- C1 公衆衛生 一般総論
- C2 公衆衛生 一般総論
- C3 公衆衛生 一般総論
- C4 公衆衛生 一般総論
- C5 公衆衛生 一般総論
- C6 公衆衛生 一般総論
- C7 公衆衛生 一般総論
- C8 公衆衛生 一般総論
- C9 内分泌代謝 一般総論
- C10 公衆衛生 一般総論
- C11 呼吸器 一般総論
- C12 肝胆膵 一般総論
- C13 精神 一般総論
- C14 放射線科 一般総論
- C15 救急 一般総論
- C16 内分泌代謝 一般総論
- C17 公衆衛生 一般総論
- C18 公衆衛生 一般総論
- C19 総論的事項 一般総論
- C20 総論的事項 一般総論
- C21 公衆衛生 一般総論
- C22 公衆衛生 一般総論
- C23 加齢老年学 一般総論
- C24 公衆衛生 一般総論
- C25 公衆衛生 臨床総論
- C26 感染症 臨床総論
- C27 公衆衛生 臨床総論
- C28 中毒 臨床総論
- C29 公衆衛生 臨床総論
- C30 産婦人科 臨床総論
- C31 神経 臨床総論
- C32 小児科 臨床総論
- C33 泌尿器科 臨床総論
- C34 血液 臨床総論
- C35 耳鼻科 臨床総論
- C36 血液 臨床総論
- C37 加齢老年学 臨床総論
- C38 精神 臨床総論
- C39 小児科 臨床総論長文
- C40 小児科 臨床総論長文
- C41 小児科 臨床総論長文
- C42 眼科 臨床総論長文
- C43 眼科 臨床総論長文
- C44 眼科 臨床総論長文
- C45 呼吸器 臨床総論長文
- C46 呼吸器 臨床総論長文
- C47 呼吸器 臨床総論長文
- C48 産婦人科 臨床総論長文
- C49 産婦人科 臨床総論長文
- C50 産婦人科 臨床総論長文
- C51 泌尿器科 臨床総論長文
- C52 泌尿器科 臨床総論長文
- C53 泌尿器科 臨床総論長文
- C54 腎 臨床総論長文
- C55 腎 臨床総論長文
- C56 腎 臨床総論長文
- C57 循環器 臨床総論長文
- C58 循環器 臨床総論長文
- C59 循環器 臨床総論長文
- C60 公衆衛生 臨床総論長文
C1 公衆衛生 一般総論
問題
持続可能な開発のための2030アジェンダ〈SDGs〉について正しいのはどれか。
- 先進国のみを対象とした目標である。
- 目標として8つのゴールが提示されている。
- 政府が主体となるため、民間企業は関与しない。
- 都市開発・エネルギー資源についても目標が定められている。
- ミレニアム開発目標〈MDGs〉より前に提唱された国際目標である。
解説
【テーマ】SDGs(Sustainable Development Goals)
【正答】d
- MDGsは開発途上国を重要視していたが、SDGsは先進国を含むすべての国に適用されるのが最大の特徴。
- 17つのゴールがある。〈1)貧困をなくす、2)飢餓をなくす、3)健康と福祉、4)質の高い教育、5)ジェンダー平等、6)きれいな水と衛生、7)誰もが使えるクリーンエネルギー、8)人間らしい仕事と経済成長、9)産業、技術革新、社会基盤、10)格差の是正、11)持続可能な都市とコミュニティづくり、12)責任ある生産と消費、13)気候変動への緊急対応、14)海洋資源の保全、15)陸上資源の保全、16)平和、法の正義、有効な制度、17)目標達成に向けたパートナーシップ〉。8つのゴールはMDGsであり、108G4に出題がある。
- MDGsが各国政府をはじめとする行政の努力を念頭に置いていたのに対し、SDGsでは企業なども含む世界のすべての人たちが課題解決に主体的に取り組むことを求めている。
- 上述。
- 逆。MDGsの後継としてSDGsが採択された。
作問者コメント

「平成30年版医師国家試験出題基準」より追加された項目の一つに「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下SDGs)がある。これを受け、113C1にてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉についての出題があった。従って今後,SDGsに関する公衆衛生分野の一般問題での出題が予想される。
SDGs(Sustainable Development Goals)は、国連ミレニアム開発目標〈MDGs〉の後継として国連総会で採択された2016年から2030年までの国際目標である。従って、医師国家試験出題基準においてもMDGsと入れ替わる形でSDGsが加わった。
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C2 公衆衛生 一般総論
問題
60~64歳で決められた基礎疾患を持つ人が定期接種可能なワクチンはどれか。
- インフルエンザウイルスワクチン
- 肺炎球菌ワクチン
- 髄膜炎菌ワクチン
- B型肝炎ワクチン
- 風疹ワクチン
解説
【テーマ】ワクチン
【正答】a
- 65歳時に行う。
- 正しい。60~64歳で基礎疾患のある人に向けたワクチンである。
- 任意接種である。
- 0歳で3回定期接種となる。
- 1歳と年長児相当で2回定期接種となる。
【参考】113F26
作問者コメント

113F26オマージュ問題です。
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C3 公衆衛生 一般総論
問題
作業環境管理について正しいのはどれか。
- 管理濃度に基づく改善措置には法的拘束力はない。
- 時間荷重平均〈TWA〉は急性中毒の対策に有用である。
- 許容濃度のすべての指標が基準以下であれば健康被害は生じない。
- 量-反応関係とは、有害物質の負荷量と、集団の健康被害の発生頻度との関係である。
- 短時間暴露限界値〈STEL〉とは作業中どの時点でも超えてはならない限界濃度である。
解説
【テーマ】作業環境管理
【正答】d
許容濃度、管理濃度の指標について。
職場の作業環境空気中の有害物質濃度をあらわす用語に「許容濃度」や「管理濃度」がある。
許容濃度:労働者が週40時間、通常の労働強度で有害物に暴露されても、ほとんどすべての労働者に健康上の悪影響が見られないと判断される濃度。法的拘束力なし。許容濃度の勧告値としては時間加重平均〈TWA〉、短時間暴露限界〈STEL〉、最大許容濃度等がある。
管理濃度:作業環境を管理するために行政によって設定された値。必ずしも科学的な根拠はない。法的拘束力あり。第1管理区分:現環境の維持、さらなる改善、第2管理区分:問題箇所を改善する努力,第3管理区分:早急な改善が必要
許容濃度 | 管理濃度 | |
評価の対象 | 人への暴露濃度 | 職場の濃度 |
対象とする測定等 | 個人暴露モニタリング | 作業環境測定 |
評価の目的 | 人への悪影響を最小限にすること 時間加重平均〈TWA〉、短時間暴露限界〈STEL〉、最大許容濃度が勧告値 | 環境や作業方法の改善の必要性の判断 管理区分を決定するための指標 |
法的規制 | なし 学会による勧告に過ぎない | あり 行政が管理している 労働安全衛生法 |
勧告、告示者 | 日本産業衛生学会等 (勧告) | 厚生労働大臣 (告示) |
- 作業環境管理に必要な情報は、作業環境測定(作業環境測定士が行う)によって得られる。その結果を受けて管理区分が決定され、必要な措置が講じられる(103G51)。これは対象物質により細かく規定が異なるが、いずれにせよ法的な拘束力がある。法的拘束力がないのは許容濃度。
- 時間加重平均値は、長時間の繰り返し暴露でも健康影響のない平均濃度であり、慢性中毒の対策に有用。逆に最大許容濃度(超えてはならない)は急性中毒の対策に有用。
- 暴露限界の定義にもあるように対象は「ほとんど全ての人」であり、ほとんど全ての人に該当しない一部の人にとっては、この値以下でも健康障害を起こすことがある。 また「著しい健康障害を起こさない」ものであり、著しくない健康障害であれば誰もが起こす可能性があるということになる。
- 有害性の評価は、暴露限界値を用いる。この暴露限界値は量-影響関係と量-反応関係の曲線をもとに算出する。量-影響関係は有害物質の負荷量と個体への影響の強さの関係であり、量-反応関係が有害物質の負荷量と集団の健康被害の発生頻度との関係である。
- 短時間暴露限界値は最大許容濃度と時間荷重平均値の中間的なもの(1回15分以内、1日4回以内)である。
【参考】103G51、103E33
作問者コメント

労働安全衛生管理に関する出題である。本問に出ている作業環境管理,許容濃度、管理濃度はいずれも国家試験出題基準の小項目に明記されている用語で、いつ国家試験に出てもおかしくはない。定義をしっかり復習されたい。許容濃度とは、労働者に悪影響がみられないと判断する濃度のこと。管理濃度とは、作業場の管理区分決定のための濃度のこと。
予想正答率:30%
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C4 公衆衛生 一般総論
問題
運動療法を行うのが最も相応しいとされるのはどれか。
- 閉経後骨粗鬆症の患者
- 空腹時血糖270 mg/dLの糖尿病患者
- 安静時疼痛のある閉塞性動脈硬化症の患者
- 糖尿病性腎症による蛋白尿をきたしている患者
- 慢性閉塞性肺疾患に肺炎球菌による肺炎を合併した患者
解説
【テーマ】運動療法
【正答】a
- 良い適応。
- 血糖コントロールが不良な場合、運動療法は禁忌となる。
- 間欠性跛行がある場合、良い適応である。しかし、安静時疼痛がある場合、かなり進行しており手術などを考えた方が良い。
- 蛋白尿をきたしている場合、相応しくない。
- COPDが急性増悪した場合、運動療法は不適切。
作問者コメント

