必要があり、挿管人工呼吸管理、もしくは非侵襲的陽圧換気〈NIPPV〉を行う。
今回の酸素療法の目的は、高二酸化炭素血症・アシドーシスの改善、呼吸筋疲労の改善、である。
- アシドーシスがなければ、初期対応としてはこの選択肢は◯。普段の酸素流量に0.5〜1L/分追加し呼吸苦が改善するか様子を見る。呼吸苦の改善乏しければナルコーシスに注意しながら増量するか、NIPPVを検討する。
- COPDなどの慢性II型呼吸不全の患者に高濃度の酸素を投与するとCO2ナルコーシスになる可能性がある。
- bと同様。
- 正しい。
- 意識障害がある場合や、循環動態が不安定な時、呼吸停止時は考慮される。この患者において1stではない。
【参考】111F24、非侵襲的陽圧換気の適応を問う問題:111E38、CO2ナルコーシスの対応:111I46、113C46
作問者コメント

COPD急性増悪の対応ABCを問う問題はここ数年ほぼ毎年出題されている。酸素療法という視点からの出題。出題の意図としては、NIPPV導入の判断を問いたかった。適応と禁忌について確認しておきましょう。
【作問者をフォロー】ねむぴ先生(Twitter)
編集者コメント

CO2ナルコーシス予防に低流量酸素!と飛びついてしまった人が多いようです。酸素化と換気の違いについて確認しておきましょう。
A25 精神科 臨床各論
問題
29歳の男性。長男。開業医の両親の元に生まれ、金銭的な不自由なく育った。幼少期から家業を継ぐことを期待され、高校を卒業後は3浪の末、大都市の医学部に入学し一人暮らしを始めた。周囲に遅れまいと必死に勉強しつつ、実習も欠席することなく参加し、親友もできた。ところが、一度進級試験に失敗してからは友人たちとも疎遠になり、新しい学年にも馴染めずに留年を繰り返している。かつての友人たちが就職を話題にする時期になって、自分は人生に何を求めているのか、分からなくなってしまった。両親は長男である自分に家業を継ぐことを期待していたし、ずっと自分もそのつもりだったが、今となっては弟が医師として就業している。このまま何をどうすれば良いのか分からなくなってしまった。
この青年が直面している課題はどれか。
- 社会性の習得
- 分離不安の克服
- 自我同一性の形成
- 無意識的葛藤の評価
- 抽象的思考能力の向上
解説
【テーマ】自我同一性
【正答】c
注目すべきは「このまま社会に出るのが不安になってきた」という点。どうして今の人生をこのよう感じるのようになったのかは個々人によって異なるが、この様に感じているのは青年期に特有の自我同一性の形成の一環である。
社会性の習得:他者の存在に積極的に関わろうとする姿勢、技能を指す。幼児期にみられる。
分離不安の克服:(母)親と離れるときの不安であり、幼児期にみられる。
自我同一性の形成:自分が何者であるかを確立することを指す。青年期にみられる。一般では「自我が芽生える」などという言葉を3歳ごろの小児に用いるため、誤解のないように。
無意識的葛藤の評価:フロイトらによって確立された精神療法である。
抽象的思考能力:複数の物事の共通点を見つけ、一つにまとめる能力である。学童期にみられる。思考能力としてもう一つ具体的思考というものがあり、頭の中で思い描いているイメージを他者に分かるように明確にすることである。
【参考】103B43、105G62-64、107E45、108B47
作問者コメント

103B43出題時点で正答率が60%を切っている。 以降、自我同一性の形成」がメインテーマの出題は数回あり、年々正答率は上昇していたためか近年は出題されていない。最後の出題から丸5年開いているため、そろそろ出てもおかしくないと思って出題した。
今回の文章は馴染みのない人には全く理解できないエピソードだったとは思うが、キーワードをひろって欲しい。
こういった悩みを抱えている人は多く、不登校や欠勤の原因にもなり得る。「自分の方が辛い経験をしてきた」「そんなので挫折を語るな」などといった不幸自慢ツイートでファボ稼ぎをしているアカウントが散見されるが、人によって困難だと思うことは大きく異なることを頭に入れておいてほしい。
問題のモデルは103B43の問題を見て号泣していた友人。その友人は結局医師になれたが、今では臨床医を辞め一般企業に就職している。
【作問者をフォロー】医学エンタメくん(Twitter)
A26 耳鼻咽喉科 臨床各論
問題
2カ月男児。新生児スクリーニングのDPOAE(歪成分耳音響放射)で両側refer(再検査)となったため来院した。母親は妊娠2カ月まで、妊娠に気付かずにアルコールを摂取したこととの関連を心配している。現時点でそのほかの疾患や形態異常は指摘されていない。
この症例の母親に対する声かけとして適切なのはどれか。
- 「この子には補聴器が必要です」
- 「安心して下さい、聞こえていると思います」
- 「難聴の確定のためには、追加の精査が必要です」
- 「音声言語の習得は難しいので、手話を覚えてください」
- 「アルコール摂取の影響で難聴になった可能性が高いです」
解説
【テーマ】新生児聴覚スクリーニング
【正答】c
新生児聴覚スクリーニングが広まりを見せていて、出生児全例への施行が目標とされています。しかし一方で、一次スクリーニングである新生児聴覚スクリーニングの段階では、難聴の確定ではないにも関わらず、母親への影響は多大と考えられます。あくまで一次スクリーニングであるため。ABR(聴性脳幹反応)やASSR(聴性定常反応)での二次スクリーニングが必要です。
また新生児聴覚スクリーニングはABRとDPOAE(歪成分耳音響放射)のいずれかによって行われていますが、DPOAEの方が精度として低いと考えられています。
【参考】新生児聴覚スクリーニング
作問者コメント

「難聴時の想起支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト」というのが厚生労働省主体で始まっています。それにまつわる出題も増えるかも…と予想しました。
【作問者をフォロー】ゑびす先生(Twitter)
A27 小児科 臨床各論
問題
生後5ヶ月の男児。摂食がよくないため、母親に連れられて来院。以前よりも頭の位置を保つことができなくなり、母乳を飲む様子も弱々しくなっているとのこと。児の体重は5〜10パーセンタイル、身長および頭囲は25パーセンタイルである。脈拍37/分。聴診にてgallop rhythmを認める。血圧70/45mmHg。肝腫大あり。胸部X線検査において心拡大を認める。遺伝子検査にて、α-1,4-glucosidaseの欠損が認められた。
この患者の検査として適切でないのはどれか。
- 筋電図
- 筋生検
- 血液検査
- 心エコー
- 腹部造影CT
解説
【テーマ】Pompe病
【正答】e
Pompe病に関する出題。頭の位置を保持できない筋力低下、心拡大、低血圧、肝腫大、α-1,4-glucosidaseの欠損からPompe病であることがわかる。Pompe病はⅡ型糖原病で最重症型であり、通常1歳前後で心不全のため死亡する。原因はα-1,4-glucosidaseの欠損であり、リソソーム内にグリコーゲンが蓄積する。
- 筋力低下の鑑別として有用であり、筋電図では筋原性変化が見られる。
- リソソーム内にグリコーゲンが蓄積することが病態であり、筋生検にてPAS陽性物質がリソソーム内に蓄積していることが確認できるため、診断にあたり有用な検査である。
- CKやALT、ASTの上昇が見られるため、正しいと言える。
- 心エコーによる心肥大を確認し、心機能評価ができる点で診断に有用であると言える。
- 肝腫大は見られるが、造影することによる診断の補助があるとは言いにくい。
【参考】100A56、86E42
作問者コメント

糖原病に関する出題としてはvon Gierke病の出題が主であるが、最も重症型であるPompe病も重要な疾患であると言えるであろう。筋生検という侵襲の大きい検査を病態を考えた上で、この児に対する検査として有用であると言えるかどうかがポイントであると考える。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A28 泌尿器科 臨床各論
問題
64歳の男性。発熱と排尿困難とを主訴に来院した。
現病歴:2年前から夜間頻尿と尿線狭小とを自覚していたが、生活に支障がないため放置していた。5日前から風邪をひいていた。2日前から頻尿、排尿痛および排尿困難を認めた。昨晩から悪寒がある。
既往歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長160cm、体重62kg。体温38.9℃。脈拍104/分、整。血圧148/88mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。腹部超音波写真を別に示す。
この患者の治療薬として適切なのはどれか。
- マクロライド系抗菌薬
- ニューキノロン系抗菌薬
- グリコペプチド系抗菌薬
- テトラサイクリン系抗菌薬
- アミノグリコシド系抗菌薬
解説
【テーマ】慢性前立腺炎
【正答】b
超音波写真で大きく腫大した前立腺を認める。超音波だけで確定はできないが、以前から前立腺肥大症があり、これに前立腺炎を併発したと考えるのが自然であるため、慢性前立腺炎と考えられる。
前立腺への移行が良いため前立腺炎に対してはニューキノロン系抗菌薬が第一選択とされている。ただし、JAID/JSC感染症治療ガイドライン 2015によるとペニシリン系やセフェム系も使用しているようなので、今回は選択肢から除外した。
【参考】111H35、103B53
作問者コメント

とある先生が、111H35の現病歴を見て国試に出そうだねと言っていたので。
【作問者をフォロー】trino246(Twitter)
A29 腎 臨床各論
問題
57歳の女性。全身倦怠感、脱力および食欲不振を主訴に来院した。1か月前から全身倦怠感と食欲不振とを自覚するようになった。数日前から脱力も認めるようになり受診した。50歳時に眼や口腔内の乾燥症状を自覚し、自宅近くの診療所でSjögren症候群と診断され治療を受けている。55歳時に腎結石を指摘されている。身長158cm、体重45kg。体温36.1℃。脈拍64/分、整。血圧124/76mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。表在リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。上下肢に徒手筋力テスト4程度の筋力低下を認める。尿所見:pH 7.0、蛋白(―)、糖(―)、潜血(―)。血液所見:赤血球380万、Hb 12.8g/dL、Ht 36%、白血球3,200、血小板16万。血液生化学所見:CK 386U/L(基準30〜140)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、Na 138mEq/L、K 2.3mEq/L、Cl 109mEq/L。CRP 0.2mg/dL。
この患者の血液ガス所見として最も考えられるのはどれか。
pH | PaCO2(Torr) | HCO3-(mEq/L) | |
a | 7.26 | 24 | 16.1 |
b | 7.26 | 40 | 16.1 |
c | 7.4 | 40 | 24.6 |
d | 7.62 | 40 | 28.3 |
e | 7.62 | 54 | 28.3 |
解説
【テーマ】尿細管性アシドーシス〈RTA〉
【正答】a
Sjögren症候群、腎結石、低K血症による脱力、尿pH高値により、遠位(I型)尿細管性アシドーシス〈RTA〉が考えられる。したがって、代謝性アシドーシス(呼吸による代償あり)を示す血液ガス所見を選ぶ。
- 代謝性アシドーシス(呼吸による代償あり)
- 代謝性アシドーシス
- 正常
- 代謝性アルカローシス
- 代謝性アルカローシス(呼吸による代償あり)
【参考】110I71
作問者コメント

酸塩基についての出題です。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
A30 血液 臨床各論
A31 消化管 臨床各論
問題
26歳の男性。胸やけを主訴に来院した。1年前から食後に胸やけが出現し、徐々に増悪して夜間に目覚めるようになったため受診した。2年前に胃炎と診断され、内服治療を行った。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。意識は清明。身長169cm、体重75kg。脈拍63/分、整。血圧128/82mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。血液所見:赤血球 459万、Hb 14.2g/dL、Ht 43%、白血球6,900、血小板29万。血液生化学所見に異常を認めない。上部内視鏡検査にてヒトデ型の粘膜傷害を認める。
生活指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 「甘いものは控えましょう」
- 「就寝前に軽食を食べましょう」
- 「食後には横になって休みましょう」
- 「上半身を少し高くして眠るようにしましょう」
- 「症状が出たら前かがみの姿勢をとってみましょう」
解説
【テーマ】】胃食道逆流症(GERD)
【正答】a,d
食後の胸焼け、ヒトデ型の粘膜傷害からGERDを疑う。胃炎の内服治療はピロリ菌除菌治療と思われる。就寝前の飲食や高脂肪食、甘味は胃酸の分泌を促進するため不適。胃酸の分泌が多い食後に横になると逆流が促進するため不適。GERDは前屈みの姿勢で増悪する。上半身を少し高くして眠る、この姿勢をFowler位と呼び、症状が和らぐため正解となる。
【参考】108D56
作問者コメント

GERDを診断し適切に患者指導できるかを確認する問題。GERDの症状緩和とQOL改善のためには投薬や手術の前に日頃の生活習慣の改善が肝要です。逆流が長期にわたるとBarret食道となり、腺癌の発生母地となります。
ICの概念が普及する前、患者への病状説明をムンテラと呼んだそうですが、生活指導こそ真のmund(口)therapie(治療)なのではないかと思う今日この頃であります。
【作問者をフォロー】夏井(Twitter)
A32 小児科 臨床各論
問題
1歳6ヶ月男児。発達の遅れを主訴に来院した。生後5ヶ月までは神経学的発達に問題なかったが、その後、徐々に発達遅滞がみられた。現在では支えがあっても座ることができず、首を自由に動かすこともできない。また、他人に対してはにかむこともしない。体重および身長は5パーセンタイル以下である。肝脾腫を認め、四肢において深部腱反射が減弱している。来院時の眼底写真を次に示す。
考えられる疾患はどれか。
- Fabry病
- Gaucher病
- Tay-Sachs病
- Niemann-Pick病
- Lesch-Nyhan症候群
解説
【テーマ】Niemann-Pick病
【正答】d
進行性神経学的退行、肝脾腫、網膜のcherry-red spotから、Niemann-Pick病であることがわかる。Niemann-Pick病はライソゾーム病の一つで、sphingomyelinase欠損が原因であり、常染色体劣性遺伝である。
- 初期には、末梢神経障害、被角血管腫、発汗減少を三徴とする。進行すると、腎不全などを起こしうる。cherry-red spotは見られない。
- ライソゾーム病の中で最も頻度の高い疾患である。肝脾腫、汎血球減少、骨粗鬆症などが見られる。cherry-red spotは見られない。
- Tay-Sachs病でも進行性神経学的退行、cherry-red spotが見られるが、肝脾腫は見られない。
- 正しい。
- Lesch-Nyhan症候群は、プリンのサルベージ経路における酵素欠損が原因の疾患である。自傷行動や知的障害、高尿酸血症などが見られる。
【参考】104A45
作問者コメント

先天性代謝疾患であるライソゾーム病に関する出題。過去にはGaucher病に関する出題もあったため、一度目を通しておくべきという意図で出題した。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A33 消化管 臨床各論
問題
55歳の男性。全身倦怠感、体重減少および腹痛を主訴に来院した。過敏性腸症候群の診断で5年前から症状に応じて外来診療を受けている。3か月前から全身倦怠感が続き、この3か月で体重が5kg減少した。先日、便に鮮血が混じっており不安に思い来院した。喫煙歴と飲酒歴とはない。身長155cm、体重49kg。脈拍84/分、整。血圧100/78mmHg。眼瞼結膜は貧血様である。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。便通は週3回で硬便であるが、明らかな血便はなく、ほぼ1日中腹痛がある。血液所見:赤血球274万、Hb 7.6g/dL、Ht 22%、白血球5,400、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 21U/L、ALT 11U/L、LD 179U/L(基準176〜353)、ALP 227U/L(基準115〜359)、γ-GTP 40U/L(基準8〜50)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL。CRP 0.1mg/dL。
この患者が罹患している疾患について正しいものを選べ。
- CTコロノグラフィーでは内視鏡を使用する
- stageⅡであれば5年生存率は90%を超える
- スクリーニング検査として便潜血検査の免疫法が行われている
- 内視鏡検査が可能な場合でもカプセル内視鏡検査が保険適応となる
- APC遺伝子の異常により発生するものに遺伝性非ポリポーシス大腸癌がある
解説
【テーマ】大腸癌
【正答】c
- CTコロノグラフィーは、CTのみで大腸の構造を立体的に見ることが出来る検査である。大腸3D-CTとも呼ばれる。
- stageⅠであれば、5年生存率はほぼ100%である。stageⅡでは、5年生存率は80%を超えるが90%には満たない。
- 正しい。便潜血検査には化学法と免疫法がある。化学法ではヒト以外のヘモグロビンも感知してしまうので、免疫法がスクリーニング検査に使われている。
- 内視鏡検査が不可能な場合のみ、大腸カプセル内視鏡検査が保険適応となる。
- 遺伝性非ポリポーシス大腸癌はミスマッチ修復遺伝子の異常によりおこる。APC遺伝子の異常で起こるのは家族性ポリポーシス大腸癌である。
【参考】101C28、113D28
作問者コメント

大腸癌の大事なところを超・詰め込みました。大腸だけに。
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A34 循環器 臨床各論
問題
78歳の女性。夜間の呼吸困難のため救急車で搬入された。
現病歴:2年前から労作時の息切れを自覚していた。数ヶ月前から下腿の浮腫を認めていた。昨晩、就寝2時間後息苦しくなり、ふとんの上で座ると少し楽になるものの、息苦しさが持続している。
既往歴:56歳から高血圧症で加療中である。
現 症:意識は清明。身長154cm、体重60kg。体温36.6℃。脈拍108/分、整。血圧184/110mmHg。呼吸数24/分。貧血と黄疸とを認めない。頸静脈怒張を認める。心音は奔馬調律。両側下肺野にcoarse cracklesを聴取する。下腿に圧痕性の浮腫を認める。
検査所見:尿所見:比重1.024、蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に異常を認めない。血液所見:赤血球360万、Hb 12.2g/dL、Ht 35%、白血球8,900、血小板19万。血清生化学所見:尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、AST 28U/L、ALT 30U/L、LD 317U/L(基準176~353)、CK 108U/L(基準10~40)、Na 135mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 105mEq/L。胸部エックス線写真を示す。
フロセミドと強心薬、スピロノラクトンにより治療を開始し3週間が経過し、呼吸困難感を含め患者の状態は安定したが、下腿の浮腫が軽快しない。
患者の病態改善のため次に考慮する治療はどれか。
- トルバプタン追加投与
- アスピリン追加投与
- フロセミド増量
- 酸素投与
- 経過観察
解説
【テーマ】うっ血性心不全
【正答】a
臨床像は100D43を確認のこと。うっ血性心不全の診断。
- 正しい。他の利尿薬(フロセミドやスピロノラクトン)を用いても下腿浮腫といった体液貯留がみられ、かつ腎機能も大きく低下はしておらず、またNaも高値でないことから下腿浮腫改善のため用いるのは妥当と考える。
- 特に関係のない選択肢。
- フロセミドを用いても下腿浮腫が改善していないことから正答はaに譲る。
- 呼吸困難感を改善とあることから現在は必要ないと考える。
- 病態改善をしたいため経過観察は選びづらいと思われる。
トルバプタンはバソプレシン受容体拮抗薬であり、ループ利尿薬など他の利尿薬を使用しても利尿効果が不十分な心不全、肝硬変に対して使用され、他の利尿薬と併用する。常染色体優性多発性嚢胞腎に対する適応も認められている。副作用としての高Na血症や腎不全などに注意。
【参考】 100D43
作問者コメント

病棟実習で循環器の病棟で心不全患者に積極的に投与しているのを何度も見たため出題。うっ血性心不全や肝硬変では体液貯留傾向にも関わらず、バソプレシンの分泌が増えて水利尿不全状態になっていることが多いため、それに対する改善が期待できる薬剤とのこと。確認しておいてもいい薬剤だと思います。
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A35 神経 臨床各論
問題
75歳の女性。物忘れを主訴に夫に連れられて来院した。2年前から物忘れが目立つようになり、何度も同じことを尋ねるようになった。買い物で同じ物を買ってくることがあり、そのことを指摘しても適当にはぐらかすようになった。また料理も簡単なものしか作らなくなり、心配した夫に連れられて受診した。大学卒業後、市役所に勤務し、60歳で定年退職した。その後、地域の婦人会活動を活発に行っていたが、最近は外出することがほとんどない。既往歴に特記すべきことはない。診察時、疎通性は比較的良好であるが、時間と場所の見当識障害がみられる。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは11点(30点満点)である。その他の神経学的所見に異常を認めない。血液生化学所見に異常を認めない。頭部MRIで両側海馬の萎縮を認める。
この疾患について誤っているのはどれか。
- 女性に多い。
- 側頭葉、頭頂葉、海馬の萎縮が見られる。
- 病理学的にアミロイドβの沈着がみられる。
- 記銘力障害のうち遠隔記憶は保たれやすい。
- ドパミントランスポーターSPECTにて取り込み低下を認める。
解説
【テーマ】Alzheimer型認知症
【正答】e
a~dは全て正しい。遠隔記憶とは数ヶ月から何十年にもわたる記憶である。自分の家の住所や卒業した学校などの記憶がこれに当てはまる。
ドパミントランスポーターSPECT(DATスキャン®)にてAlzheimer型認知症は取り込み低下は見られない。取り込み低下があるのはパーキンソン病や多系統萎縮症などである
【参考】111A45、110D41
作問者コメント

何の疾患で取り込み低下があって何の疾患でないのかについてもチェックしておくといいでしょう。
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A36 内分泌代謝 臨床各論
問題
35歳女性。頭痛と嘔吐を主訴に母親に連れられて来院された。長期間の精神疾患の既往があり、特異な食生活を送っているという。体温36.7℃。脈拍70/分、整。血圧121/83mmHg。呼吸数15/分。皮膚は乾燥している。肝脾腫を認め、眼底検査にて乳頭浮腫を認める。頭部CT検査で異常を認めない。
考えられる疾患はどれか。
- 膠芽腫
- 鉄欠乏性貧血
- ビタミンA過剰症
- ビタミンE過剰症
- 進行性多巣性白質脳症
解説
【テーマ】 ビタミンA過剰症
【正答】c
ビタミンA過剰症においては、急性症状として悪心嘔吐、めまい、視力障害などが見られ、慢性症状としては脱毛症、皮膚の乾燥、肝障害、関節痛などが見られ、重要なものとして特発性頭蓋内圧亢進症がある。これにより、乳頭浮腫が見られる。
したがって、器質的な異常は関与しないため、頭部CT検査では異常は見られない。
- 頭部造影CTにてring enhancementが見られるが、本症例においては頭部CT検査にて異常がみとめられない。
- ベジタリアンでは鉄分の摂取が不足するため鉄欠乏性貧血を呈することがある。また、症状として異食症が見られる。
- 正しい。
- ビタミンE過剰症は小児において、腸炎のリスクとなりうる。また、多量に摂取するとビタミンKの代謝に影響を与え、ワーファリンの抗凝固作用が増強される。
- 中枢神経の脱髄疾患で、JCウイルスの再活性化によって発症する。急速に進行し、時には致死的で、視力障害が最もよく見られる。頭頂葉および後頭葉にて脱髄を示す所見が見られる。
【参考】102I28
作問者コメント

ビタミン代謝に関する出題は主に欠乏症に関するものが多い。しかし、過去には過剰症をきたすビタミンについての知識問題も出題されているため出題した。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A37 神経 臨床各論
問題
27歳男性。発熱と激しい頭痛を主訴に救急車で搬送された。
現病歴:昨日より発熱と体のだるさを訴え、頭痛も遅れて感じ始めた。次第に体温は上昇しそれにあわせて頭痛もひどくなり、仕事を休み本日救急車を要請した。
身体所見:JCSⅠ-3、GCS13(E3V4M6)、体温39.7℃、脈拍140/分、整。血圧114/67mmHg。呼吸数25/分。脳神経検査項目に異常を認めない。項部硬直陽性、Kernig徴候陽性。四肢の運動と感覚に異常を認めない。
血液所見:赤血球439万、Hb 15.0g/dl、Ht 40%、白血球13,900(桿状核好中球17%、分葉核好中球63%、単球3%、リンパ球17%)、血小板16万。CRP 29mg/dL。頭部単純CTで異常を認めなかったので腰椎穿刺を行った。脳脊髄液所見:初圧270mmH2O(基準70~170)、外観は黄白色、混濁、細胞数5,000/mm3(基準0~2)(多形核球100%)、蛋白230mg/dL(基準15~45)、糖10mg/dL(基準50~75)。脳脊髄液のGram染色でGram陽性双球菌が見られた。
治療薬を2種類使う方針となった。適切な組み合わせはどれか。
- アムホテシリンB、ステロイド
- メロペネム、アムホテシリンB
- フルコナゾール、ステロイド
- アンピシリン、ステロイド
- メロペネム、ステロイド
解説
【テーマ】髄膜炎のエンピリックセラピー
【正答】e
16歳~49歳の細菌性髄膜炎患者には、カルバペネムと場合によってはバンコマイシンを追加します。そしてステロイドを用います。ステロイドには過度な炎症による神経へのダメージを避ける働きがあります。
この問題では原因菌を肺炎球菌と想定しています。
血液培養によって肺炎球菌と同定された場合、第三セフェム系(セフトリアキソンなど)とバンコマイシンを用います。(このエンピリックセラピーからの菌特定後のスペクトラムを狭い抗菌薬に変更を行うことをde escalationと呼びます)
【参考】108I78
作問者コメント