運動療法に関する出題が増えているなと思ったこと、糖尿病はもちろんだが骨粗鬆症やASOにも関係してくる事項ということで縦で整理していく目的で出題しました。
【作問者をフォロー】だんでら医おん(Twitter)
C5 公衆衛生 一般総論
問題
ロービジョンケアについて誤っているのはどれか。
- 福祉制度の利用を行う。
- 視覚障害者同士の情報交換を行う。
- 特別支援学校への進学を考慮する。
- 視覚の利用を諦め他の感覚を用いる。
- 生活改善手段として点字などを用いる。
解説
【テーマ】ロービジョンケア
【正答】d
ロービジョンとは、視力が不十分なために日常生活が不自由である方を指す。
ロービジョンケアとは、ロービジョンの方に対して医療的、教育的、職業的、社会的、福祉的、心理的、など様々な面から行われる支援のことを指す。
視覚に障害があるため生活に何らかの支障を来している人に対する医療的、教育的、職業的、社会的、福祉的、心理的等すべての支援の総称である。発達・成長期にある小児に必要なハビリテーションあるいは主に成人の中途障害に対応するリハビリテーションを目的とする。
より良く見える工夫の例
- 視覚補助器具や照明などの活用や視覚以外の感覚の活用:音声機器や触読機器
- 情報入手手段の確保:ラジオ、テレビ、パソコン
- 公共施設の活用:点字図書館、生活訓練施設の利用
- 進路の決定:特別支援学校への進学、職業訓練施設の利用
- 福祉制度の利用:身体障害者手帳や障害年金の取得
- 情報交換:関連団体や患者交流会の紹介
作問者コメント

出題基準変更後、まだ外れ選択肢にも出てきていない疾患や概念に関しては、本問のように単語から推測できれば十分である。一方で、新しく出題基準が変更されてから3回目の国家試験であることをふまえ、112回、113回と外れ選択肢に登場していた疾患や概念に関しては各々で詳しくまとめておいてもらいたい。
【作問者をフォロー】医学エンタメくん(Twitter)
作問者コメント

ロービジョンケアは医学総論、身体障害のリハビリテーションの小、中項目として追加されました。実習で見た器具を当てさせるような臨床に準じた問題が増えているためインターネットでロービジョンケアに使う器具を目に入れておくと良いと思います。
【作問者をフォロー】ま(Twitter)
C6 公衆衛生 一般総論
問題
『難病法』による「指定難病」について誤っているのはどれか。
- 長期の療養を必要とする。
- 発病の機構が明らかでない。
- 治療方法が確立していない。
- 患者数が日本国内で一定数に達している。
- 診断に際し、客観的な指標による一定の基準が定まっている。
解説
【テーマ】難病法
【正答】d
『難病法』は2015年1月に施行され、難病医療は法に基づく公費負担医療となりました(難病医療費助成制度)。さらに、対象疾病が従来の56疾患から306 疾患に拡大し、受給者数は約78万人(2011年度)から約150万人(2015年度)へと、大幅な増加が見込まれている。『難病法』は他に難病医療に関する調査・研究の推進や療養環境の整備、患者の自立支援の推進などについても定めており、総合的な難病対策を目指している。
『難病法』による「指定難病」は
- 発病の機構が明らかでない
- 治療方法が確立していない
- 長期の療養を必要とする
- 患者数が日本国内で一定の人数に達しない
- 診断に関し、客観的な指標による一定の基準が定まっている
という基準がある。
指定難病の中でも患者数が多い著名な疾患としては、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎・多発性筋炎、クローン病など。
作問者コメント

難病法は児童福祉法や生活保護法、介護保険法などの国試頻出の法律と同じ中項目に追加されました。また実臨床で難病法に関する疾患に関わる機会も多いので学生に学ばせたい項目の1つだと思います。
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C7 公衆衛生 一般総論
問題
正しいのはどれか。2つ選べ。
- 作業環境管理は労働基準法で定められている。
- タバコの副流煙にはダイオキシン類が含まれる。
- 一酸化炭素はメトヘモグロビン血症の原因となる。
- 酸素濃度5%のところで呼吸すると直ちに昏倒する。
- 癌原性物質に暴露される環境に従事する者には在職中健康管理手帳が交付される。
解説
【テーマ】労働衛生
【正答】b,d
- 労働者の健康管理は労働基準法で規定されている(97G12のe)。産業医の職務に労働者の健康管理がある(110E14)。
- ダイオキシンは焼却炉やタバコの煙から発生する(99D34のb)。
- メトヘモグロビン血症はいわゆるチアノーゼである。混同しないように。
- その通り。
- 在職中ではなく、離職時(または離職後の申請時)である。
【参考】110E4、107E31
作問者コメント

労働衛生に関する出題である。予想正答率:60%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
C8 公衆衛生 一般総論
問題
診断したあと直ちに届け出る必要があるのはどれか。3つ選べ。
- 麻疹
- 水痘
- 疥癬
- 結核
- A型肝炎
解説
【テーマ】届け出
【正答】a,d,e
過去問の常連といえば直ちに届け出であるが、少し意図して意地悪なものにしました。
必要な知識として麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症は5類感染症の中でも直ちに届け出であることと4類以上の感染症は直ちに届け出が必須なことです。
- 麻疹:5類(直ちに届け出)
- 水痘:5類
- 疥癬:含まれない
- 結核:2類
- A型肝炎:4類
作問者コメント

今回出題した疥癬が4類感染症に該当しないことが把握できれば回答は可能です。疥癬はネタで使われることも多いため、知らなかった学生には難問であったと思います。A型肝炎は4類の常連なのでそれを知っていれば解けます。
【作問者をフォロー】朱雀(Twitter)
C9 内分泌代謝 一般総論
問題
血清総コレステロール320mg/dL、トリグリセライド120mg/dLである患者の血清脂質異常を改善する薬として最も考えにくいのはどれか。
- スタチン
- プロブコール
- ベザフィブラート
- イコサペント酸エチル
- ニコチン酸トコフェロール
解説
【テーマ】脂質異常症治療薬
【正答】d
総コレステロール高値・TG正常値から、高LDL血症を改善する薬がこの患者にとってふさわしいと考えられる。
脂質異常症治療薬としては、スタチン、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブなど)、陰イオン交換樹脂、プロブコール、多価不飽和脂肪酸(イコサペント酸エチルなど)、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸トコフェロールなど)、フィブラートなどがある。
基本的には高LDL・高TG血症どちらに対しても有効だが、例外としてプロブコールは高LDL血症の改善のみ、イコサペント酸エチルは高TG血症の改善のみに有効である。
したがって、高TG血症のみを改善するイコサペント酸エチルは、TGが正常値であるこの患者にとって血清脂質異常を改善するのに有効でないと考えられる。
【参考】102E53
作問者コメント

スタチンとフィブラートの副作用が横紋筋融解症、他の薬は消化器症状が多いということも覚えておきましょう。
【作問者をフォロー】 ちちもげ(Twitter)
C10 公衆衛生 一般総論
問題
学校医の職務はどれか。
- 学校感染症による出席停止決定
- 学校プールの水質検査
- 避難訓練の指揮
- 学級閉鎖指示
- 職員健康診断
解説
【テーマ】学校保健
【正答】e
職員の健康診断は学校医の職務に該当する。
aは学校長、bは学校薬剤師、cについては特に規定はなく、dは学校設置者の職務である。
【参考】110B24
作問者コメント

学校医の職務については過去数回出題あり頻出である。
【作問者をフォロー】 たかぴ先生(Twitter)
C11 呼吸器 一般総論
問題
以下の文の中で誤っているのを選べ。
- 細気管支に気管支腺は存在する。
- 主気管支の分岐角度は左が大きい。
- 細気管支から末梢では軟骨を認めない。
- 終末細気管支は呼吸細気管支に分岐する。
- Ⅱ型肺胞上皮細胞は肺サーファクタントを産生する。
解説
【テーマ】呼吸器系の解剖
【正答】a
- 細気管支に気管支腺は存在しません。
- 主気管支の分岐角度。右が小さいということばっかり頻出していますが、それなら当然左は大きいです。
- 細気管支からは細かく分岐するために軟骨が消えます。加えて気管支腺も消えます。
- 終末細気管支は気管支の終わりではありません!ややこしいですね。終末細気管支の終末は「呼吸と無関係の終わり」「線毛の終わり」の二つの終わりと覚えましょう。
- 正しいです。
作問者コメント

この問題だけでなく、基本的にそうなんですけど僕が嫌いな範囲を出してます。インテリジェンス自爆テロです。もはや。国試の範囲を逸脱していないとは思いますし、解剖の知識は多くの点数へとつながると思うので作問しました。
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C12 肝胆膵 一般総論
問題
多血性の膵腫瘍はどれか。2つ選べ。
- 膵管癌
- 漿液性嚢胞腫瘍
- 粘液性嚢胞腫瘍
- 膵神経内分泌腫瘍
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍
解説
【テーマ】多血性膵腫瘍
【正答】b,d
dの膵神経内分泌腫瘍はすぐに選べると思う。内分泌性の腫瘍であるため、血管増生が顕著であるためである。もう一つが何かで、b, c, eの三択で迷うと思われる。もう一つは漿液性嚢胞腫瘍(以下SCN)である。知らなくてもcとeは「粘液」であり、bだけ「漿液」であることから仲間外れを選ぶ選び方もある。またSCNが蜂巣状の多発小嚢胞の集簇を認めることを知っていれば、表面積が広がることから血管が多くないと栄養できないと考えても解答に至りうる。
SCNは造影CTで早期から濃染される多血性腫瘍として描出されるので、膵神経内分泌腫瘍(以下PNET)に酷似する。しかし超音波内視鏡検査でPNETは低エコー腫瘤に対してSCNは髙エコー腫瘤として描出されるので鑑別が可能。year noteにも「《造影CT》隔壁が濃染され」とあり、これが多血性であることを示唆する。
【参考】109I16
作問者コメント

捨て問である。が、試験中は当然正答率などわからない。いかに捨て問と認識できるかが勝負。予想正答率:10%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
C13 精神 一般総論
問題
ある患者に行った心理検査の一部を示す。
この検査法と同じ方法の性格検査はどれか。2つ選べ。
- P-Fスタディ
- Rorschachテスト
- 内田クレペリン作業検査
- 簡易精神症状評価尺度〈BPRS〉
- 矢田部-Guilford〈Y-G〉性格検査
解説
【テーマ】投影法
【正答】a,b
患者に行った検査は、文章完成テスト〈SCT〉である。したがって、投影法による性格検査を選ぶ。
- 正解。P-Fスタディ(絵画欲求不満テスト)も投影法の検査である。ある人が怒られたり責められたりしているシチュエーションのイラストを見せて、その人がどう答えるかということを想像して記入してもらう。
- 正解。Rorschachテストは、投影法として有名なものである。被験者にインクのしみを見せて何を想像するかを述べてもらう。
- 内田クレペリン作業検査は、作業評価法である。ひと桁の足し算を時間内に出来るだけ行う。
- 簡易精神症状評価尺度〈BPRS〉も、幅広く精神を評価する検査である。こちらは口頭で質問する。
- 矢田部-Guilford〈Y-G〉性格検査は、幅広く精神を評価する検査である。質問紙法にあたる。
※ポリクリで行ったちちもげのY-G検査の結果
【参考】理学療法士国試
作問者コメント