僕はもう髄膜炎の問題を新生児、小児ばっか解いていて、一番ポピュラーなはずの15歳~49歳の細菌性髄膜炎のエンピリックセラピー忘れちゃっていて・・・この前間違えそうになりました。ということで出題しました。
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A38 皮膚科 臨床各論
問題
22歳の女性。腋窩の発汗を主訴に来院した。2年前から両側の腋窩に大量の汗をかくようになり、同時に手掌にも発汗がみられるようになった。腋窩でで塩化アルミニウム液を外用すると軽度の効果があった。母親にも同様の症状があるという。血液所見:赤血球421万、Hb 12.6 g/dL、Ht 38%、白血球6,400、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白6.4 g/dL、アルブミン4.0 g/dL、AST 12 U/L、ALT 17 U/L、クレアチニン0.4 mg/dL、血糖103mg/dL、HbA1c 5.2%(基準4.6~6.2)、総コレステロール168 mg/dL、トリグリセリド88 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 104 mEq/L、TSH 0.6 µU/mL未満(基準0.2~4.0)、FT4 1.3 ng/dL(基準0.8~2.2)。CRP 0.3 mg/dL未満、抗核抗体8倍(基準20以下)。
治療法として最も適切なのはどれか。
- 切除縫縮
- 抗真菌薬外用
- 抗甲状腺薬内服
- 副腎皮質ステロイド内服
- A型ボツリヌス菌毒素製剤の局注
解説
【テーマ】原発性腋窩多汗症
【正答】e
原発性腋窩多汗症の診断である。多汗症は、体温調節の役割を担うエクリン汗腺の機能亢進により、全身性あるいは局所性に必要量以上の発汗を生じる疾患である。腋窩多汗症の診断基準は、原因不明の過剰な局所性発汗が6ヵ月以上持続していることに加え、次の6項目中2項目以上を満たすことである。1)両側性かつ左右対称性に多汗がみられる、2)多汗によって日常生活に支障が生じている、3)週1回以上の頻度で多汗エピソードがみられる、4)25歳未満で発症した、5)家族歴がある、6)睡眠時は局所性の発汗がみられない。本症例では,2年以上続き、両側性に発汗がみられ、22歳であり、家族歴があることから診断基準を満たす。
治療は、塩化アルミニウムの外用が第一選択の治療とされている。作用機序としては、塩化アルミニウムが角層内の汗管と結合し、発汗の出口をふさぐという器質的な機序が考えられる。この効果が不十分な場合や、副作用により外用療法の継続が困難な場合の第二選択としてA型ボツリヌス菌毒素製剤が用いられる。
A型ボツリヌス菌毒素製剤は、コリン作動性神経からのアセチルコリン放出を抑制する作用がある。2012年11月に重度の原発性腋窩多汗症に対して保険適応となり、ガイドラインでは推奨度Bとされている。
【参考】110E15、105A41、104G21
原発性局所多汗症診療ガイドライン策定委員会. 日皮会誌. 2015; 125: 1379-1400
Hornberger J, et al. J Am Acad Dermatol. 2004; 51: 274-286
作問者コメント

皮膚附属器に関する応用問題である。アポクリン汗腺は腋窩や外陰部に多く存在し、断頭分泌により発汗する。アドレナリン作動性である。乳房外Paget病の発生母地となる(105A41のe)。一方,エクリン汗腺はほぼ全身の皮膚に分布し、特に掌蹠や腋窩に多く存在し、アセチルコリン作動性である。多汗症のことを知らずとも、本症例では掌蹠や腋窩で発汗が亢進していることからエクリン汗腺からの発汗ということを予想し、エクリン汗腺はアセチルコリン作動性なのでボツリヌス毒素が有効であると判断できれば正解に至る。これを機に、皮膚科の組織学を復習しておこう。予想正答率40%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
A39 循環器 臨床各論
問題
36歳の男性。息切れを主訴に来院した。半年前から労作時の息切れを自覚していたが、最近次第に増悪し下腿に圧痕を残す浮腫が出現してきたため受診した。父が49歳時に突然死したという。意識は清明。身長178cm、体重67kg。脈拍88/分、整。血圧122/74mmHg。胸部の聴診でⅢ音を聴取し、心尖部に汎〈全〉収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。心電図は洞調律で、左側前胸部誘導でR波の高電位を認める。心臓超音波検査の所見を以下に示す。冠動脈造影では有意な狭窄を認めず、心筋生検所見では間質の線維化を認めるも、特異的所見はなかった。
この患者に対する治療として適切でないのはどれか。
- 心臓移植
- カプトプリル
- ジルチアゼム
- カルベジロール
- スピロノラクトン
解説
【テーマ】拡張型心筋症〈DCM〉
【正答】c
- まずは薬物療法を試みるが、十分な薬物療法をしても心不全コントロールが得られない場合、心臓再同期療法、左室補助装置、心臓移植(適応は65歳未満)などを検討する。わが国の心臓移植適応の過半数は拡張型心筋症が占める。
- ACE阻害薬であり、内分泌代謝・原発性アルドステロン症の「カプトプリル負荷試験」で有名だが、これやARBなどRAS阻害薬は心筋リモデリングを抑制する作用がある。
- Ca拮抗薬であり、心房細動合併時には心拍数調節に有効だが、拡張型心筋症においては左室機能をさらに低下させる可能性もあり有用性は特に示されていない。
- β遮断薬であり、bと同じく心筋リモデリング抑制作用がある。
- 抗アルドステロン薬であり、下腿浮腫などの心不全症状が出現しているため、利尿作用を期待して用いることができる。
【参考】110I50、107F21、106D59、105I74、98D22
作問者コメント

心不全症状を伴った拡張型心筋症〈DCM〉の治療について確認する問題である。心筋疾患では近年、肥大型心筋症や急性心筋炎の出題はあるも、111回以降は拡張型心筋症自体について問う出題がないため、症候、検査所見、治療法などのポイントを中心に確認して備えたい。今回は選択肢の治療薬一般名がやや過剰対策な気もするが、まずは各治療薬の使用目的を確認してほしい。またb,d,eについては左室収縮機能が低下した慢性心不全において生命予後改善効果が証明されている。
【作問者をフォロー】雪(Twitter)
A40 皮膚科 臨床各論
問題
86歳の男性。末期癌による終末期ケアのため緩和病棟に入院している。1ヵ月前から大腿、陰部および手に激しい瘙痒感を伴う皮疹が出現しており、最近は痒みのため夜も眠れないという。病変部は角化傾向を示している。同部位から鱗屑を採取し、苛性カリ〈KOH〉直接鏡検法で観察した。診断後ただちに個室管理とし、寝具や衣類の煮沸消毒、同室者・職員への予防的治療が行われた。
次に示す標本(①~⑤)のうち、この患者のものと考えられるのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説
【テーマ】ノルウェー疥癬
【解答】e
通常型の疥癬とは異なり、 免疫力の低下した患者に多くみられる。 角化傾向を示し、 掻痒感が非常に強く、 菌量も多い。 個室管理、 衣類の消毒を行う。 肌に直接触れるものを共用しないことはもちろん、治療の際には予防着や手袋を着用することが大切。治療薬はクロタミトン、 イベルメクチン、 硫黄含有外用。
- ①カンジダ
- ②白癬菌
- ③毛包虫
- ④黒色真菌
- ⑤ヒゼンダニ
【参考】112A38、 111E47、 105D33
作問者コメント

国家試験では通常型の疥癬は問われていますがノルウェー疥癬はまだ問われていません。従って、次回以降に問われるにしても本問のように解答には困らないような問いになるかと思います。
【作問者をフォロー】みっきそ(Twitter)
A41 呼吸器 臨床各論
問題
41歳の男性。持続する咳嗽、膿性痰を主訴に来院した。喫煙歴はない。近医で気管支喘息と診断され吸入ステロイド薬を処方されたが症状が改善しないため紹介受診となった。身長170cm、体重67kg。胸部聴診で背下部にcoarse cracklesを聴取する。赤沈25mm/1時間。血液所見:白血球 9,000(好酸球 0%)。CRP 2.4mg/dl。動脈血ガス分析(room air):pH 7.42、PaO2 72.3Torr、PaCO2 40.0Torr。胸部CT画像以下に示す。
診断に最も有用なのはどれか。
- 抗酸菌培養
- 副鼻腔CT撮影
- 呼気一酸化窒素濃度測定
- 抗トリコスポロン抗体測定
- アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉測定
解説
【テーマ】DPB(びまん性汎細気管支炎)
【正答】b
慢性咳嗽、膿性喀痰、小葉中心性のびまん性粒状影、気管支拡張というCT所見からDPB(びまん性汎細気管支炎)の疑い。
DPBであれば慢性副鼻腔炎も合併しているはずであり副鼻腔CT撮影したい。あわせてHLA−B54の保有が発症に関与すること、治療はマクロライド系抗菌薬の少量持続投与であることも覚えておいてほしい。
作問者コメント

問題としては平易であるので落としてはならない問題ということを意識し、そしてその通りに正解できているかを確認してほしい。
しかしながら、合格する学生でも正答率95%を超える問題を落とすことは珍しくない。1ブロックに1個か2個そういうものがあったとしても、心の切り替えをしよう。
【作問者をフォロー】医学エンタメくん(Twitter)
A42 肝胆膵 臨床各論
問題
救急外来に日本語の話せない53歳の外国人女性が来院した。対応した初期臨床研修医が診察と検査を行い記載した診療録の一部を示す。
Presenting complaint: Right upper quadrant abdominal pain of moderate intensity.
History of presenting complaint:Sudden onset of pain at the right upper abdomen 1 day ago.
Associated with nausea, chills and dark urine.Examination: Temperature 38.6℃. Right upper quadrant and epigastric tenderness. No palpable masses and no rebound tenderness.
Investigation: White blood cell count: 11,400/μL, CRP: 14.2 mg/dL. AST 114 U/L, ALT 57 U/L, ALP 570 U/L, total bilirubin 4.2 mg/dL. CT: Stones in gallbladder and lower common bile duct. Dilatation of intrahepatic bile ducts and common bile duct.
治療として最も適切なのはどれか。
- RFA(radiofrequency ablation)
- EMR(endoscopic mucosal resection)
- ENBD(endoscopic nasobiliary drainage)
- ESD(endoscopic submucosal dissection)
- PEIT(percutaneous ethanol injection therapy)
解説
【テーマ】 総胆管結石症(Choledocholithiasis)
【正答】c
簡単な和訳を載せておく。
主訴:中程度の強度の右上腹部痛。
現病歴:1日前から突然右上腹部が痛みだした。痛みには、吐き気、悪寒、褐色尿を伴う。体温38.6℃。右上~上腹部に圧痛あり。触知可能な腫瘤や反跳痛はない。
検査:白血球数 11,400/μL、CRP 14.2mg/dL。 AST 114U/L、ALT 57U/L、ALP 570U/L、総ビリルビン 4.2mg/dL。CTで胆嚢および下部総胆管に結石あり。肝内胆管および総胆管の拡張を認める。
ALP、直接ビリルビン、AST ・ ALTの上昇、またCT所見から、総胆管結石の診断は容易であろう。
肝内胆管および総胆管の拡張を認めることより、まずはcにより胆汁を排出させる。a,eは主に肝臓癌、b,dは消化管の癌で用いられる治療法である。
- RFA(ラジオ波凝固療法)
- EMR(内視鏡的粘膜切除術)
- ENBD(内視鏡的経鼻胆管ドレナージ)
- ESD(内視鏡的粘膜下層切除術)
- PEIT(経皮的エタノール注入療法)
【参考】112B32
作問者コメント

最近の医師国家試験では英語の問題の出題があり、USMLEを意識させられる。英語の問題は単語が分かればそれほど難しくないことが多いが、逆に言うと単語が分からなければ詰みである。113B34の「peritoneal irritation」は腹膜刺激徴候だが、これが分からなかったばっかりに正答に至らなかった受験生が多い。
英語がどうしてもニガテであれば、諦めるというのも戦略であるかもしれない(少なくとも今現在の医師国家試験においては)。
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
A43 腎 臨床各論
問題
56歳女性。右手指のしびれを主訴に来院。慢性糸球体腎炎のため12年前から週3回の血液透析を受けている。長年にわたり、食塩、カリウム、リンの摂取の少ない食生活を送るように気を付けている。高血圧に対してカルシウム拮抗薬を、カルシウムとリン代謝異常に対して活性型ビタミンD₃、水酸化アルミニウムゲルおよび炭酸カルシウムを投与されている。家族4人で暮らしており、主婦としての日常の家事に従事している。1年前より左手指のしびれが始まり、次第に増強してきていた。左手の手掌で第1~3指と第4指橈側半分とに境界鮮明な感覚障害を認める。左母子球筋の萎縮を認めるが、前腕筋群、小指球筋、骨間筋の萎縮は認めない。
この患者の神経障害として最も考えられる原因はどれか。
- 梅毒
- 周期性四肢麻痺
- アミロイドーシス
- Guillain-Barré症候群
- 亜急性脊髄連合変性症
解説
【テーマ】透析アミロイド―シス
【正答】c
透析アミロイドーシスに関する出題。長期透析の合併症として透析アミロイドーシスが挙げられる。β₂-ミクログロブリンなどのアミロイド物質が骨へと沈着することにより、骨破壊、嚢胞形成などがみられる。また、アミロイドの沈着により手根管症候群をきたすこともある。これにより母子球筋の萎縮や第1~3指と第4指橈側半分とに境界鮮明な感覚障害などの所見がみられる。
【参考】87C11、99E44
作問者コメント