Y-G検査の質問数は120問です。解いてる途中で飽きてきました…。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
C14 放射線科 一般総論
問題
放射線の外照射治療の適応となることが最も少ないのはどれか。
- 乳癌
- 大腸癌
- 膵臓癌
- 甲状腺癌
- 転移性肝癌
解説
【テーマ】放射線外照射
【正答】b
- 乳癌は腺癌であるが放射線治療の良い適応。術後放射線や再発時など。
- 正しい。大腸癌(一部直腸癌などを除く)では、基本的には放射線治療の適応とはならない。
- 術前化学放射線療法など。癌縮小効果の他に、膵臓背部に存在する神経叢への浸潤を緩和して、疼痛を抑制する効果も期待できる。
- 放射性ヨード内服療法が印象的だが、未分化癌や悪性リンパ腫に対しては外照射を行う。乳頭癌や濾胞癌では、手術で腫瘍を取りきれない場合や骨転移などの症状緩和目的に行う。
- 陽子線治療の適応がある。
作問者コメント

線量分布図って厨二心くすぐりません?(一瞬放射線科志望になりかけた作問者より)
【作問者をフォロー】アンキパン(Twitter)
C15 救急 一般総論
問題
爆発などで生じる圧力波による一次爆傷を受けやすいのはどれか。
- 脳
- 肺
- 胸椎
- 心臓
- 脾臓
解説
【テーマ】爆傷
【正答】b
爆傷分類は、1次:爆圧波、2次:飛散物、3次:飛ばされ・たたきつけられ・倒壊下敷き、4次:熱傷・放射線曝露である。即死でない被害者の死因トップである爆傷肺は特に注意すべきであり、無呼吸・徐脈・血圧低下が臨床的3徴候で、胸部X線撮影での典型像は「butterfly shadow」である。
【参考】112C5、109H28
作問者コメント

3月に第46回日本集中治療医学会学術集会が開かれた。そこでは現場近隣の救急医療機関にとって一刻も早い通報が死活的に重要になると強調された。消防、警察との緊急通報共有の重要性が叫ばれた。2020年には東京オリンピックが開催され、爆破テロが起きないとも限らない。爆傷に関する知識は重要性を増すだろう。予想正答率:70%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
C16 内分泌代謝 一般総論
問題
糖尿病の治療薬と副作用の組み合わせのうち誤っているのはどれか。
- SGLT2阻害薬-心不全
- チアゾリジンー体重増加
- スルホニルウレア薬-低血糖
- α-グルコシダーゼ阻害薬-放屁
- ビグアナイド薬-乳酸アシドーシス
解説
【テーマ】糖尿病の治療薬
【正答】a
- 誤り。SGLT2阻害薬は、むしろ心不全を改善するとされている。副作用は尿路感染が有名。
- チアゾリジンは、副作用として体重増加や心不全の増悪をきたす。
- スルホニルウレア薬は、副作用として低血糖をきたす。
- α-グルコシダーゼ阻害薬は、副作用として放屁のほか、腹部膨満や下痢をきたす。
- ビグアナイド薬は、重篤な副作用として乳酸アシドーシスをきたす。特に大量アルコール摂取やヨード造影剤の併用でおこりやすい。
作問者コメント

DPP-4阻害薬とSGLT阻害薬は、心不全を改善するとされており、近年のトピックです。114回に出題されたら褒めてください。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
C17 公衆衛生 一般総論
問題
身体障害者と認定されないのはどれか。
- 聴覚障害者
- 肢体不自由者
- 生殖機能障害者
- ペースメーカー埋込者
- ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉による免疫機能障害者
解説
【テーマ】 身体障害者
【正答】c
身体障害の範囲は「身体障害者福祉法」で定められている。細かい内容まで覚える必要はないが、HIVによる免疫障害者やペースメーカーを埋め込んだ方には、身体障害者手帳が交付されることは知っておくとよい。生殖機能障害は、確かにとても大変な状態だが、これで身体障害者手帳が交付されてバス代が割引になるようなことはない。対象は①視覚障害、②聴覚障害・平衡機能障害、③音声・言語障害(咀嚼障害を含む)、④肢体不自由、⑤内部障害(心や腎臓など臓器)の5種類に分類される。
【参考】99D9、85A100
作問者コメント

障害者保健に関する出題である。予想正答率:70%
【作問者をフォロー】れお(Twitter)
C18 公衆衛生 一般総論
問題
特定機能病院について正しいものはどれか。
- 救急科は必須である。
- すべて大学病院である。
- 集中治療室は必須である。
- 健康保険法に規定されている。
- 特定疾患患者の診療を目的とする。
解説
【テーマ】特定機能病院
【正答】c
救急科は必須ではなく、大学病院以外の施設で救急科の無い病院が含まれている。
救急医療提供を必須としているのは地域医療支援病院。特定機能病院と地域医療支援病院は共に医療法に規定されている。
【参考】111G24
作問者コメント

2019/4/1に群馬大学医学部附属病院が特定機能病院に再承認された。特定機能病院と地域医療支援病院の違いについては押さえておきたい。
【作問者をフォロー】 たかぴ先生(Twitter)
C19 総論的事項 一般総論
問題
一般的な化学療法において、骨髄抑制による血球減少が最大となる時期はどれか。
- 1~2日
- 5~6日
- 10~12日
- 18~21日
- 25~30日
解説
【テーマ】骨髄抑制による血球減少
【正答】c
多くの抗がん剤では投与後7~14日に白血球減少のピークを迎えると言われています。体内の血球数が一番少ない数になった状態をnadir(ナディア)といいます。
【参考】100D49
作問者コメント

nadirって言葉、厨二心くすぐりません?(実習で頻用していた作問者より)
【作問者をフォロー】アンキパン(Twitter)
C20 総論的事項 一般総論
問題
イラストが示す結紮法はどれか。
- Half knot
- Square knot
- Granny knot
- Surgeon’s knot
- Double half knot
解説
【テーマ】縫合結紮
【正答】d
- ひと結びとも呼ばれる。最もシンプルな結び方。
- 男結び、本結びとも呼ばれる。Half knotの後に反対方向にもう一度Half knotを行う。
- 女結び、縦結びとも呼ばれる。Half knotの後に同じ方向にもう一度Half knotを行う。
- 外科結びとも呼ばれる。Double half knotの後に反対方向にHalf knotを行う。
- 2度捻ったひと結び。
ちなみに三重結びはDouble half knotの後にSquare knotを行ったもの。
作問者コメント

ホリカもポリクリで色々な結紮を習ったよ。速く結べると、なんかカッコイイよね!シュッ!
【作問者をフォロー】医学生Vtuberホリカ(Twitter)、バーチャル医学生チャンネル
C21 公衆衛生 一般総論
問題
がん抑制遺伝子でないのはどれか。
- BRCA2
- HER2
- WT1
- NF1
- VHL
解説
【テーマ】がん抑制遺伝子
【正答】b
- がん抑制遺伝子。乳癌でみられる。
- がん遺伝子。乳癌や胃癌でみられる。
- がん抑制遺伝子。ウィルムス腫瘍でみられる。
- がん抑制遺伝子。神経線維腫症でみられる。
- がん抑制遺伝子。von Hippel-Lindau病でみられる。
作問者コメント

近年分子標的薬が台頭してきているため、標的とする遺伝子変異は国試で狙われるかもしれないと思って作りました。
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C22 公衆衛生 一般総論
問題
産科医療補償制度に関して誤っているのはどれか。
- 補償金の総額は3000万円である。
- 重度の脳性麻痺が補償対象となる。
- 妊産婦が分娩機関を通して申請する。
- 産婦人科の訴訟件数は増加している。
- 医師の過失の有無に関わらず補償金を支払う。
解説
【テーマ】産科医療補償制度
【正答】d
産科医療補償制度は、産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保を背景に、より安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、以下の目的で創設されました。
- 分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児とその家族の経済的負担を速やかに補償します。
- 脳性麻痺発症の原因分析を行い、同じような事例の再発防止に資する情報を提供します。
- これらにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ります。
制度の運営主体である日本医療機能評価機構が、制度に加入している分娩機関から掛金を集め、損害保険会社に保険料を支払い、保険契約(被保険者は分娩機関)。補償対象となるのは、以下の3つの条件をすべて満たした児。
- 出生体重1,400g以上かつ、在胎週数32週以上(または在胎週数28週以上で所定の要件を満たす)
- 先天性や新生児期の要因によらない脳性麻痺
- 身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺
生後6ヶ月未満で亡くなられた場合は、補償対象とならない。
補償対象に該当する場合、妊産婦は分娩機関を通して、日本医療機能評価機構に申請書を提出します。補償対象であると認定されると、以下の金額が保険金より支払われます。準備一時金(600万円)+補償分割金(年120万円×20回)=3,000万円全診療科目合計でも近年、訴訟件数は減少傾向にあるが、産婦人科は特に目立って減少している。
【参考】産科医療補償制度
作問者コメント