長期透析の合併症について近年あまり問われていないため、一度目を通しておくという意味で出題した。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A44 感染症 臨床各論
問題
24歳男性。3日前からの発熱と咳とを主訴に来院した。咳は乾性で頑固である。同様の症状を訴えている会社の同僚がいる。体温38.7℃。呼吸数20/分。脈拍96/分、整。呼吸音に異常を認めない。白血球6,800(桿状核好中球9%、分葉核好中球55%、好酸球2%、単球6%、リンパ球28%)。CRP 7.8mg/dl。胸部X線写真で右下肺野にスリガラス陰影を認める。誘発喀痰検査で起炎菌の同定はできなかった。
治療薬として適切なのはどれか。
- セフェム系抗菌薬
- ペニシリン系抗菌薬
- カルバペネム系抗菌薬
- ニューキノロン系抗菌薬
- アミノグリコシド系抗菌薬
解説
【テーマ】市中肺炎
【正答】d
頑固な乾性咳嗽があり、白血球数は基準値内、若年者、集団流行がみられ、胸部X線でスリガラス陰影を認めることから非定型肺炎の中でもマイコプラズマ肺炎の可能性が高いと考えられます。
非定型肺炎には、マクロライド系が第一選択薬であり、テトラサイクリン系、ニューキノロン系、ケトライド系も有効です。
- 肺炎球菌、連鎖球菌などは感受性が高い。緑膿菌などグラム陰性桿菌は第3世代セフェム系が有効である。
- 肺炎球菌、連鎖球菌などは感受性が高い。
- 緑膿菌などグラム陰性桿菌に有効である。
- マイコプラズマもカバーする。妊婦、小児には禁忌。
- 緑膿菌などグラム陰性桿菌に対しβ-ラクタム系と併用して用いられる。
作問者コメント

ニューーーーーーーーキノロンはQT延長に注意。
【作問者をフォロー】こくろー先生(Twitter)、YouTuberこくろーの医師国家試験1日1題生活
A45 産婦人科
問題
30歳の女性。不妊を主訴に来院。過多月経のために貧血(Hb9.0g/dl)を指摘されたことがある。不妊の原因検索のために行った骨盤部MRI T2強調矢状断を別に示す。
治療方針として誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 鉄剤処方
- 偽閉経療法
- 子宮全摘術
- 筋腫核出術
- 子宮動脈塞栓療法
解説
【テーマ】子宮筋腫
【正答】c,e
問題文にあることは全て子宮筋腫で説明がつく。画像は子宮筋腫である(画像元は108A13)今回の患者は子宮筋腫が原因で流産したと考えられる。
貧血があるので鉄剤を服用し貧血を改善させ、偽閉経療法は一時的に卵巣からのエストロゲン分泌を減少させ閉経状態にすることによりエストロゲン依存性に発育する子宮筋腫を縮小させる。また、可能な限り筋腫核出する。
不妊を主訴に来院しているということは挙児希望があると読み替え、子宮全摘は行わない。
子宮動脈塞栓療法(UAE)は子宮筋腫の栄養血管を遮断し、筋腫核を壊死させ縮小を図る。今後妊娠の希望がある場合は行わない(上記方法で行うため妊娠に対する影響がまだはっきりしていないため現在は挙児希望のない場合にのみ適応とされる)。
作問者コメント

子宮筋腫、子宮線筋症、子宮内膜増殖症と3大こんがらがる婦人科画像の問題を整理し直してほしいと思いました。お手持ちのテキストで違いを確認してみてください。
【作問者をフォロー】みっきそ(Twitter)
編集者コメント

子宮筋腫、子宮線筋症、子宮内膜増殖症は全てエストロゲン依存性なので治療法が同じです。
A46 耳鼻咽喉科 臨床各論
問題
41歳女性。右耳の閉塞感とともに起こる回転性めまいを繰り返している。最近は右耳の閉塞感が治らなくなってきたために受診した。グリセロール試験において右聴力改善を認め、カロリックテストで右耳の温度反応低下(CP)を認めた。
本疾患について誤っているのはどれか。
- 治療薬としてイソソルビドが使われる。
- 本疾患が原因では意識消失は起こらない。
- 難聴は高音域中心に生じるのが典型的である。
- めまいの急性期には病側に向かう眼振を認める。
- 側頭骨の病理所見において内リンパ水腫を認める。
解説
【テーマ】メニエール病
【正答】c
- 治療薬としては利尿薬であるイソソルビドがよく用いられます。
- 第Ⅷ脳神経以外の症状はありません。
- 難聴は低音域中心の感音難聴から始まりますが、徐々に段階的に進行するケースもあります。
- 急性期には病側に向かう眼振(刺激性眼振)を認め、徐々に健側に向かう眼振(麻痺性眼振)に変化していきます。
- 側頭骨の病理所見として内リンパ水腫を認めますが、その成因は明らかになっていません。
【参考】100G75、107H14
出題の意図

メニエール病は難聴を伴うめまい発作を繰り返す疾患です。メニエール病は検査も多く、病態や検査結果についての理解は非常に重要です。本問を機に理解が深まることを期待しています。
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A47 神経 臨床各論
問題
35歳男性。片麻痺と視力障害を主訴に来院。患者は数年前にHIV感染と診断されていたが、抗レトロウイルス薬の服用を十分に行っていなかった。1か月前より徐々に右半身に力が入らなくなり、同居している母親からは、同時期から今までやらなかったような行動や言動がみられるようになってきたと言われている。身長168cm、体重60kg。体温36.5℃。脈拍60回/分。呼吸数12回/分。心音、呼吸音異常なし。眼底に特記すべき異常なし。上肢および下肢で筋力の低下を認める。脳MRIにて皮質下および脳室周囲の脱髄性変化を認める。腫瘍性病変は認めない。CD4陽性細胞数:30/mm³。
本患者における疾患の確定診断のために必要な検査として最も考えられるのはどれか。
- 脳血流シンチグラフィ
- 脳脊髄液PCR
- 筋生検
- 血液培養
- 尿培養
解説
【テーマ】進行性多巣性白質脳症(PML)
【正答】b
PMLはJCウイルスの再活性化による脱髄疾患である。PMLは0.1人/10万人と非常に稀な疾患であるが、AIDS患者ではPMLの発症率が2〜4%であると報告されている。症状としては、精神症状、視力障害、片麻痺、運動失調など脱髄が起こる場所によってさまざまであるが、視力障害は最も頻度が高い。脳MRIにて白質の脱髄性変化(白質の高信号域)が認められ、腫瘍性変化や浮腫上変化などは認めない。致死的な疾患であり、有効な治療法はない。AIDSによるものであれば抗レトロウイルス治療を行うが、予後は悪い。確定診断としては、脳脊髄液をPCR反応させJCウイルスの存在を確認する、もしくは直接脳を生検する方法などがある。
作問者コメント

PMLは平成30年度ガイドラインに新たに追加された疾患である。110A22にて選択肢でもPMLの原因であるJCウイルスが登場しており、出題される可能性はゼロではないであろう。HIV患者など易感染性の状態で脱髄性疾患と来たらPMLを考えたい。画像が著作権の都合で掲載できなかったため、ぜひ調べておいていただきたい。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A48 整形 臨床各論
問題
24歳の女性。左膝の腫脹と疼痛を主訴に来院した。昨日バレーボールの試合中、アタックの着地時にバランスを崩して左膝をひねり受傷した。痛みのため競技を続けることができなかった。膝蓋跳動テスト陽性。関節穿刺を行ったところ、血性の関節液が50mL穿刺された。Lachman test陽性。前方引き出しテスト陽性。
診断に有用なのはどれか。
- MRI
- 関節液培養
- 血液生化学検査
- 関節液顕微鏡検査
- 骨シンチグラフィ
解説
【テーマ】前十字靭帯損傷
【正答】a
左膝前十字靭帯損傷の診断。
【参考】110A5、109E29、105D59
作問者コメント

正解に至るのは容易である。参考に挙げた3問を確認しておこう。予想正答率100%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
A49 泌尿器科 臨床各論
問題
34歳の男性。陰茎の疼痛と排膿とを主訴に来院した。6ヶ月前から陰茎亀頭部が腫れていたが、痛みがないため放置してい。3週間前から陰茎先端部に疼痛と硬結とを自覚、3日前からは発赤を伴うようになっている。今朝、下着に膿が付着し悪臭と疼痛も伴うようになったため受診した。喫煙は25本/日を14年間。飲酒は機会飲酒。真性包茎であり、包皮の発赤および排膿を認める。包茎に対して背面切開術を行った。性感染症の既往が複数回ある。尿所見:蛋白1+、糖(-)、潜血2+、沈渣に赤血球5~10/1視野、白血球50~100/1視野、桿菌2+。血液所見に異常を認めない。CRP 6.0mg/dL。包皮を翻転した写真を示す。(111D29の画像参照)
この疾患で正しいのはどれか。2つ選べ。
- SCCが上昇する。
- 外科的療法の適応がある。
- 後腹膜リンパ節転移が多い。
- 近年患者数が急増している。
- 無症候期は感染力が非常に強い。
解説
【テーマ】陰茎癌
【正答】a,b
各自、普段使っているテキストで確認してもらいたい。aとbは陰茎癌に関しての選択肢、cは陰嚢腫瘍、dとeは梅毒である。陰茎癌の転移先は血行動態から鼠径リンパ節に多い。
それぞれその疾患の押さえておいてほしいポイントを選択肢にしてある。誤診しなければ正答を選べたであろうか。診断が正しくて誤答してしまった場合はきちんと記憶し直そう。
【参考】111D29
作問者コメント

臨床文は111D29とほぼ同じです…。出題当時は梅毒と誤診している受験生が5割を越えていた様子でした。
【作問者をフォロー】みっきそ(Twitter)
A50 産婦人科 臨床各論
問題
57歳の女性。3回経妊3回経産婦。52歳で閉経。尿失禁を主訴に来院した。2年前から咳嗽時に下着が濡れることに気付いていた。半年前から笑ったり重い荷物を持ち上げたりするときにも漏れるようになったため受診した。頻尿、排尿痛および尿意切迫感を認めない。少量用尿とりパッドを1日1枚交換している。
この患者の診断のために次に行うものとして誤っているのはどれか。
- 尿検査
- 排尿の記録
- パッドテスト
- ウロダイナミクス
- チェーン膀胱尿道造影
解説
【テーマ】腹圧性尿失禁
【正答】e
「咳をした時・笑った時・荷物を持ち上げた時の尿漏れ」というエピソードから、腹圧性尿失禁が考えやすい。
- 血尿や炎症の有無などをチェックし、他の疾患を除外する。
- どういう時に尿漏れがおこるかを患者自身に記録してもらう。
- 尿取りパッドをしてさまざまな運動をしてもらう。
- 尿流動態検査(ウロダイナミクス)は、膀胱・尿道内圧、尿流測定、残尿量の測定などをまとめた総合的な検査。
- チェーン膀胱尿道造影は、手術(尿道スリング手術)の方法を決める際に行うため、まず行う検査ではない。後部膀胱尿道角の開大や、鎖の抜け具合を確認する。
【参考】108D46
作問者コメント

症例から尿失禁パターンを推測するタイプの問題はよくあるので、その一歩先を問いました。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
A51 呼吸器 臨床各論
問題
31歳男性。1時間前から急激な呼吸困難と喘鳴が出現し、会話や歩行も困難となったため救急搬送された。1年前に気管支喘息と診断され、ステロイド吸入薬および長時間作用型β2刺激薬を処方されているが、その後も喘息発作で2回入院している。また、1年前に鼻茸の手術の既往がある。昨日転倒して打撲した部位に疼痛が残るため、1時間半前から湿布薬を使用している。アレルギーとして、イチゴ、トマトがある。SpO2 85%(マスク3L/分 酸素投与下)。動脈血ガス分析ではpH7.25、PaO2 51Torr、PaCO2 Torr。
対応として適切なのはどれか。
- メチルプレドニゾロンの静脈内投与を行う。
- 重炭酸ナトリウムを静脈内投与する。
- アドレナリン1mgを静脈内投与する。
- 湿布薬成分での抗原抗体反応を行う。
- 酸素投与量を増やす。
解説
【テーマ】アスピリン喘息
【正答】e
気管支喘息重積発作である。ただし、①成人発症、②入院を要するほどの発作を繰り返している、③鼻茸の手術歴、④イチゴ・トマトのアレルギー歴、⑤湿布薬使用直後からの発作、というアスピリン喘息を疑う因子が多数あり、この時点で同疾患を前提とした対応が必要となる。
- ×メチルプレドニゾロン等のコハク酸ステロイドはアスピリン喘息を増悪してしまうため、原則禁忌である。第1選択はプレドニゾロンの経口投与、第2選択はリン酸エステル型ステロイドの点滴である。
- ×本患者の動脈血ガス分析結果は呼吸性アシドーシスであり、代謝性アシドーシスで使用されることのある重炭酸ナトリウム投与は呼吸抑制をきたしかねないためむしろ投与すべきではない。
- ×アスピリン喘息は重症例が多く、特にNSAIDs曝露後は激烈な発作を引き起こすため、アドレナリンが第1選択となることが多い。ただし、これはアナフィラキシーショックでも間違いが多いが、アドレナリンは1mg静脈内投与ではなく、0.3mg皮下注で用いる(筋注としている論文もある)。
- ×アスピリン喘息では、抗原抗体反応などのアレルギー反応は否定されている。したがって、通常のアレルギー検査(IgE抗体、皮膚テストなど)では診断できない。
- ○本患者はPaCO2が高値であるが、呼吸不全状態にあり、CO2ナルコーシスを恐れて酸素増量を躊躇するようなことがあってはならない。酸素増量を制限するのはPaO2が正常~高酸素血症状態の時だけである。
作問者コメント

実臨床においても気管支喘息と診断された患者におけるアスピリン喘息は5~10%存在するがしばしば見逃されている。
【作問者をフォロー】EARL先生(Twitter)
A52 感染症 臨床各論
問題
66歳男性。2ヶ月前から体重が減少傾向であることを自覚していた。14日前に発熱があり、翌日に近医Aを受診し、気管支炎の疑いでセフトリアキソン点滴を3日間連続で受けたが改善せず、10日前に近医Bを受診し、レボフロキサシンを7日分処方されても症状は変わらなかった。本日呼吸困難症状を自覚し、近医Cを受診したところSpO2 87%(room air)であったため紹介となった。20年前にA型肝炎、4ヶ月前に帯状疱疹の既往がある。体温38.3℃。脈拍117/分、整。血圧108/79mmHg。呼吸数22回/分。GCS15(E4V5M6)であった。胸部聴診上呼吸音は清明であった。入院当日の採血では、β-Dグルカン272.3pg/mLと高値を認めた。胸部単純X線写真、胸部CT画像を示す。
考えられるのはどれか。2つ選べ。
- KL-6は正常値をとる。
- ステロイドが有効である。
- 空気感染のリスクがある。
- 喀痰の墨汁染色で診断できる。
- カルバペネム系抗菌薬が有効である。
解説
【テーマ】ニューモシスチス肺炎
【正答】b,c
胸部画像所見はびまん性のすりガラス陰影を有し、間質性肺疾患の所見である。そして、セフトリアキソン、レボフロキサシンが無効かつβ-Dグルカンが高値であることから真菌感染症の存在を強く疑うが、カンジダが肺炎をきたすことはまずなく、アスペルギルス症かニューモシスチス肺炎が鑑別に挙がる(本患者の臨床経過や画像的に合致しやすいのはニューモシスチス肺炎)。既往歴では20年前のA型肝炎とごく最近の帯状疱疹があるが、これらの共通点はAIDS指標疾患である。よって総合的にまず本患者で疑わなければならないのはニューモシスチス肺炎、ならびにその背景にあるHIV感染によるAIDS発症である。年齢は66歳と高齢ではあるが、HIV新規感染者のうち約1割は60歳以上が占めていて決して少ないわけではなく、高齢というだけで除外はできない。
- ×ニューモシスチス肺炎ではKL-6は上昇しやすい。β-DグルカンとKL-6の両方が高値の場合はニューモシスチス肺炎を強く疑う。
- ○PaO270mmHg未満のニューモシスチス肺炎ではステロイド投与が有用であるとされている。
- ○ニューモシスチス肺炎の原因微生物であるPneumocystis jiroveciiは空気感染を引き起こす。このため、健常者では問題にはなりにくいが、免疫不全患者や抗癌剤で治療中の患者との同室入院は避けなければならない。
- ×墨汁染色で同定するのはクリプトコックスはβ-Dグルカンは原則として陽性とはならない(ただし実臨床では真菌血症に至り、極めて菌量が多い重症例においては陽性となることがある)。Pneumocystis jiroveciiの同定で用いられる染色法はグロコット染色である(実臨床では喀痰PCR検査が行われる)。
- ×市中発症の感染症においてセフトリアキソン、レボフロキサシンも無効でカルバペネム系抗菌薬が有効となるケースは極めて稀である。加えて、細菌感染症で本患者のようなびまん性の胸部陰影を呈することはARDSぐらいしかなく、臨床経過とはあいにくい。β-Dグルカンが高値であることもふまえるとカルバペネム系が有効となるとは考えにくい。
作問者コメント

入院初日での対応を想定した問題であるため、判明している検査結果も少なく、診断は困難であるが、推測した上で重大な疾患を見逃さないよう追加検査を行わなればならない。
【作問者をフォロー】EARL先生(Twitter)
A53 循環器 臨床各論
問題
30歳女性。右下腿の激痛を主訴に救急受診。右下腿の冷感、感覚低下、麻痺が認められ、急性動脈閉塞が疑われ、緊急で血管造影検査が行われた。その結果、前脛骨動脈に造影効果が認められなかった。したがって急性前脛骨動脈閉塞と診断、可逆性虚血と判断し、外科的に閉塞の解除を行った。術後患者が回復した後に問診を行ったところ、2週間前から37℃~38℃発熱が続いていたが、市販の解熱薬を服用し様子を見ており、この2週間で体重が3kg減少していたとの病歴を聴取した。身長157cm、体重45kg。体温37.8℃。呼吸数15回/分。心尖部にて低調な拡張早期過剰心音および拡張期ランブルを聴取。左側臥位にすることで心雑音は増強する。心電図上特記すべき異常は認められない。
考えられる基礎疾患はどれか。
- 肥大型心筋症
- 拡張型心筋症
- 心臓平滑筋腫
- WPW症候群
- 心臓粘液腫
解説
【テーマ】心臓粘液腫
【正答】e
心臓粘液腫では腫瘍の断片が血流に乗り、急性動脈塞栓症を起こすことがあり、場合によっては死に至る。腫瘍からIL-6が分泌されるため、全身性の炎症反応を起こす。そのため不明熱の原因ともなりうる。また、その他の症状として体重減少や全身倦怠感、関節痛などが出現しうる。左房内に粘液腫が発生した場合、聴診にて、MSに類似した拡張期ランブルを聴取し、tumor plopと呼ばれる低調な拡張早期過剰心音を聴取することがある。また体位変換により僧房弁口がさらに狭くなり心雑音が増強、呼吸困難が出現することがある。したがって、全体として最も矛盾なく本患者における症状、合併症を説明できるのは心臓粘液腫である。
【参考】107I56、110I43
作問者コメント

国家試験全体を通しての心臓粘液腫の出題頻度は比較的少ないが、107回以降で見ると2年に1回以上のペースで出題されている。基本的に体位依存性の心音の変化がポイントとなっていることが多く、エコー画像を付けて出題する問題もあり、難易度としては高くないと思われる。臨床問題として発熱を主訴にするパターンが多いため、切り口を変えて出題した。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A54 免疫 臨床各論
問題
40歳の女性。関節痛を主訴に来院した。5年前から手指のこわばり、移動性の疼痛があった。3年前から頻尿があり、過敏性膀胱と診断された。四肢関節痛や腰背部痛が悪化したため4週間前に自宅近くの診療所を受診したが症状が改善しなかった。体重に変化はない。体温36.2 °C。脈拍80/分、整。血圧120/76mmHg。手指遠位指節間関節や近位指節間関節に骨棘を触れる。手指や手首、膝など多関節に圧痛を認めるが、腫脹を認めない。両側の項部や僧帽筋上縁中央部、棘上筋、上腕骨外側上顆付近、臀部上外側、大腿骨大転子後方の触診時、顔をしかめるような疼痛反応を認める。
尿所見に異常を認めない。赤沈10mm/1時間。血液所見:赤血球425万、Hb 12.8g/dL、Ht 40%、白血球4,200、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、AST 21U/L、ALT 16U/L、LD 188U/L(基準176〜353)、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、CK 48U/L(基準30〜140)、コルチゾール12.4μg/dL(基準5.2〜12.6)。免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉陰性、抗核抗体陰性。
治療に最も適さないのはどれか。
- プレガバリン
- 運動療法
- NSAIDs
- 抗うつ薬
- アセトアミノフェン
解説
【テーマ】線維筋痛症
【正答】c
全身症状と過敏性膀胱の既往や自己免疫異常を伴わない、正常な血液所見から線維筋痛症を最も考える。
線維筋痛症の治療薬として、NSAIDsや副腎皮質ステロイドは有効でないことが知られている。
作問者コメント

線維筋痛症の治療について問うた。
【作問者をフォロー】キョロ(Twitter)
A55 免疫 臨床各論
問題
56歳女性。発熱、咳嗽、呼吸困難を主訴に救急要請して来院。体温38.5℃、脈拍102/分、血圧150/90mmHg、呼吸数24/分、頸静脈怒張なし。心音に異常なし。肺胞呼吸音の減弱とcoarse cracklesを聴取する。既往歴:高血圧、2型糖尿病、関節リウマチ(10年前より)。血液所見:赤血球378万、Hb10.8g/dL、白血球17,200、血小板18万、CRP 23mg/dL。患者は昏睡状態であったが、神経学的異常は見られなかった。診察中に、呼吸困難が悪化したため、挿管し気管内チューブにより人工呼吸を開始し、広域スペクトルを持つ抗菌薬の投与を開始した。2時間後に再び患者を診察した際には、四肢において深部腱反射が消失し、両側性の弛緩性麻痺が認められた。
考えられる基礎疾患はどれか。
- 脳膿瘍
- 被殻出血
- 脳動静脈奇形
- 環軸椎亜脱臼
- 右中大脳動脈閉塞
解説
【テーマ】環軸椎亜脱臼
【正答】d
関節リウマチに合併する環軸椎亜脱臼に関する出題。長期の関節リウマチの既往がある患者では環軸椎亜脱臼を合併している可能性があり、挿管の際に頸部後屈することで状態が悪化しうる。従って、環軸椎亜脱臼をもつ患者においては頸部後屈が禁忌であるとされている。環軸椎亜脱臼は頸椎単純X線撮影側面像にて診断することが可能であり、治療法としてはカラー装着などの保存的治療と、亜脱臼の固定を行う手術療法がある。
aについて補足:発熱、呼吸困難、肺胞呼吸音の低下、coarse crackelsの聴取より、肺炎を起こして脳膿瘍となって神経症状が出ると考えた方もいるかもしれない。しかし、脳膿瘍は一般的に頭痛を伴うことが多く、また神経症状も巣症状で、両側性に弛緩性麻痺をきたすことは一般的でない。また、挿管前に神経症状がなかったのにも関わらず、挿管後2時間で突然神経症状をきたしている点を合わせて考慮しても、脳膿瘍は否定できる。
【参考】108G12、109D43
作問者コメント

環軸椎亜脱臼に関する出題は主にDown症候群の合併症として問われているが、関節リウマチの合併症としても重要である。RAの環軸椎亜脱臼合併症例では頸部後屈が禁忌となり、盲目的経鼻挿管が行われる。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A56 免疫 臨床各論
問題
55歳の女性。筋力低下と皮疹を主訴に来院した。半年前から階段やバスステップの昇降が困難になった。2週間前から上眼瞼に紫紅色調の浮腫が、指関節の伸側に紅斑が出現した。身長162cm、体重56kg。体温36.8℃。脈拍72回/分、整。血圧100/65mmHg。眼球結膜と眼瞼結膜とに異常を認めない。心音に異常を認めない。両側下肺野にfine cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝脾を触知しない。徒手筋力テストで、頸筋3、両側の上下肢筋4。神経学的に異常所見はない。
この症例で予想されるのはどれか。
- 抗セントロメア抗体陽性
- 尿中クレアチニン高値
- 血小板数減少
- LD高値
- CK正常
解説
【テーマ】PM/DM(多発性筋炎・皮膚筋炎)
【正答】d
筋力低下・ヘリオトロープ疹・Gottron徴候からPM/DMを疑う。抗セントロメア抗体は強皮症で陽性となり、PM/DMでは抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)が陽性となる。筋障害を反映して尿中クレアチンは上昇し尿中クレアチニンは低下する。またLD、アルドラーゼ、CK、AST、ALTといった血清中筋原性酵素が上昇する。赤沈、CRPが上がる点で筋ジストロフィーと鑑別される。血球数は変化しない。
【参考】101G53
作問者コメント

PM/DMと診断することは比較的容易だったのではないでしょうか。筋破壊を反映し尿中クレアチンは上昇、尿中クレアチ”ニ”ンは低下するところに注意!腎の直接障害は見られない点も、自己免疫疾患では意外どころです。
【作問者をフォロー】夏井(Twitter)
編集者コメント