産科医療補償制度は必修の医療事故やインシデントなどと同じ中項目に追加されました。初出題で深い内容が問われるとは考えにくいですが大まかな内容は押さえておくと良いと思います。
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C23 加齢老年学 一般総論
問題
嚥下機能検査について誤っているのはどれか。
- 反復唾液飲みテストでは被検者の嚥下を喉頭の触診により判断する。
- 嚥下内視鏡検査では嚥下時に内視鏡のホワイトアウトがおこる。
- 水飲み検査では舌の上に水を入れてから嚥下させる。
- フードテストでは茶さじ一杯ほどのプリンを用いる。
- 嚥下造影検査では造影剤としてバリウムを用いる。
解説
【テーマ】嚥下機能検査
【正答】c
- 反復唾液飲みテストは時間内に出来るだけ被験者に嚥下してもらう。被検者の嚥下は、検査者が被検者の喉頭に指を当てて、触診により判断する。
- 内視鏡のホワイトアウトとは、嚥下時にカメラの視界が一瞬真っ白になることをいう。
- 誤り。水飲み検査では舌を挙上してもらい、その下に水を入れてから嚥下させる。直接舌の上に水を流し込むと、そのまま咽頭に流れ込み、むせてしまうリスクがある。
- フードテストでは茶さじ一杯ほどのプリンを用いて、嚥下してもらう。
- 嚥下造影検査では消化管造影と同じく、造影剤としてバリウムを用いる。
作問者コメント

摂食嚥下訓練を行うのは言語聴覚士です。必須知識。
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C24 公衆衛生 一般総論
問題
UHC〈ユニバーサルヘルスカバレッジ〉実現のための具体的活動について誤っているのはどれか。
- 男女平等の促進
- 僻地へのワクチン普及
- 公的保険のカバー率増進
- 精神疾患患者の入院促進
- 初期診療可能な診療所整備
解説
【テーマ】UHC〈ユニバーサルヘルスカバレッジ〉
【正答】d
世界保健機関(WHO)によれば、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態を指すため、それに見合っているa,b,cは正しい。
UHC実現のためには健康を直接改善させるだけではなく社会インフラの改善も手段として含まれているためe.も正しい。
d.については、過剰もしくは不要な保健医療サービスとなるの可能性もあるため誤りとする。
【参考】113C1
作問者コメント

H30年版の医師国家試験出題基準で追加された項目についての設問。113回ではこれについて取り組む国際機関を問われている。次回問われるとすればUHCの中身の方になるだろうと予想。
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C25 公衆衛生 臨床総論
問題
以下の文章は、ある男性の自殺の顛末に関する場面の描写である。
下線部①~⑤のうち、自殺の典型的パターンとして多いものに当てはまらないのはどれか。
42歳(①)男性。東北地方にて、妻と二人の子供と暮らしている(②)。4月上旬に会社からリストラされ、無職(③)となった。以降抑うつ状態が続いており、精神科にてうつ病と診断された。5月3週目の金曜日(④)の夜に、リビングのドアノブにネクタイを巻き付けて首をかけた状態で意識を失っているところを妻が発見した。男性はすでに亡くなっており、異状死体として司法解剖がなされ、縊頸(⑤)による自殺と判断された。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説
【テーマ】自殺
【正答】d
自殺の典型的パターンは以下の通り。
- 40~70歳(40代ピーク)に多い
- 男性:女性=7:3
- 自殺率は東北、自殺数は東京で多い
- 単身者よりも、同居人(家族など)のいる者に多い
- 職のないものに多い
- うつ病などの健康問題が理由となることが多い
- 3~5月に多い
- 月曜日に多い
- 手段は縊頸(いっけい:首吊りのこと)が多い。練炭は次点。
したがって、典型的でないものはdの「金曜日」である。
作問者コメント

日本の年間自殺者数は、もうすぐ2万を切るみたいだよ。2009年のピーク(3万)からは考えられないほど減ったんだ。厚〇省も鼻が高いよね。
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C26 感染症 臨床総論
問題
64歳の男性。3週間前からイソニアジド、リファンピシン、エタンブトールおよびピラジナミドの4剤で肺結核治療を開始した。特記すべき症状はない。抗結核薬内服前後の血液生化学データを示す。
3週間前 (治療開始前) | 2週間前 | 1週間前 | 本 日 | |
総ビリルビン | 0.8 mg/dL | 0.9 mg/dL | 1.0 mg/dL | 1.1 mg/dL |
AST | 22 IU/L | 20 IU/L | 70 IU/L | 188 IU/L |
ALT | 16 IU/L | 14 IU/L | 96 IU/L | 222 IU/L |
ALP(基準115~359) | 218 IU/L | 222 IU/L | 244 IU/L | 286 IU/L |
γ-GTP(基準8~50) | 72 IU/L | 68 IU/L | 70 IU/L | 88 IU/L |
対応として正しいのはどれか。
- ピラジナミドのみ中止する。
- 抗結核剤4剤すべてを継続する。
- 抗結核剤4剤すべてを中止する。
- イソニアジドのみの単剤治療を行う。
- リファンピシンのみの単剤治療を行う。
解説
【テーマ】抗結核薬の副作用
【正答】c
a:抗結核薬の第一選択薬(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール)の中で、最初の3つ(INH、RFP、PZAなど略記が三文字のもの)は副作用に肝毒性の可能性があり、特にピラジナミドは最も肝毒性を起こしやすい。
b:禁忌肢である。肝機能障害が悪化する。
c:異常値が出現した場合、薬剤中止の判断は自覚症状の有無で変わってくる。
①自覚症状がない場合(本症例はこれに該当):ASTまたは ALT値が基準値 上限の5倍以下(概ね150 IU/L)であれば、肝機能検査を1週間ごとに繰り返し、上昇傾向がなければ抗結核剤はそのまま継続する。ASTまたはALT値が基準値の5倍以上となった場合には全抗結核薬を中止する。また、AST、ALT値にかかわらず、総ビリルビン値が2mg/mL以上となった場合には中止する。
②自覚症状がある場合:ASTまたは ALT値が基準値上限の3倍以上になればすべての薬剤を中止する。また、ASTまたはALT値が基準値上限の3倍未満であっても、その患者の治療前値(基礎値)から3倍以上になっている場合、数値の上昇が急な場合にもすべての薬剤を中止するのが安全である。また、AST、ALT値にかかわらず、総ビリルビン値が2mg/mL以上となった場合には中止する。
中止後は肝機能検査を概ね1週ごとに繰り返す。抗結核剤による肝障害は、多くの場合原因薬剤を中止すれば特に治療を行わなくても2週間程度で正常化することが多い。なお、抗結核剤中止後も1週間程度は検査値が上昇を続けることがあるが、上昇傾向が緩やかになっていれば更なる悪化の危険性は低い。
d, e:耐性化を起こす恐れがあるため、原則多剤併用療法で直接服薬確認療法(DOTS)を行う(105G29)。標準治療に使用される抗結核薬のうち、リファンピシンとイソニアジドが最も強い抗結核作用を持つため、これら二剤に耐性をもつ結核菌を多剤耐性結核菌と呼ぶ(第60回臨床検査技師国家試験午後問題60)。最も耐性を起こしにくいのがリファンピシンである。
【参考】112C62、105G29、100H8、第60回臨床検査技師国家試験午後問題60
Saukkonen JJ, Cohn DL, Jasmer RM, et al. An official ATS statement: hepatotoxicity of antituberculosis therapy. Am J Respir Crit Care Med. 2006; 15: 174. 935-952.
日本結核病学会治療委員会 抗結核薬使用中の肝障害への対応について Kekkaku Vol. 82, 2007; 2. 115-118.
作問者コメント

全国の年間新規登録患者数は2019年現在では1.5万人強。患者数は減少傾向にあり、今後も減っていくことが予想される(107B31)。しかし、依然として我が国は結核の蔓延国であり、結核に関する問題は今後も出題されるだろう。予想正答率:50%
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C27 公衆衛生 臨床総論
問題
73歳の女性。易疲労感のため、心配した夫に付き添われて来院した。1年ほど前から訳もなく疲れた感じがしており、以前は趣味だった散歩もやめて家に引きこもっている。T字杖を用いて歩行しているが、最近しっかりと掴めないという。身長158cm、体重48kg。以前と比べて食が細くなってきており、半年前と比べて体重が5kg減少しているが、筋肉量自体にに低下はみられない。既往歴・家族歴に特記すべきことはない。
この患者に最も当てはまる状態はどれか。
- 悪液質
- フレイル
- 廃用症候群
- サルコペニア
- ロコモティブシンドローム
解説
【テーマ】フレイル
【正答】b
- 悪性腫瘍や白血病に罹患していないため、考えにくい。
- 正しい。体重減少、筋力低下、疲労感、日常生活運動運動量の減少があることから、最も考えやすい。(身体的フレイルの診断基準も満たしている)
- 寝たきりではないため、考えにくい。
- 筋力低下はあるが、筋肉量の低下はみられないめ、考えにくい。ちなみにこの症例のように筋肉量の低下を伴わない筋力低下がある状態を「ダイナペニア」といいます。
- 具体的な運動器障害がないため、考えにくい。ちなみに具体的な運動器「障害」によるものはロコモティブシンドローム、運動器「疾患」によるものは運動器不安定症と、使い分けられています。
作問者コメント