皮膚筋炎の抗体はアツそうな予感です。それぞれの特徴を押さえておきましょう。
A57 救急 臨床各論
問題
35歳の男性。エレベーター内の爆発事故で搬入された。上半身は全周性にIII度熱傷であった。
この患者の初期治療で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 気道を確保する。
- 減張切開を行う。
- 利尿薬を投与する。
- 抗菌薬を二種類併用する。
- 高カロリー輸液を開始する。
解説
【テーマ】爆発事故
【正答】a,b
爆発事故では気道損傷の可能性が高く、損傷の有無の確認および気道確保をまず行う。全周性熱傷による末梢循環不全を予防するため、減張切開を行う。
初期輸液は乳酸リンゲル液を用いる。
抗菌薬の予防投与はむしろ好ましくないとされる。
作問者コメント

そんなに難しい問題ではないと思います。スポーツの国際大会などでは普段では考えられないような事件や事故が起こるかもしれません。
【作問者をフォロー】みっきそ(Twitter)
A58 眼科 臨床各論
問題
63歳の女性。術後3年経過して目のかすみを主訴に来院した。60歳時に両眼の視力低下のために眼科を受診し、散瞳して細隙灯顕微鏡検査をしたところ両眼ともに混濁が強かったが、網膜電図(ERG)で反応良好であったため、超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術が行われ、視力は回復した。しかし、近頃左眼の視力が再び低下し、目のかすみを訴えて受診した。右1.0(矯正不能)、左0.4(矯正不能)。左眼の徹照法を用いた細隙灯顕微鏡写真を別に示す。
この患者について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 水晶体前嚢の混濁がみられる。
- 経過観察にて対応する。
- 眼内レンズを再挿入する。
- レーザー切開術で治療を行う。
- 治療後の再発はまれである。
解説
【テーマ】後発白内障
【正答】d,e
- 超音波乳化吸引術にて既に前嚢は摘出しており、残った後嚢の混濁がみられる。
- 後嚢の混濁は自然に解消されるわけではないため経過観察は不適。
- 眼内レンズに混濁があったり、障害があったりするわけではないので、再挿入する必要はない。
- YAGレーザーを用いて、混濁した水晶体後嚢を切開することが有効である。網膜電図で反応良好であり視機能良好であればレーザー切開術によって視力が回復する。
- 治療時に水晶体後嚢の破片により飛蚊症を認めることはあるが徐々に改善し、治療で後嚢も開放するため再発はまれである。
【参考】110A9、109D26
作問者コメント

白内障の術後合併症として、術後5年で約20%の患者に見られる後発白内障の特徴・検査・画像所見・対応について確認する問題である。110回の出題当時は正答率が30%台と低く、111~113回で出題がなかったためrevival出題の可能性があり、「白内障術後数年経過」、「霧視」、「徹照法」で水晶体「後嚢」の混濁、「後嚢レーザー切開術」などのポイントを中心に確認してほしい。
【作問者をフォロー】雪(Twitter)
A59 内分泌代謝 臨床各論
問題
68歳の男性。倦怠感、食思不振、体重減少を主訴に来院した。既往歴に特記すべきことはない。身長175cm、体重54kg。体温35.5℃。脈拍72/分、整。血圧86/54mmHg。身体診察に異常を認めない。血液所見:赤血球398万、Hb 12.9g/dL、白血球6,200(好中球69%、リンパ球12%、好酸球13%、好塩基球1%、単球5%)、血小板21.8万。血液生化学所見:総蛋白7.7g/dL、アルブミン4.7g/dL、AST 37U/L、ALT 14U/L、尿素窒素8.9mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖68mg/dL、Na 121mEq/L、K 4.8mEq/L、TSH 0.5μU/mL(基準0.5〜5.0)、FT4 0.72ng/dL(基準0.9〜1.7)。胸腹部造影CTでは明らかな異常を認めない。
次に行うべき対応として適切なのはどれか。3つ選べ。
- 副腎皮質ステロイド投与
- 甲状腺ホルモン剤投与
- 頭部MRI
- 脳脊髄液検査
- ACTH、コルチゾールの測定
解説
【テーマ】続発性副腎皮質機能低下症
【正答】a,c,e
汎下垂体機能低下症による続発性副腎皮質機能低下症の症例です。
- 副腎不全は疑った時点でステロイド補充が必要です。
- ステロイド補充を先行せずに甲状腺ホルモン剤を先に投与するとショックを起こすリスクがあり、禁忌肢です。
- 下垂体の腫瘍や炎症を確認する必要があります。
- テキトーに作った選択肢です。
- ACTH・コルチゾールともに低下していることの確認です。
作問者コメント

コルチゾール・ACTHの情報なしに副腎不全を想定できるかを問う問題です。 選択肢で分かったかと思いますが、選択肢のない臨床の現場で食思不振・体重減少・倦怠感、低ナトリウム・高カリウム血症、低血圧、低血糖、好酸球上昇などの情報から副腎不全を想定できるかは重要です。 今回の症例はTSH・FT4の低下も伴っており、汎下垂体機能低下症によるACTH分泌不全が主病態です。この場合、甲状腺ホルモンの補充開始は必ずステロイド補充を事前にやってから、というのも覚えておきましょう。
【作問者をフォロー】トワ先生(Twitter)、トワ医Write~糖尿病・内分泌内科医の啓発ブログ~
A60 消化器 臨床各論
問題
60歳の女性。上腹部痛を主訴に来院した。
現病歴:1か月前から食後に心窩部痛を自覚するようになった。昨夜、還暦祝いにサーロインステーキを食べた。歩いて帰宅後に悪心と右肩から背部に放散する上腹部の痛みがあり受診した。今朝からやや色の濃い尿に気付いていたという。
既往歴:18歳時に虫垂切除術。糖尿病、高脂血症を指摘されている。
家族歴:母親が糖尿病。父親は心筋梗塞で早くに他界。兄も心筋梗塞でPCI施行されている。
現 症:意識は清明。身長152cm、体重62kg。体温37.2℃。脈拍92/分、整。血圧124/70mmHg。呼吸数16/分。SpO2 96% (room air)。眼球結膜に黄染を認める。
この患者の血液検査所見として最も考えられるのはどれか。
- CK高値
- LDH高値
- アルブミン上昇
- ミオグロビン高値
- 間接型優位のビリルビン高値
解説
【テーマ】急性胆嚢炎
【正答】b
- 心筋梗塞ひっかけですが違いますわな。心筋梗塞で放散痛があるのは左肩です。歯、顎が痛くなるのも虚血性心疾患のサイン。
- 正解。胆嚢炎なのでAST、ALT、LDH、ALP、γ-GTPなど胆道系酵素のは高値を示す。ほんでもって、心筋梗塞・心不全でもLDHは上がる訳です。なのでどっちパターンでも実は正解になるという、心優しい問題です。
- 33%の症例で急性胆嚢炎ではアルブミン値が低下するらしいです。肝臓でアルブミン作ってるしね。
- これも心筋梗塞ひっかけ。
- 胆管がダメになってるわけで、直接ビリルビン優位に高値になります。
作問者コメント

なんかひっかけ問題作れないかなと思って、心血管イベント系っぽい急性胆嚢炎の問題を作ってみました。食後の腹痛、上腹部痛と右肩や背部への放散痛、発熱、眼球結膜黄染、色の濃い尿から胆嚢結石による、急性胆嚢炎を疑ってください。心血管イベントの放散痛は左肩、顎、歯です。
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A61 循環器 臨床各論
問題
75歳男性。3ヶ月に1回の定期外来を受診した。「薬を飲み忘れることもありますが、おかげさまで血圧はいつも平気です」と話す。既往歴:高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、拡張型心筋症。3年前にうっ血性心不全で入院歴あり。体温36.2℃、血圧110/76mmHg、脈拍80/分。血圧手帳では概ね収縮期血圧が110〜120mmHgで推移している。内服薬:カンデサルタン8mg、カルベジロール5mg、フロセミド10mg、シタグリプチン50mg、ナテグリニド270mg、メトホルミン1500mg、アトルバスタチン10mg。長谷川式簡易認知症スケールは29点(30点満点)。
外来担当医の発言として適切でないのはどれか。
- 「痛いところはありませんか」
- 「お薬手帳は常に持ち歩いてください」
- 「降圧薬は血圧が高くない日は飲まなくてもいいですよ」
- 「食欲がなく食事が摂れない日は、血糖降下薬の内服は中止してください」
- 「お薬を規則正しく飲むことが心配ならば、ご家族の協力を得ることも検討していきましょう」
解説
【テーマ】薬の副作用
【正答】c
- スタチンの副作用である筋痛、横紋筋融解症の有無を聞く。
- メトホルミン内服中であり、他院や救急外来での不要不急の造影CTなどは避けたい。お薬手帳は持ち歩く習慣をつけてもらいたい。「常に」も言い過ぎとは限らない。
- カルベジロールやカンデサルタンは本症例では高血圧症に対してのみならず拡張型心筋症の心筋remodeling予防のために用いられており、継続の必要がある。
- グリニド系による低血糖やビグアナイド系によるアシドーシスのリスクがあり、シックデイの対応を指導する。
- 認知機能低下はみられないものの、現に飲み忘れはあり服薬指導の必要がある。
作問者コメント

よく処方されている薬剤の効用、副作用は熟知しておこう。当直の救急外来で「この人メトホルミン飲んでるので造影CTはやめましょう!」と周りとコミュニケーションをとるとか、ポリファーマシー気味の患者さんの持参薬継続の判断をするとかは研修医の日常業務だ。目の前の症例問題は、研修医として働いているイメージで解く。単調な国試勉強も少しはやる気がでるはずだ。
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A62 眼科 臨床各論
問題
54歳女性。視力低下を主訴に来院。若いころは特に視力は問題なかったが、ここ数年で徐々にものが見にくくなってきた。母親も視力が悪く介護が必要で、息子もここ数年視力低下を訴えている。右0.5(矯正不能)、左0.5(矯正不能)。Schirmer試験は正常であった。患者の角膜実質浅層に白色~灰白色の顆粒状の混濁と棍棒上の混濁を認める。
診断として最も考えられるのはどれか。
- 斑状角膜ジストロフィ
- 顆粒状角膜ジストロフィ1型
- 顆粒状角膜ジストロフィ2型
- 膠様滴状角膜ジストロフィ
- Fuchs角膜内皮ジストロフィ
解説
【テーマ】角膜変性症
【正答】c
角膜変性症についての出題である。遺伝性の視力低下、Schirmer試験正常、進行性の視力低下から角膜変性症であることが考えられる。我が国においてはアベリノ角膜変性症が最も多いとされている。
本症例において角膜実質浅層に白色~灰白色の顆粒状の混濁と、棍棒上の混濁を認めていることから顆粒状角膜ジストロフィ2型(Avelino角膜ジストロフィ)であることがわかる。顆粒状の混濁はヒアリン、棍棒上の混濁はアミロイドの沈着である。TGFBI遺伝子が原因となる常染色体優性疾患である。
- 斑状角膜ジストロフィは、ムコ多糖代謝異常疾患においてみられるもので、角膜実質中層~深層亜までに及ぶ、境界不鮮明な斑状混濁がみられる。
- 1型であれば、ヒアリンの沈着は見られるが、アミロイドの沈着は見られない。
- 正しい。
- 膠様滴状角膜ジストロフィでは、角膜上皮下に乳白色の膠様隆起物がみられる。
- Fuchs角膜ジストロフィでは、進行性に角膜内皮細胞数が減少して形態異常が生じ、角膜浮腫による混濁をきたす疾患であり、最終的には水泡性角膜症となる。
作問者コメント

角膜変性症はこれまで国家試験での出題がないが、遺伝性の視力低下をきたす疾患として覚えておきたい。作者の大学の国家試験出題委員の専門が角膜であることから出題した。
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A63 産婦人科 臨床各論
問題
25歳女性。性器出血を主訴に救急受診。最終月経が12週前である。1年前に自然妊娠したが流産し、子宮内膜搔爬術を行った。身長150cm、体重43kg。体温36.8℃。脈拍数70回/分。呼吸数20回/分。心音および呼吸音に異常なし。妊娠反応陽性。経膣超音波検査にて子宮内に胎嚢を認めたが心臓の動きは確認されず、妊娠を中止し子宮内膜搔爬術により除去した。病理検査にて胎児成分が認められ、絨毛の一部が水腫嚢胞化していた。また、核型は69XXXであった。
診断はどれか。
- 絨毛癌
- 全胞状奇胎
- 存続絨毛症
- 部分胞状奇胎
- 成熟嚢胞性奇形種
解説
【テーマ】部分胞状奇胎
【正答】d
経膣超音波検査にて胎嚢を確認し、絨毛の一部の水腫嚢胞化、核型が69XXXであることから部分胞状奇胎であることがわかる。
- 絨毛癌であれば、超音波にて筋層内に血腫を含む腫瘍増を認めるはずである。
- 全胞状奇胎であれば胎嚢は認めず、胎児成分も認めない。
- 胞状奇胎、分娩、流産のあらゆる妊娠の終了後にhCG値の異常を示す疾患である。
- 正しい。
- 卵巣腫瘍である。
【参考】107D40、105I43
作問者コメント