加齢老年学のキーワード詰込みセットです。
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C28 中毒 臨床総論
問題
55歳の男性。農業に従事している。自宅の納屋でぐったりしているところを家族に発見され救急搬送された。会話は可能で、農作業に使っている殺虫剤を飲んだという。
正しいのはどれか。2つ選べ。
- 治療はPAMを投与する。
- 瞳孔の散大がみられる。
- 高圧酸素療法の適応である。
- 血清コリンエステラーゼが低下している。
- 予後が極めて不良であることを家族に伝える。
解説
【テーマ】有機リン中毒
【正答】a,d
有機リン中毒が疑われる。
有機リンはパラチオン、スミチオン、マラチオン、フェニトロチオンなど(~チオン)があり、主に農薬などの殺虫剤に含まれている。生体に吸収されると肝臓で酸化され、p-s結合からより毒性の強いp-o結合となる。これがコリンエステラーゼの作用を阻害して、神経終末でアセチルコリンの分解を阻害する。神経伝達物質としてのアセチルコリンの存在部位は,副交感神経節後線維終末(ムスカリン受容体)、神経筋接合部(ニコチン様受容体)などで、これらコリン作動性の神経系の過度な刺激症状が様々な臨床症状として現れる。
- 頻出。治療は特異的拮抗薬であるヨウ化プラリドキシム〈2-pyridine aldoxime methiodide;PAM〉や硫酸アトロピンである(111A56、107G65、104D51)。アトロピンは、ムスカリン様受容体におけるアセチルコリンの作用を競合的に阻害する拮抗薬で、気道の分泌物を乾燥させ、気管支を拡張させる。PAMは、有機リン剤によってリン酸化され不活化したコリンエステラーゼ活性を回復させる特異的拮抗薬である。酵素が不可逆的な変化を受ける前、すなわち通常24~36時間以内に投与することが推奨される。
- 有機リンは副交感神経症状をきたすため、縮瞳する(散瞳ではない!)ことは頻出である(104G21、103E5、100H28)。ムスカリン様作用によって分泌系は亢進し発汗、鼻汁、流涎がみられ、ニコチン様作用によって筋線維束性攣縮、けいれんがみられ、また中枢神経症状もみられることもおさえておこう(110B59、104G21)。
- 高圧酸素療法の適応は一酸化炭素中毒,減圧症,ガス壊疽,突発性難聴,網膜動脈閉塞症などがある(101B119)。
- 107G64のeにも出題がある。111A56では問題文中のコリンエステラーゼが0 U/Lとなっているため、確認されたい。なお,血清コリンエステラーゼは厳密にはその活性を検査しているが、検査用語としてはあまり区別せずに表記されている。
- 一般に予後は不良で、長く後遺症に苦しむ方も多いことから見通しを厳しめに伝えることはあるが、それでも搬入時点で極めて予後不良と断定するには根拠が足りない。
【参考】111A56、110B59、109G58、107G65、104G21、104D51、103E7、103A60、101B119、100H28
作問者コメント

有機リン中毒は超頻出である。余談だが、筆者は昨年東南アジアで実習をした際にパラコート患者を経験した。アジアの田舎では有機リンによる中毒は大きな問題であり、アジアでは毎年50万人の自殺者のうち60%は農薬による。このうち2/3の20 万人の死亡は有機リンによると思われる。自殺でなくうっかりと起こる有機リン中毒(unintentional poisoning)では死亡は少ない。109G58にもあるが、有機リンをはじめサリンやパラコートなどは経皮吸収されるため、農薬などの中毒疑いで救急搬送された患者に安易に素手で触ってはいけないことはもちろん、ラテックスも浸透するため、換気を十分にし防護服で全身を覆って対応すべきだ。アジアの田舎の病院ではスタッフも装備も十分でなく死亡率は15~30%に上ると見られる。また、有機リン製剤のなかにはメタノールを含有するものがあり、メタノール分析の併用を考慮するとよい。予想正答率:85%
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C29 公衆衛生 臨床総論
問題
70歳の男性。脳梗塞後の片麻痺があり、要支援の介護サービスを受けている。患者の家族が「介護保険制度を利用して、ある福祉用具をレンタルしたい」とケアマネージャーに問い合わせたところ、「要介護の認定がないと、その福祉用具は借りられない」との返答があった。
この患者の家族がレンタルしようとしている福祉用具はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説
【テーマ】福祉用具
【正答】a
- 車椅子:要介護からしかレンタル出来ない。
- シルバーカー:介護保険でレンタル出来ない。
- 松葉杖:要支援でもレンタル可能。
- 4点杖:要支援でもレンタル可能。
- T字杖:介護保険でレンタル出来ない。
作問者コメント

介護度が重くないと使えなさそうなものを想像しましょう。
【作問者をフォロー】ちちもげ(Twitter)
C30 産婦人科 臨床総論
問題
38歳の1回経産婦。前回の分娩は経膣分娩であった。妊娠36週0日。少量の性器出血と軽い下腹部痛を主訴に来院した。身長154cm、体重60kg、血圧188/122mmHg、子宮底長30cm、内診で子宮口は閉鎖している。腟分泌物は少量、淡血性である。破水はしていない。腹部超音波検査では腹殿位、胎児推定体重1,500g、羊水指数〈AFI〉5cm、胎盤は子宮底から子宮前壁に認め内子宮口から離れている。胎盤後血腫は認めない。緊急帝王切開術を行うこととなった。
胎児心拍数陣痛図を別に示す。
手術室へ向かうまでの処置として最も適切なのはどれか。
- αメチルドパ経口投与
- エルゴメトリン点滴静注
- 塩酸ヒドララジン経口投与
- ニカルジピン経口投与
- ニカルジピン持続点滴静注
解説
【テーマ】妊娠高血圧緊急症
【正答】e
妊娠36週で下腹部痛と出血を認める切迫早産例である。血圧が188/122mmHg と妊娠高血圧症候群であること、妊娠36週で胎児推定体重1,500gと胎児発育不全であることから、妊娠高血圧症候群による胎盤機能不全の状態が推定される。骨盤位で内子宮口は閉鎖し、胎児心拍数陣痛図(110G38より)では遅発一過性徐脈を繰り返しており、胎児機能不全の診断で緊急帝王切開が望ましい。
診断から手術までの数十分の間にニカルジピンを点滴静脈する。急激に血圧を下げてはならない。このため、量を調節できるように持続点滴を用いる。
エルゴメトリンは麦角アルカロイドのことであり、子宮収縮促進薬のこと。子宮復古不全に用いるものであり、禁忌。
作問者コメント

高血圧緊急症の対応を問うている。学生には難しかったかもしれないが、選択肢をみて正答にたどり着いてほしい。緊急なのに悠長に経口ということは考えられないのではないかと思ってもらいたい。
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C31 神経 臨床総論
問題
76歳の男性。意識障害のため搬入された。朝食後椅子に座ってお茶を飲んでいたところ、突然崩れるように椅子からずり落ちたため救急搬送された。高血圧と心房細動とを指摘されていたが、これまで治療を受けていない。意識レベルはJCSII-10で、左片麻痺を認める。患者は右利きである。発症3時間後の頭部MRI拡散強調像を示す。
この患者で1か月後に予想される症状として誤っているのはどれか。
- 上着の左右を間違えて袖を通す。
- ジェスチャーの模倣ができない。
- 片麻痺があるのに健常であるように振る舞う。
- 移動するときに左側の人や物にぶつかりやすい。
- 知っている人なのに声を聞かないとわからない。
解説
【テーマ】 劣位半球障害
【正答】b
頭部MRI拡散強調像にて右中大脳動脈の灌流域に高信号を認め、心房細動による心原性脳梗塞と考えられる。したがって1か月後に予測される症状は、患者が右利きであることからも、劣位半球(右)の障害でみられるものであることが分かる。(たとえ左利きであったとしても同じことが多い)
- 着衣失行
- 観念運動失行
- 病態失認
- 半側空間無視
- 相貌失認
観念運動失行は優位半球の頭頂葉障害でみられ、他は劣位半球の障害でみられる。
【参考】108B44
作問者コメント

単語ではなく意味で聞かれると、意外と難しかったんじゃないでしょうか。
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C32 小児科 臨床総論
問題
10か月の男児。5分間の強直間代性けいれんのため搬入された。在胎39週、3,078gで出生した。完全母乳栄養で離乳食は1日1回である。意識は清明。身長70cm、体重8.5kg。体温36.8℃。脈拍95/分、整。血圧116/60mmHg。呼吸数30/分。SpO299%。大泉門平坦、項部硬直なし、肺音清、心雑音なし、内反膝を認める。血液所見:赤血球514万、白血球11,400。血液生化学所見:アルブミン5.0g/dL、ALP 2,052U/L(基準115~359)、血糖175mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 106mEq/L、Ca 6.4mg/dL、P 4.6mg/dL。CRP 0.1mg/dL。
本疾患に特徴的な変化が認められるのはどれか。
- 脳波検査
- 心エコー検査
- 頭部単純MRI
- 腹部超音波検査
- 手関節エックス線撮影
解説
【テーマ】小児のけいれん
【正答】e
けいれんを発症した乳児。完全母乳栄養であるという点に加え、内反膝(O脚)を認めることとCa低値,ALP高値であることからくる病疑いと判断する。ただし、生後2歳までは生理的O脚で、3~5歳は生理的X脚を示す*。くる病ではCaの欠乏により、二次性副甲状腺機能亢進症が生じ、ALPとPTHが高値を示す。乳児では,本症例のように低Ca血症による全身性のけいれんを初発症状とする場合がある。単純X線像では,くる病変化として1)骨幹端の杯状陥凹(cupping)、2)骨端線の拡大(splaying)、3)不整(fraying)、4)毛ばだち (flaring)などのうち少なくとも1つを認めればよい。撮影部位としては、手関節および膝関節が推奨される。
*:日本小児内分泌学会:ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き
【参考】108A49、104E49、103G56
作問者コメント

母乳栄養での留意点を確認する。完全母乳栄養では、母乳性黄疸、ビタミンK欠乏性出血、そしてビタミンD欠乏性くる病をきたしやすい。104E49に手根部エックス線写真(骨端部の不整・拡大がみられる)が出題された。エックス線画像の読影はできるようにしておきたい。予想正答率:50%
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C33 泌尿器科 臨床総論
問題
63歳の女性。筋層浸潤性膀胱癌の精査加療目的で入院中である。入院前に施行した血液検査では異常を認めなかった。膀胱内視鏡検査では、膀胱三角部から膀胱頸部に広がる広基性非乳頭状腫瘍を認め、両側の尿管口は同定できなかった。胸腹部造影CTでは明らかな転移は認めなかった。膀胱全摘術および尿路変更術を施行することになった。膀胱鏡像(A)と腹壁の模式図(B)を別に示す。
尿路変更術を行う際に回腸導管を造設する部位はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説
【テーマ】ウロストミー
【正答】a
ウロストミーの回腸導管は、回腸末端を15 cmほど遊離し、ここに左右の尿管を繋げ、ストーマを右下腹部に設ける。回腸導管を知らなくても、回腸末端(もしくは盲腸)が右下腹部にあることを考えれば解答に至る。
【参考】111I11、108D44
作問者コメント

111I11の改変問題として、回腸導管のストーマの位置を問うた。思考力と応用力を試している。予想正答率:60%
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C34 血液 臨床総論
問題
42歳の男性。頸部のリンパ節腫大を主訴に来院した。数年前から風邪をひきやすいと感じていた。1年前から両側の頸部にリンパ節腫大を自覚していた。最近は寝て起きると布団が濡れているという。自宅近くの医療機関を受診したところ、右頸部リンパ節の生検で悪性腫瘍が疑われたため紹介されて受診した。両側の頸部に径3cmのリンパ節を数個触知する。右頸部に生検跡を認める。両側の腋窩に径2cmのリンパ節を1個触知する。脾を左肋骨弓下に3cm触知する。血液所見:赤血球302万、Hb 9.2g/dL、Ht 30%、白血球30,500(桿状核好中球3%、分葉核好中球3%、単球6%、リンパ球88%)、血小板19万。リンパ節組織生検ではリンパ節全体に増生する多数の腫瘍性濾胞がみられた。
検査の結果、進行期の濾胞性リンパ腫と診断し、R-CHOP療法を開始することとした。治療開始となった初日、最初の薬剤を投与したところ、30分後に患者が掻痒感と呼吸困難感を訴えた。
この病態の原因になった薬剤として最も考えられるのはどれか。
- リツキシマブ
- ドキソルビシン
- ビンクリスチン
- プレドニゾロン
- シクロフォスファミド
解説
【テーマ】infusion reaction
【正答】a
臨床の内容については111G50の改変。B症状の一つである盗汗を追加し、より進行期らしく設定した。
問題で問うているのはinfusion reactionについてである。infusion reactionとは抗体薬投与に伴って起こる副作用の一つである。アナフィラキシーのような症状を訴えることもあり、軽症だと発熱や発疹などの症状が現れる。初回投与時に起こりやすく、重症度も高い。
- 正しい。infusion reactionが起こりやすい
- 誤り。ドキソルビシン(アドリアマイシン)の副作用は心筋障害や骨髄抑制など
- 誤り。ビンクリスチンの副作用は末梢神経障害、イレウスなど
- 誤り。ステロイドとして多くの副作用を持つがinfusion reactionについていえばステロイドはむしろ治療に用いられる
- 誤り。シクロフォスファミドの副作用は出血性膀胱炎や骨髄抑制など
【参考】111G50、113C47、113A4、インフュージョンリアクションとアレルギー反応
作問者コメント

113回でHodgkinリンパ腫の治療薬を聞かれ、また113A4で分子標的薬の副作用も聞かれていることから分子標的薬の副作用として存在するinfusion reactionの問題を設定した。あくまで過去に出たことはないため参考程度に。
【作問者をフォロー】trino246(Twitter)
C35 耳鼻科 臨床総論
問題
70歳の男性。喉頭癌T4N0M0の診断を1年前に受け、喉頭全摘を勧められたが、喉頭の温存を強く希望したため、放射線治療と抗がん剤化学療法の併用療法を行った。最近になって再発を指摘され、喉頭全摘と甲状腺全摘、両側の頸部郭清術を受けることとなった。
術後の状態として患者に説明すべきなのはどれか。3つ選べ。
- 経口挿管は不能となる。
- 便秘をきたしやすくなる。
- 身体障害者の3級が認定される。
- 生涯にわたり副甲状腺ホルモンの投与が必要である。
- 誤嚥をきたしやすい状態になるため肺炎に注意が必要である。
解説
【テーマ】 喉頭摘出
【正答】a,b,c
喉頭全摘後の患者である。頭頸部外科の術後患者の典型である。
術後に便秘、失語、嗅覚障害などはきたし、溺水のリスクとはなるが、誤嚥性肺炎は起こらない。
- 頸部の永久気管孔から呼吸するために経口挿管はありえない。
- 息こらえによって胸腔内圧を上げることができず便秘がちとなる。
- 音声機能喪失により身体障害3級が認定される。
- 甲状腺全摘後には副甲状腺ホルモンではなくビタミンDなどを内服する。
- 気道と食道を分離しているので誤嚥性肺炎が起こりえないことは明らか。気管が頸部に開口するために飲酒時などに入浴して溺水することがある。また、鼻腔が気道から分離されているので匂いが分からなくなる。
【参考】113A23
作問者コメント

113A23は本番での正答率が25%程度とかなり出来が悪かった問題である。頭頸部外科では頻繁に遭遇しうるので、リベンジの出題とした。予想正答率70%
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C36 血液 臨床総論
問題
1990年に起きた交通事故に対する院内カンファレンス記録を抜粋して以下に示す。
40代男性。自らの運転する車の交通事故によって救急車で搬入された。超音波検査により服腔内出血を疑う所見を認め、循環動態を安定させる目的で輸液、輸血、昇圧薬投与が行われた。骨盤部X線撮影により骨盤骨折が見つかり手術が行われた。
事故から2週間後の朝、発熱と下痢が生じ、血液検査で汎血球減少を認め、多臓器不全が生じ同日死亡した。
この患者が死亡した病態となるものについて正しいのはどれか。
- 輸血後10分~2時間ほどで生じる。
- 血縁者間の輸血では発症リスクが高い。
- 日本人は白人と比べて発症リスクが低い。
- 白血球除去フィルターの使用で防止できる。
- 日本において、2000年以降は発生していない。
解説
【テーマ】輸血後GVHD
【正答】b
今の日本では起きないとされていますが、国家試験って医療が克服してきたことを手を変え品を変え出題し「な?すごいやろ?医療の進歩」とどや顔してきます。なので、輸血後GVHDしっかり勉強しときましょう。ちなみに激減はしましたが2007年に適切な処置が行われいないことから発生しています。油断禁物。
- 誤り。発症は輸血後1週間~2週間が多いとされています。
- 正しい。血縁者間では発症リスクが高いです
- 誤り。欧米人はHLAの多様性から日本人よりも輸血後GVHDのリスクは高くないとされています。
- 誤り。防止策としては放射線照射が行われています。(新鮮凍結血漿は凍結時にリンパ球が全部破壊されるため放射線照射は行われていません)
- 誤り。2007年に起こっています。
作問者コメント

輸血後GVHD。一回予防に成功しつつも医療者の中で生じた「油断」で2007年に再興、これ出そうじゃないですか?発症したら死亡率はほぼ100%と怖い疾患なのでしっかり勉強しておきましょう。
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C37 加齢老年学 臨床総論
問題
68歳の男性。嚥下障害を主訴に来院した。
現病歴:1か月前肉片がつかえ、そのときは水を飲んで通過させたが、以後固形食がしばしばつかえるようになった。この1か月で5kgの体重減少がみられる。2日前から水分しか通らなくなった。
生活歴:飲酒週2日、ビール大瓶1本/回を40年間。喫煙30本/日を40年間。
現 症:意識は清明。身長164cm、体重65kg。体温36.1℃。脈拍76/分、整。血圧146/98mmHg。心雑音はなく、呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟。肝・脾を触知しない。
検査所見:血液所見:赤血球365万、Hb 10.9g/dL、Ht 35%、血小板29万。血清生化学所見:総蛋白5.8g/dL、アルブミン2.9g/dL、尿素窒素22mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、総ビリルビン0.6mg/dL、AST 18U/L、ALT 10U/L、Na 146mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 105mEq/L。食道造影では水溶性造影剤の通過が遅延し、食道中部から下部に高度の不整狭窄像を認める。
この患者に対する術前管理としての栄養投与経路で最適なのはどれか。
- 胃瘻
- 経口栄養
- 経鼻経管栄養
- 中心静脈栄養
- 末梢静脈栄養
解説
【テーマ】栄養の投与経路
【正答】d
体重減少、嚥下障害、食道造影所見から、食道癌を疑う。
- 長期の栄養投与経路としては正しいが、術前管理であれば中心静脈栄養を試みる。
- 通過障害があるため、ステント留置などを行わない限り難しい。
- 通過障害があるため、ステント留置などを行わない限り難しい。
- 正しい。
- 末梢からでは十分な栄養が投与できない。
【参考】100D49
作問者コメント

栄養投与経路は、基本的には生理的ルート(経腸)を第一に考えます。
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C38 精神 臨床総論
問題
65歳女性。下肢の不快感を主訴に来院した。以前から夜になると両足に虫が這うような不快感を自覚していた。この不快感は安静にしていると増強するが、足を動かすことで軽減する。日々の軽い運動や足のマッサージなどで1ヶ月ほど経過をみていたが症状は治まらず、最近では,下肢の不快感で眠れないためベッドから起き上がり、その場で足踏みをしている。神経学的に異常を認めず、日常生活動作にも問題はない。血液生化学検査では血清フェリチンを含めて異常を認めない。
この疾患について正しいのはどれか。3つ選べ。
- 睡眠障害の合併が多い。
- 鉄欠乏が発症に関与する。
- 抗てんかん薬で症状が悪化する。
- 腰椎単純MRIが診断に有効である。
- ドパミン受容体作動薬が治療に有効である。
解説
【テーマ】むずむず脚症候群
【正答】a,b,e
特発性のレストレスレッグス症候群(Restless legs syndrome,むずむず脚症候群、下肢静止不能症候群)(以下RLS)の診断である。RLSは中枢のドパミン系機能不全によって発症する。多くは下肢に蟻走感、灼熱感といわれるような不快感が出現し、不随意の周期性四肢運動がみられる。
- 症状は問題文にあるように夜間に多いため、患者は睡眠障害を起こす。
- ドパミンはチロシンからチロシンヒドロキシラーゼによって産生される。チロシンヒドロキシラーゼの補酵素が鉄であるため、鉄欠乏によって発症リスクが高まる。もし鉄欠乏により低フェリチン血症となっていた場合は経口鉄剤投与を検討する。間欠的RLSであればレボドパ〈L-dopa〉投与を検討する。
- 抗てんかん薬のクロナゼパムはeのドパミンアゴニストと並んで臨床現場で用いられる。軽症例RLSの睡眠障害に有効である。ガバペンチンのプロドラッグであるガバペンチンエナカルビルも用いられる。
- 画像上異常は認めない。
- RLSの第一選択薬である。ドパミンアゴニストとしてはプラミペキソール塩酸塩水和物錠0.125mg、ロチゴチン経皮吸収型製剤2.25mgが有効である。剤型や容量は薬剤師国家試験レベルなので覚えなくてもよいが,プラミペキソールという薬剤名は105I17でも出題があったため、覚えておくとよい。
【参考】112A26,108I2,106I38,105I17
作問者コメント