全胞状奇胎と部分胞状奇胎の違いについて問うた。107D40では病理画像も合わせて出題されているので確認しておきたい。
【作問者をフォロー】うどん(Twitter)
A64 血液 臨床各論
問題
68歳の女性。発熱と咳嗽とを主訴に来院した。5日前から発熱、咳および喀痰がみられ、昨日から倦怠感が強くなったため受診した。胸部エックス線写真で両側下肺野に浸潤影を認め、急性肺炎と診断された。入院時、意識は清明。身長158cm、体重46kg。体温38.3℃。脈拍88/分、整。血圧108/64mmHg。呼吸数24/分。SpO2 96%(room air)。皮膚と粘膜とに明らかな出血傾向を認めない。両側下肺にcoarse cracklesを聴取する。血液所見:赤血球390万、Hb 11.4g/dL、Ht 37%、白血球18,000(桿状核好中球8%、分葉核好中球80%、リンパ球12%)、血小板6.3万、PT 68%(基準80~120)、APTT 48秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン130mg/dL(基準200~400)、血清FDP 60μg/mL(基準10以下)。CRP 21mg/dL。
急性期DICスコアの診断基準を示す。
スコア | SIRS | 血小板数 | PT比 | FDP(μg/mL) |
0点 | 3項目未満陽性 | 12万以上 | 1.2未満 | 10未満 |
1点 | 3項目以上陽性 | 8万以上12万未満 | 1.2以上 | 10以上25未満 |
3点 | – | 8万未満 | – | 25以上 |
この患者の急性期DICスコアは何点か。
- 4点
- 5点
- 6点
- 7点
- 8点
解説
【テーマ】DIC
【正答】d
急性期DICスコアをつけさせる問題です。スコアのつけかたは提示されているので、実質以下の2点を問うていることになります。
- SIRSで満たしている項目が分かるか
- PT比の意味が分かるか
SIRSの項目は以下の通りです。
- 白血球数:<4000 または >12000(幼弱白血球数:>10%)
- 呼吸数:>20/分
- 脈拍:>90/分
- 体温:<36℃ または >38℃
この患者では、「白血球18,000」「呼吸数24/分」「脈拍88/分」「体温38.3℃」であるため、SIRSの項目を3つ満たし、急性期DICスコアは1点となります。
PT比は、患者PT/基準PTで表されます。したがって、「PT 68%(基準80~120)」より、0.56~0.85の範囲となり、スコアは0点となります。
血小板数とFDPは本文中に記載があるので、そのまま使います。「血小板6.3万」よりスコアは3点、「血清FDP 60μg/mL」よりスコアは、3点となります。
したがって、1+0+3+3=7点が正解となります。
急性期DICスコアでは、4点以上でDICの診断になるので、この患者はDICをきたしていると判断できます。
作問者コメント

急性期DICスコアが卒試で出題されていたので、関連問題を作りました。
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A65 感染症 臨床各論
問題
36歳の男性。朝から続く腹痛、嘔吐および下痢のため来院した。2 日前に居酒屋で職場の送別会があり、昨日は参加者全員に特別な症状はなかった。本日の朝から昼にかけて同様の症状を呈している人が複数おり、病院を受診していた。宴会での料理はポテトサラダ、鳥の刺身、焼き魚、玉子焼き、おにぎりであった。
症状を引き起こした原因として最も疑わしいものはどれか。
- 病原性大腸菌
- 腸炎ビブリオ
- カンピロバクター
- ノロウイルス
- 黄色ブドウ球菌
解説
【テーマ】食中毒
【正答】c
送別会2日後の朝から発症しており、36時間程度経過していると思われる。症状からはいずれも可能性はあるが、発症までの時間や摂取食品より鳥の刺身に付着していたカンピロバクターの可能性が最も高い。
病原性大腸菌の潜伏期間は10〜20時間であり井戸水が原因となる。腸炎ビブリオは6〜20時間後に発症し、生魚介類などが原因となる。
ノロウイルスは24〜48時間後に発症するが、生ガキなどの二枚貝が原因となる。
黄色ブドウ球菌は2〜4時間で発症し、調理者の手の化膿巣が原因となる。
作問者コメント

感染症やマイナーによくあるの暗記系のものは直前期に詰め込めたかどうかが鍵となりやすい。模試受験直前に感染症をやったばかりの学生はできていてほしいが、そうでない学生は国家試験直前に詰め込めるように今から逆算して計画を立ててほしい。
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A66 加齢老年学 臨床各論
A67 整形外科 臨床各論
問題
33歳男性。左下肢の痛みを主訴に来院した。
現病歴:4週前から左腰の痛みが出現した。他院で腰痛症の診断で非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けたが症状は軽度しか改善しなかったため、紹介受診した。以下、患者と医師の会話の概略を記す。
医師「今回の痛みは何かきっかけがありましたか」
患者「最近筋トレにはまっていて、いつもより重いバーベルを担いでスクワットをしたときに痛めました。同年代の人と比べて左脚のスクワット(しゃがむの意)が弱かったので…」
医師「そうでしたか、筋トレは良い心がけですが…具体的にどの部分が痛みますか」
患者「左脚の太腿の前側と、(患者が指を指しながら)ここら辺に痛みがあります」
医師「なるほど。腰痛ははじめてですか」
患者「中学生の頃から吹奏楽をやっていて、重い楽器を首から下げていたためか、14歳の時から腰痛があります」
生活歴・家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長175cm、体重75kg、体温36.2℃、脈拍72/分、整。血圧128/66mmHg。左膝蓋腱反射やや減弱、アキレス腱反射は正常。FNSテスト陽性、SLRテスト陰性。
下線部の写真を示す。患者は赤の楕円部分をなぞる様に指した。
この患者の画像診断と一致するものはどれか。
①頸部MRI T2強調
②腰部MRI T1強調
③腰部単純MRI
④腰部単純MRI
⑤左膝MRI T2*
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説
【テーマ】腰部椎間板ヘルニア(L4)
【正答】b
14歳から腰痛(腰痛の既往)、スクワット運動を契機とした左大腿伸側と左下腿内側の痛み、左膝蓋腱反射やや減弱より、L3/L4部位の腰椎椎間板ヘルニアを疑う。この患者の言う同年代よりスクワットが弱いというのは、もしかすると14歳からのL3/L4ヘルニアの既往を示唆している可能性がある。
腰痛症の患者を診察する場合、常に腰椎椎間板ヘルニアを念頭に置くべきである。左膝膝蓋腱反射やや減弱、FNSテスト陽性もL4のヘルニアを疑わせる所見である。
- 神経膠腫もしくは視神経脊髄炎。T2強調画像矢状断にて、C3からC6に至る高信号域、脊髄腫脹を認める。脊髄炎、髄内腫瘍を疑う所見だが、3椎体を越えて病変が存在することに注意。
- 正しい。
- L4/5レベルのヘルニア。腰部ヘルニアの中では最多。
- 同上
- 半月板損傷の画像。「膝を捻る」「膝を動かしていたら動かなかったのが動くようになる」がキーワード。
【出典】L3/L4ヘルニア画像(②の画像)の出典先リンクです。
作問者コメント

腰痛は高齢者の愁訴で多い。また、若年でも罹りうる疾病である。この患者はL3/L4であるが、ヘルニアで多いのはL4/L5であるため、ヘルニア=L4/L5と飛びついた学生は大いに反省し、患者の訴えをきちんと聞くように。
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A68 小児科 臨床各論
問題
10ヶ月男児。2回目の頸部化膿性リンパ節炎のため2回目の入院治療を行なっている。既往歴には細菌性肺炎があり、実の兄は6ヶ月時に感染症のため死亡している。好中球の活性酸素能の低下が認められた。
本児で最も可能性が高い疾患について接種可能でないワクチンはどれか。
- 肺炎球菌
- ロタウイルス
- 麻疹風疹
- BCG
- 水痘
解説
【テーマ】慢性肉芽腫症
【正答】d
代表的な免疫不全症の一つ、慢性肉芽腫症が題材です。ブドウ球菌感染症が特徴的ですね。X連鎖性疾患というところもポイントです。
そしてワクチンの基本的知識を問うています。
まず抗体産生不全はないので不活化の肺炎球菌は問題ないです。またT細胞の異常もないので、ロタ、MR、水痘といった生ワクチンも可能です。
しかし、貪食細胞機能の異常があるので、BCGは禁忌です。深在性リンパ節炎(BCGitis)が起こることが知られています。
作問者コメント

学生さんでも知っている免疫不全とワクチンの基本的な問題です。
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編集者コメント

肺炎球菌と結核の一騎打ちになった人も多いと思います。生ワクチンの禁忌について確認しておきましょう。
A69 内分泌代謝 臨床各論
問題
46歳の男性。乳汁分泌、慢性下痢を主訴に来院した。尿路結石、胃潰瘍の既往がある。体温36.5℃。脈拍68/分、整。血圧134/83mmHg。両側の乳汁分泌を認める。その他の身体診察に異常を認めない。血液所見:赤血球421万、Hb 14.5g/dL、白血球5,800、血小板20.1万。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 4.3g/dL、尿素窒素 14mg/dL、クレアチニン 1.1mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 10.8mg/dL、P 2.1mg/dL。
診断に有用でないのはどれか。
- 下垂体MRI
- 家族歴の確認
- 頚部超音波検査
- 内視鏡的超音波検査〈EUS〉
- 尿中メタネフリン・ノルメタネフリン定量
解説
【テーマ】 多発性内分泌腫瘍症〈MEN〉
【正答】e
多発性内分泌腫瘍症1型〈MEN1〉の症例です。
- PRL産生腺腫を検索する必要があります。
- 当然家族歴は重要です。
- 副甲状腺腫を探す必要があります。
- 膵内分泌腫瘍の精査に有用です。
- 褐色細胞腫を合併するのはMEN2なので間違いです。
作問者コメント

乳汁分泌(PRL産生下垂体腺腫)、尿路結石既往+高Ca血症(原発性副甲状腺機能亢進症)、胃潰瘍既往+慢性下痢(ガストリノーマによるZollinger-Ellison症候群の可能性)という限られた情報からMEN1を想定できるかを問う問題です。 内分泌疾患は疑わないとなかなか診断に至らず、かつ苦手とする医師も多いです。少ない情報からでも内分泌疾患が鑑別に上がるような医師を目指して頑張りましょう!
【作問者をフォロー】トワ先生(Twitter)、トワ医Write~糖尿病・内分泌内科医の啓発ブログ~
A70 消化管 臨床各論
問題
88歳女性。肺炎で3日前より内科入院中の患者。絶飲食、輸液、抗菌薬投与による治療を受けている。午前1時に腹痛と左足の痛みを訴えナースコールした。「1時間ほど前から痛くなった」と訴えている。意識清明、体温37.5℃、血圧142/80mmHg、心拍数90回/分、SpO2 95% (鼻カニュラ3L/分投与下)。腹部は平坦軟、圧痛は左下腹部に軽度あり、打診痛なし。緊急で施行した造影CT検査で以下のような所見が得られた。
まず取るべき行動はどれか。2つ選べ。
- 整形外科コンサルト
- 抗菌薬投与の中止
- 鎮痛剤の投与
- 用手的還納
- 緊急手術
解説
【テーマ】閉鎖孔ヘルニア嵌頓
【正答】d,e
閉鎖孔ヘルニアとは、恥骨筋と内外閉鎖筋との間にある閉鎖孔をヘルニア門として、そこにヘルニア内容物(腸管であることが多い)が嵌入する内ヘルニアのひとつである。一般的には高齢・痩せ型・多産の女性に好発する疾患として知られており、理由としては加齢や出産に伴う骨盤支持組織の弛緩などがあげられる。
腸管が嵌頓した場合には、なるべく早期の還納(かんのう;出っ張っている状態を手などで押して戻すこと)が必要であるが、還納がうまくできない場合には緊急手術が必要となる。CTの典型像は、嵌頓時では恥骨筋と外閉鎖筋の間の類円形で内部均一な低吸収像である。本問のCT検査所見でも典型的な所見が得られている。この画像を見たら即診断がつくため、覚えておくと良いだろう。
- 下肢の痛みは閉鎖孔を通過する閉鎖神経の圧迫により生じるものであり、整形外科と直接の関係はない。
- 肺炎で抗菌薬投与中だが、閉鎖孔ヘルニアの病態とは無関係であり、抗菌薬は肺炎に対して継続すべきである。
- 鎮痛剤はひとつの選択肢だが、それよりdとeが優先される。
- まず用手的に還納を試みる。困難な場合はエコーガイド下の還納が有効だとする報告もある。
- 還納ができなければ緊急手術を考慮する。時間が経過すると嵌頓した腸管が壊死するため、急ぐ必要がある。
【参考文献】閉鎖孔ヘルニア61例の検討 日臨外会誌 75( 8 )、2073―2078、2014
作問者コメント