高い正答率を期待している。予想正答率85%
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C39 小児科 臨床総論長文
問題
【症例】1ヶ月女児。
【主訴】発熱
【現病歴】来院日の13時に38.5℃の発熱があり、その後解熱しないため17時に救急外来を受診した。完全母乳栄養。本人に咳嗽や鼻汁はないが、2歳の保育園に通う姉が咳をしている。
【周産期歴】在胎41週0日、頭囲経膣分娩、出生時身長51cm、体重3,300g、Apgarスコア8/9。
【現症】身長55cm、体重4,300g、体温39.1℃、脈拍180/分、整。SpO2 99%(room air)、機嫌良好、大泉門平坦、項部硬直なし、咽頭発赤なし、呼吸音 清、心音 純、腹部平坦・軟、腸蠕動音正常、末梢冷感なし。
【検査所見】血液所見:Hb 11.3g/dL、白血球18,500 (好中球 90.3%、リンパ球 3.7%)、血小板34.5万。血液生化学検査:総タンパク5.0g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン0.49mg/dL、AST 32U/L、ALT 18U/L、LD 260U/L(基準176~353)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.33mg/dL、Na 136mEq/L、K 5.3mEq/L、Cl 106mEq/L、CRP 2.5mg/dL。
この時点で本患児の診療において正しいのはどれか。
- 姉から感染したウイルスによる発熱と考え、対症療法を行う。
- 髄膜炎の可能性は低いため、髄液検査は不要と考える。
- 体重増加不良があるため、原因精査が必要である。
- 高カリウム血症を補正する。
- 直ちに入院精査を行う。
解説
【テーマ】乳児期早期(3ヶ月未満)発熱
【正答】e
- 低月齢でウイルス感染とすぐに確定診断してしまうのは危険です。炎症反応の上昇もあり、まずは細菌感染症を疑う必要があります。
- 低月齢では髄膜炎の兆候は身体所見にあわられないことも多いので、発熱がある限り髄液検査は基本的に必要です。
- 体重増加の正常範囲を問うています。成長発達の基本的な知識は小児診療全般で大切です。1ヶ月で1kg程度増えているので、概ね1日あたり30g程度と考え、適正とみてよいでしょう。
- 低月齢ではカリウムはやや高めで正常です(成人でもすごく大きな異常というほどではないですが)。
- 0~1ヶ月では絶対適応です。2ヶ月後半だと状況により外来フォローをすることもありますが、一般的には入院が望ましいとされています。
C40 小児科 臨床総論長文
問題
【C39続き】
追加検査でRSウイルスの迅速検査が陽性であった。
正しい対応はどれか。
- 細菌感染症は否定できないため、血液培養と尿培養を採取する。
- 月齢が低いため、カルバペネム系の抗菌薬を予防的に投与する。
- 気道症状がないため、胸部単純レントゲン撮影は不要である。
- 空気感染するため、入院の場合は個室管理が望ましい。
- 誤嚥防止のため哺乳を止め、十分な輸液を行う。
解説
【テーマ】乳児期早期(3ヶ月未満)発熱
【正答】a
臨床的な感覚と基本的な知識を問うています。
- 低月齢における発熱疾患の診療においては、菌血症や尿路感染の可能性を常に念頭におく必要があります。
- たいていABPC+CTXかABPC+GMかABPC単剤が使用されます。カルバペネムの適応は限られていますよね。
- 低月例の場合症状がないことから肺炎が否定できないこと、気道症状以外の状況把握も必要なことからレントゲンは必要です。たとえば先天性心疾患、心不全のスクリーニングになりますし、胸腺がなければ複合免疫不全かもしれませんね。
- RSウイルスは飛沫または接触感染です。空気感染はしません。
- 哺乳が可能であれば止める必要はないです。これも実習をみてればわかると思います。成人でも食べられるなら食べた方がいいですよね。
C41 小児科 臨床総論長文
問題
【C40続き】
次に尿検査を行い、定性で膿尿が認められた。正しいのはどれか。
- まず腹部造影CTを行う。
- バッグ尿で尿培養を提出する。
- 本児の月齢でも尿路感染は男児より女児の方が多い。
- 尿路感染であれば、大腸菌が起因菌として最多である。
- RSウイルスの迅速検査が陽性と判明しているので、尿路感染は否定してよい。
解説
【テーマ】乳児期早期(3ヶ月未満)発熱
【正答】d
- まずはエコーです。
- バッグ尿では尿検査の結果が信用できないため、未施行であればカテーテル尿による再検と尿培養の提出が必要です。
- 3ヶ月未満では男児の方が多いです。これは尿路がより複雑であるため、CAKUT(先天性腎尿路異常)などのエラーが生じやすいためと考えられています。成人との違いは大事ですね。
- 正しいです。大腸菌でない場合は、CAKUT・VUR(膀胱尿管逆流)の頻度が上がります。実際はほとんどが大腸菌ですね。
- commonなウイルスなので、混合感染はいくらでもあり得ます。1ヶ月なので、簡単に否定してはいけません。
作問者コメント

乳児期早期(3ヶ月未満)発熱が題材で、細菌感染症を念頭に置いた早めの全身の評価が必要であること、先天性疾患も念頭に置くこと、基本的な成長発達の知識は常に必要であること、身体所見や症状がわかりにくいこと、など小児科特有の認識がポイントになります。
【作問者をフォロー】ゴクウ先生(Twitter)
C42 眼科 臨床総論長文
問題
40歳男性。視力低下のため来院した。10年前から健康診断で尿糖陽性を指摘されていたが、自覚症状がなかったため、数回の通院しかしたことがない。父親が糖尿病で治療中である。身長175cm、体重82kg、脈拍88/分、整。血圧166/92mmHg。尿所見:蛋白4+、糖3+。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン3.5g/dL、クレアチニン2.2mg/dL、空腹時血糖186mg/dL。
この男性の視力低下の原因の診断に必要ないのはどれか。
- 2回に及ぶHbA1cの測定
- 後日の血糖測定
- 口渇症状
- 体重減少
- 多尿
解説
【テーマ】糖尿病
【正答】a
糖尿病の診断には、血糖測定による糖尿病型高血糖を異なる日時で2回存在する、もしくは1回の糖尿病型高血糖の存在と、HbA1c高値もしくは糖尿病典型症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)が必要とガイドラインに明記されていますのでそこから出題しました。
C43 眼科 臨床総論長文
問題
【C42続き】
眼底検査を行ったところ増殖前糖尿病網膜症の結果を得た。視力は右0.6(矯正不能)、左0.4(矯正不能)である。
この患者の眼底所見として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 新生血管
- 点状出血
- 軟性白斑
- 牽引性網膜剥離
- 線維血管性増殖膜
解説
【テーマ】糖尿病性網膜症
【正答】b,c
増殖網膜症に至っていないことを判別できるかが今回のポイントです。様々な分類がありますが、汎用されているDavis分類を参考に出題しました。増殖網膜症は、新たな構造ができるか、大きな出血、破壊が認められれば増殖網膜症と判定できます。
新生血管や増殖膜など新しい構造があったり、網膜剥離などの大きな破壊が認められれば、最重症病型となっているといえます。
答え選択肢となった点状出血は単純網膜症から、軟性白斑は増殖前網膜症より確認できます。
C44 眼科 臨床総論長文
問題
【C43続き】
この患者の指導方針として適切なのはどれか。
- 経過観察
- 硝子体手術
- 散瞳薬の投与
- レーザー凝固術
- 早急な血糖コントロール
解説
【テーマ】糖尿病性網膜症
【正答】d
患者は糖尿病増殖前網膜症であり、インスリンを用いた急激な血糖コントロールや息を止めたりジャンプしたり衝撃が加わる運動によって眼底出血のリスクが増加することが示唆されているため控える必要があります。
極端な視力低下には至っておらず、硝子体手術はまだ不要であると考えられますが、糖尿病の緩やかな治療やレーザー凝固術、VEGF抗体の投与など病勢の進行を抑制したいため、経過観察も不適当です。
作問者コメント

どの情報も重要な項目です。その中でも「尿糖指摘のみの糖尿病患者に対してしっかり患者の状況を把握できるか」という点が最も大切です。
【作問者をフォロー】朱雀(Twitter)
C45 呼吸器 臨床総論長文
問題
75歳男性、3日前から発熱と呼吸困難を主訴に来院した。3年前より呼吸困難があったが、そのままにしていた。咳と痰とはないが,労作時に呼吸困難が増強する。喫煙は40本/日を50年間。意識は清明。身長160cm、体重43kg、体温38.2℃。脈拍70/分、整。血圧152/85mmHg。心音に異常を認めない。呼吸音は減弱していて右肺にcorase cracklesをみとめる。血液所見:赤血球512万、Hb 15.5g/dL、Ht 47%、白血球13,000、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン4.5g/dL、尿素窒素25.0mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、総ビリルビン0.5mg/dL、AST 15U/L、ALT 10U/L、LD 167U/L(基準176~353)、ALP 160U/L(基準260以下)。CRP 1.2mg/dL以下。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.42、PaO2 57Torr、PaCO2 36Torr、X線にて右上下肺野の網状陰影を認め、CTでは気腫性変化と右上葉と右下葉の浸潤影を認める。
この患者は当院呼吸器内科に先週来院していたことがわかった。
その時行った肺機能検査所見として最も適切なものはどれか。
- %VC 97%,FEV1% 88%,%DLCO 95%
- %VC 62%,FEV1% 88%,%DLCO 63%
- %VC 97%,FEV1% 58%,%DLCO 95%
- %VC 97%,FEV1% 58%,%DLCO 63%
- %VC 62%,FEV1% 58%,%DLCO 95%
解説
【テーマ】COPD
【正答】d
国試の問題を少しいじって作成しました。連問1問目は選択肢そのままです。
【参考】102A51
C46 呼吸器 臨床総論長文
問題
【C45続き】
入院加療が必要と判断し、この患者を入院させた。入院の根拠となったのはどれか。3つ選べ。
- 血圧
- 年齢
- PaO2
- 尿素窒素
- 肺の気腫性変化
解説
【テーマ】ADROP
【正答】b,c,d
qSOFAによる敗血症の話題と共に、SIRSが少し消極的になった昨今。似たような項目にADROP、IROADというものがあります。この2つは国試で尋ねられてもおかしくないということでややこしいので、ADROPを出題しました。今回は年齢(男性≧70)、BUN(≧21mg/dL)、PaO2(<60)から3点で、入院となります。
C47 呼吸器 臨床総論長文
問題
【C46続き】
この患者を入院加療としていたところ、病室で加熱式煙草を使用していたことが分かった。本人は「加熱式煙草と普通の煙草は違うものだし、他人に迷惑をかけていない。」という。この患者に禁煙してもらうために根拠となる法律はどれか。
- 医療法
- 健康増進法
- 健康保険法
- 地域保健法
- 根拠となる法律はなく、病院規則のみでの説得
解説
【テーマ】健康増進法
【正答】b
2018年度にちょっとした話題になったので出題しました。受動喫煙防止=健康増進法なのですが、平成30年7月より、健康増進法の改正と共に加熱式電子タバコの記載がなされたのです。興味がある人は読んでみてください。1年たって話題性があるかなと思ったので出題しました。
作問者コメント