痩せた高齢女性の突然発症の腹痛と下肢の痛みという、閉鎖孔ヘルニアの典型例である。発症のきっかけはさまざまで、設問のように他疾患の入院中に発症することもある。
鼠径ヘルニア嵌頓と同様、治療は緊急性を有する。発症から短時間であれば腸管壊死は回避され、侵襲の小さい腹腔鏡手術などで治療を完遂することも可能である。
一方で、発症から時間がたち腸管壊死を強く疑う場合は、用手的還納はせずそのまま手術という選択肢もありうる。いずれにせよ診断までの時間が重要な因子になる。このCTを見たらすぐに外科医にコール、である。
比較的まれな疾患だが、当直業務を担当する研修医が遭遇しやすい疾患であり、さらに診断のタイミングが患者の予後を左右する可能性が高いため、国家試験後も役に立つ知識である。
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A71 産婦人科 臨床各論
問題
60歳女性。子宮体癌に対して開腹子宮全摘術+両側卵巣摘出術後で、2剤併用化学療法施行目的に入院となった。制吐剤、ステロイド静注後に1剤目の抗癌剤を持続静注した。続けて2剤目の持続静注を開始したところ、15分後にSpO2:89%(room air)となったため酸素投与を開始した。続いて、酸素投与直後に全身の発赤も出現したと担当看護師から報告を受けた。
発赤出現時の身体所見:体温36.5℃、血圧126/88mmHg、脈拍98/分、整。呼吸数12/分、SpO2:98%(鼻カニュラ3L/分投与下)。体幹部を中心に著明な発赤を認める。担当看護師は2剤目の抗癌剤投与を中止していた。
直ちに行う対応として最も適切なのはどれか。
- アドレナリン0.1mg 静注
- アドレナリン0.1mg 筋注
- アドレナリン0.3mg 静注
- アドレナリン0.3mg 筋注
- アドレナリン1mg 静注
解説
【テーマ】アナフィラキシー
【正答】d
化学療法に際し前投薬を用いるも、2剤目の抗癌剤によるものと思われるアナフィラキシーで、低酸素血症と全身発赤を生じた症例。
まずはABCDEの評価だ。「アナフィラキシーにはアドレナリンのオッサン(0.3)筋注!」と覚えようと啓蒙されている。
病棟には救急カート内のアドレナリン1mg /1mL製剤しかないことも多く、0.3mlをシリンジで引いて作る必要がある。eは心静止時の対応であり禁忌。
作問者コメント

あなたも研修医初日から造影CTの付き添いなど、アナフィラキシーショックが生じやすい場面に接しうる。今から急変時の動きを具体的にイメトレしておこう。
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A72 肝胆膵 臨床各論
問題
60歳の男性。人間ドックでC型肝炎ウイルス抗体陽性を指摘され来院した。10年前にペグインターフェロンとリバビリンの併用治療を受けたが不成功だった。自覚症状はない。飲酒は機会飲酒。身長168cm、体重75kg。体温36.6℃。脈拍73/分、整。血圧127/81mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球486万、Hb 15.2g/dL、Ht 48%、白血球7,010、血小板13万。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 55IU/L、ALT 80IU/L、LD 290IU/L(基準176~353)、ALP 323IU/L(基準115~359)、γ-GTP 85IU/L(基準8~50)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 102mEq/L。免疫血清学所見:CRP 0.8mg/dL、AFP 2.8ng/mL(基準9以下)、HBs抗原陰性、HCV抗体陽性、HCV-RNA 5.32 logcopies/mL、HCVセロタイプ1型。
対応として最も適切なのはどれか。
- 経過観察
- ウルソデオキシコール酸投与
- エンテカビルとテノホビルの併用投与
- ソホスブビルとレジパスビルの併用投与
- ペグインターフェロンとリバビリンの併用投与
解説
【テーマ】C型肝炎の治療薬
【正答】d
HCVセロタイプ1型によるC型肝炎の患者である。(感染源は記載しなかったが、輸血や刺青などの血液感染によるものが考えられる)
HCVには6つのジェノタイプ(1a、1b、2a、2b、3a、3b)があり、本邦では1bが70%、2aが20、2bが10%である。ジェノタイプ1a、1bがセロタイプ1型、ジェノタイプ2a、2bがセロタイプ2型である。(※よって一般的に日本人にインターフェロンは効きにくい。この患者もおそらくジェノタイプ1bであろう。)
- B型肝炎のレジメンはエンテカビル+テノホビル(c)が第一選択。なお、以前はラミブジンがよく用いられていたが耐性を起こしやすい欠点がある。(最も耐性を作りにくいのがテノホビル)
- C型肝炎セロタイプ1のレジメンはソホスブビル+レジパスビル(d)が第一選択。
- C型肝炎セロタイプ2のレジメンはソホスブビル+リバビリンが第一選択。高ウイルスの際はペグインターフェロン+リバビリン(e)を選択する(99A27)。なお、ソホスブビルは腎機能低下時(eGFRが30以下)や透析患者では禁忌となる。
患者はセロタイプ1型のC型肝炎であるため、正解はdとなる。
ここからは余力のある諸氏向けであるが、この患者は以前ペグインターフェロン治療を受けて失敗している。インターフェロンが効きやすい基準(効果判定)として、101F33でも出題があったが以下にまとめておく。
- 若いこと。
- 男性であること。
- セロタイプが2型であること。
- HCV-RNA量が少ないこと。
- 線維化が軽度(F2まで)であること。
- IL-B28遺伝子多型がメジャータイプであること。
なお,肝臓の線維化の指標として血小板がある(肝臓でのトロンボポエチン産生能を反映)。F1、F2、F3、F4(肝硬変)の血小板はそれぞれ17万、15万、13万、10万ほどといわれている。
【参考】111I10、104I6、101F33、99A27、97H68
作問者コメント

C型肝炎の治療薬選択に関する出題である。
治療薬としては従来薬であるインターフェロン(副作用にうつ病(最多)があるのが重要(97H68)。他にインフルエンザ様症状、間質性肺炎,血小板減少による出血傾向など)、リバビリンに加え、近年Direct ActingAntivirals(DAAs)が進歩し、劇的に予後が改善した。
余力のある諸氏は、インターフェロンの他の適応疾患(腎細胞癌、CML、MM、MSの予防)も確認しておこう。予想正答率:65%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
A73 産婦人科 臨床各論
問題
17歳女子。フリーター。2日前からの膿性帯下の増量を主訴に、本日産科婦人科に来院した。交際相手の男性が、数日前に膿性分泌物を伴った排尿時痛をきたして泌尿器科を受診したため、自分も心配だという。
最も考えられる疾患はどれか。
- 梅毒感染症
- 淋菌感染症
- 性器ヘルペス
- 尖圭コンジローム
- クラミジア頚管炎
解説
【テーマ】淋菌感染症
【正答】b
- 初感染部位に、無痛性の初期硬結を形成する。ペニシリンで治療。
- 正しい。膿性帯下、男性の膿性分泌物を伴う排尿時痛から、淋菌感染症が疑われる。
- 初感染時は、外陰部に多発性・左右対称性の多発潰瘍病変が出現する。
- 外陰、会陰、腟、子宮頸部に良性腫瘤性病変を形成する。
- 漿液性体解の増量、不正出血、下腹部痛を認める。
作問者コメント

淋菌感染症は、性行為による直接感染により感染し、2~7日の潜伏期を経て発症します。男性は淋菌感染による尿道炎で激烈な症状を呈するのに対し、女性は子宮頸管炎の形をとることが多く、それ以外の症状に乏しいです。女性側は痛くないのでうつしやすくなってしまうわけですな。
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A74 血液 臨床各論
問題
55歳女性。発熱、皮下出血を主訴に来院。特に誘引なく下腿や大腿に紫斑が出現。発熱が長引くため抗菌薬を処方して欲しいと受診した。4年前に乳癌と診断され手術と抗癌化学療法を受けた。その後は外来で経過を見ていたが現在まで再発はない。血液所見:赤血球 280万、Hb 9.0g/dL、Ht 27%、白血球 700、血小板6万、PT-INR 1.3(基準0.9~1.1)、APTT 30秒(基準対照32.2)、血漿フィブリノゲン70mg/dL(基準200~400)、血清FDP 90μg/mL(基準10 以下)、Dダイマー8μg/mL(基準1.0 以下)。骨髄血塗抹 May-Giemsa 染色標本を示す。
この患者に対し抗癌化学療法を行ったところ呼吸困難が出現した。
抗癌化学療法に用いた治療薬はどれか。
- ATRA
- ダサチニブ
- レナリドミド
- メルファラン
- シクロホスファミド
解説
【テーマ】(APL治療後の)ATRA症候群
【正答】a
ATRAによって分化した成熟好中球がサイトカインを放出することで呼吸困難や発熱、浮腫を引き起こすものをAPL分化症候群と呼び、以前はレチノイン酸症候群と呼ばれていた。
発症の際はATRA投与を中止し、副腎皮質ステロイドで好中球の作用を抑える。
【参考】112A16
作問者コメント

ATRA投与のその後、というあまり国試に問われていないものを扱った。解答自体は画像が読めれば可能。
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A75 神経 一般各論
問題
両側顔面神経麻痺がある時に発音しにくい音はどれか。2つ選べ。
- かきくけこ
- がぎぐげご
- たちつてと
- だぢづでど
- はひふへほ
- ぱぴぷぺぽ
- ばびぶべぼ
解説
【テーマ】顔面神経麻痺
【正答】f,g
構音の種類を以下に挙げる。
- 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ):顔面神経障害による口輪筋麻痺で障害される。
- 歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ):舌下神経障害による舌筋麻痺で障害される。
- 口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん):舌下神経障害による舌筋麻痺や迷走神経障害による口蓋筋麻痺で障害される。
- 喉頭音(は行音):舌下神経障害による喉頭筋麻痺で障害される。
選択肢はそれぞれ、以下のように表せる。
- かきくけこ=口蓋音
- がぎぐげご=口蓋音
- たちつてと=歯舌音
- だぢづでど=歯舌音
- はひふへほ=喉頭音
- ぱぴぷぺぽ=口唇音
- ばびぶべぼ=口唇音
したがって、両側顔面神経麻痺では口輪筋が動きにくくなるので、「ぱぴぷぺぽ」「ばびぶべぼ」という口唇音が発声しづらいと考えられる。
作問者コメント

実習中に神経内科の先生が患者さんに「ぱ、た、か」と繰り返し言ってもらっていたのをヒントに作成しました。自分で発音してみると、音の作りの違いに気づくと思います。
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アンケート結果
平均点(削除訂正後)
38点(52.77%)
受験者層
6年生(114回生)が圧倒的多数を占めました。
感想(一部)
「難しかったが勉強になった」という意見が最も多かったです。
- 知らない疾患が出てきて焦った。
- 自分の知識があやふやだと感じた。元来細かい部分を覚え根本的な所を抜かしてしまう気質なので、国家試験レベルはどこで、それを覚えるために有用な知識を取捨選択せねばと痛感しました。実際患者さんを前にしたときに役に立つような頭も、作っておきたいと感じました。
- 簡単すぎず難しすぎず、「分からない感」がちょうどよく、これ解けてないといけないのにな〜!と思う問題がたくさんあった。よい復習ができそうです。
- しらない病名も登場し、少し難しかったが、全体のバランスは良かったです。
- 国試の過去問よりは難しかったです。
- ちょうど良い難しさで考えさせる問題も多かったです。ただ、マイナーの問題の難易度は少し平易な感じでした。
- 良問ぞろいに感じました!難しく感じましたが、一昨日の卒業試験と似ている問題も多く先に受けていたかったです。笑
- 難しかったけど勉強になりました。
- 現場で必要とされる知識が問われているように感じました。
- 病気は分かっても答えが分からない問題が多かった。
- 難しすぎず簡単すぎずでいいぐらいの難易度でした。画像問題がやや少なく感じました。
- 意表を突いた問題で勉強になりました。
- とても考えさせられる問題が多く、自分の知識のアウトプットがまだまだ未熟だと思いました。
- 自大学の卒業試験と同じくらいの難易度だった。
- 一般問題で知識不足を実感した。
- 難しかったですが臨床的な考え方を問われているような気がして解いていて楽しかったです。
- 曖昧な部分や知らない知識を勉強する事ができてよかった。
- 聞いたこともない疾患が選択肢に並んでいて固まった。
- はっきりとわからない感じでとても難しかったです。
良問アンケート
椎間板ヘルニアの部位を臨床文から想像し画像から選ばせるというA67が栄えある一位となりました。