模試において大事なのはtraditionalな傾向と対策だと思っているので、いかに難しすぎない問題を作るかとても悩みました。もし、これらの問題を見て難しいなと思った人は、気にしなくて構いません。Traditionalな問題よりもそれぞれが大事だと思っている事項をまとめた問題が多いと思いますので、それぞれ新しい発見を力にしていきましょう。
【作問者をフォロー】朱雀(Twitter)
C48 産婦人科 臨床総論長文
問題
25歳の初産婦。妊娠40週2日。妊娠経過は良好であった。午前5時に陣痛が発来し、午前7時に来院した。身長156cm、体重64kg(非妊時52kg)。胎児推定体重3,320g。来院時の診察にて、胎児心拍数は130bpm、第1頭位。内診所見は、子宮口4cm開大、展退度40%、Station-1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は中央であった。また、未破水で、回旋異常はみられない。
来院時の内診所見図で正しいのはどれか。ただし、図の上が母体腹側、下が母体背側を示し、 ◇は大泉門、Yは小泉門を表す。
- 内診所見A
- 内診所見B
- 内診所見C
- 内診所見D
- 内診所見E
解説
【テーマ】胎児の回旋
【正答】b
まず前提として、先進部が頭頂部の時に大泉門(♢)が、後頭部の時に小泉門(Y)が見えます。
この児は第1頭位ですので、母体の左側に背を向けている状態になります。したがって、母体の右側を向いているbまたはcが考えられます。
次にこの児の先進部はSPー1であり、すでに第1回旋を終えて、骨盤入口部に頭部が侵入している状態である。したがって、小泉門が先進しているbが正解です。
【参考】助産師国家試験
C49 産婦人科 臨床総論長文
問題
【C48続き】
午前7時の時点でのBishop scoreは何点か。
- 9点
- 8点
- 7点
- 6点
- 5点
解説
【テーマ】Bishop score
【正答】b
Bishop scoreは以下の通りです。
点数 | ||||
0 | 1 | 2 | 3 | |
展退度(%) | 0-30 | 40-50 | 60-70 | 80- |
児頭位置(SP) | -3 | -2 | -1 or 0 | +1 |
頚部の硬さ | 硬 | 中 | 軟 | (なし) |
頚管開大度(cm) | 0 | 1-2 | 3-4 | 5-6 |
子宮口の位置 | 後 | 中 | 前 | (なし) |
- 子宮口4cm開大=2点
- 展退度40%=1点
- Station-1=2点
- 子宮頸管の硬度は軟=2点
- 子宮口の位置は中央=1点
したがって、合計は8点となります。
C50 産婦人科 臨床総論長文
問題
【C49続き】
午後0時の内診所見は、子宮口6cm開大、展退度50%、Station+1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方。陣痛間欠7分、陣痛発作30秒であり、オキシトシン点滴静脈内注射が開始された。点滴開始後2時間で、最下点85bpm、持続時間40秒の変動一過性徐脈が1回みられたが、胎児心拍数基線130bpm、基線細変動は正常であった。その後順調に陣痛が増強し、午後4時30分に破水した。陣痛間欠1分30秒、陣痛発作60秒。内診所見は子宮口全開大、展退度100%、Station+3、回旋は正常。羊水混濁を軽度認めた。さらに2時間後に内診したが所見は変わらず、産瘤が増大している。内診後の胎児心拍数陣痛図を示す。
今後の方針で最も適切なのはどれか。
- 経過観察
- 鉗子分娩
- 帝王切開
- 頸管熟化薬投与
- オキシトシン投与
【参考】助産師国家試験
解説
【テーマ】胎児機能不全の対応
【正答】b
午後0時に子宮収縮薬であるオキシトシンを投与して子宮収縮を促進した結果、過強陣痛による変動一過性徐脈がみられるようになった。午後6時半のCTGでも変動一過性徐脈が複数回みられている。
臍帯圧迫による胎児機能不全が疑われるため、胎児の娩出を急ぐべきと考えられる。
- 分娩を急ぐべきである。
- 子宮口全開大、頭位(回旋異状なし)、破水済み、SP+3より、鉗子分娩の適応を満たす。
- まずは鉗子分娩を試みる。
- 午後0時のBishop scoreは11点であり、9点を超えていることから、すでに頸管は熟化していると判断できるため、不必要である。
- 禁忌。さらに陣痛を強くしてしまうことになり、胎児が危険である。
補足として、産瘤は児頭の圧迫によるもの、羊水混濁は胎児がストレスで胎便排出をしたものと考えられる。
作問者コメント

作問のために助産師国家試験を漁っていたのですが、非常に良問揃いでした。産婦人科に興味がある方は、一度解いてみてはどうでしょうか。
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C51 泌尿器科 臨床総論長文
問題
17歳の男子。右陰囊部の疼痛を主訴に午後3時に来院した。痛みは本日午前5時ころから出現し、一度は学校へ登校していたが、 徐々に疼痛が増悪し嘔気も出現ていた。「恥ずかしいから」という理由で誰にも言い出せず、午後の授業中に教員に冷汗を指摘され救急車で来院した。意識は清明。身長175cm、体重76kg。体温36.5℃。脈拍92/分、整。血圧130/70mmHg。右陰嚢はテニスボール大に腫大している。
この患者でみられるのはどれか。2つ選べ。
- Prehn徴候陽性
- 陰嚢透過性陽性
- Kernig徴候陽性
- 精巣挙筋反射陰性
- Blumberg徴候陽性
解説
【テーマ】精巣捻転
【正答】a,d
- Prehn徴候は睾丸を持ち上げると疼痛が生じる徴候。
- 陰嚢水腫の所見。
- 髄膜刺激徴候。
- 精巣挙筋反射は、大腿内側をさすると睾丸が挙上する反射。
- 腹膜炎の徴候。
C52 泌尿器科 臨床総論長文
問題
【C51続き】
血液所見:赤血球487万、Hb 14.2g/dL、Ht 36%、白血球6,200、血小板23万。 尿素窒素12mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL。陰囊のパワードプラ超音波像を示す。
この患者への対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 右精巣摘出術
- 左側精巣固定術
- 左側精巣整復術
- 左側精巣経過観察
- 右側精巣整復固定術
解説
【テーマ】精巣捻転
【正答】a,b
右精巣はパワードプラで血流の消失を認めている。疼痛が生じてから6時間まではゴールデンタイムと呼ばれ、造精機能が温存できる可能性がある。しかし、今回の患者は疼痛発生から来院まで10時間が経過しており、造精機能の温存は期待できない。温存可能であれば整復+固定を行う。
左精巣は血流に異常はない。対側で捻転が生じてしまっている場合、もう対側も捻転が生じやすい。このため、経過観察ではなく、固定術を行う。
C53 泌尿器科 臨床総論長文
問題
【C52続き】
患者に対する説明として正しいのはどれか。
- 「今後、勃起障害がみられます」
- 「今後、排尿障害がみられます」
- 「今後、右側精巣の造精機能は回復しません」
- 「今回の疾患に起因する脳腫瘍を発症する可能性が高いです」
- 「性感染症が原因の疾患なのでパートナーも検査してもらってください」
解説
【テーマ】精巣捻転
【正答】c
他の選択肢は関係ない。
作問者コメント

正確に記憶していないと解答に迷うものであったと思う。今回出来なくてもマイナー科目は暗記だと割り切って直前に全ツッパしてほしい。
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C54 腎 臨床総論長文
問題
42歳女性。主訴:1か月前からの全身倦怠感と高血圧。
身長158cm、体重52kg、体温36.2℃、脈拍96/分、整、血圧162/102mmHg、呼吸数16/分、眼瞼結膜は蒼白。
3か月前の健康診断:血圧124/74mmHg、尿蛋白(-)、尿潜血(-)クレアチニン0.8mg/dlであった。
現在は心音呼吸音に異常なし。腹部は平坦軟。下腿に浮腫を認めない。尿所見:蛋白2+、潜血3+、血液所見:赤血球290万、Hb 11.8g/dL、Ht 21%、白血球7,000、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン2.9g/dL、尿素窒素46mg/dL、クレアチニン6.9mg/dL、尿酸6.1mg/dL、Na 135mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 102mEq/L、Ca 8.9md/dl。CRP 0.5mg/dL。エコーにおいて水腎症の所見を認めず、腎の長径は左右共に14cm。
追加して行う質問として、最も重要度が低いのはどれか。
- 既往歴
- 排尿時痛の有無
- 激しい運動の有無
- 服薬歴・サプリメント歴
- 最近風邪をひいていないかどうか
解説
【テーマ】急性腎不全(AKI)
【正答】b
BUN、Cr、Kの上昇を認める点から なんか腎の調子が悪いな~ってことがわかりますね。 これだけでまず「腎に何か起きている」と疑っていきましょう!
腎性腎不全を起こしうる項目(基礎疾患、併存疾患の有無の確認、薬の副作用、サプリメントの影響であることの確認、横紋筋融解症を疑うようなエピソードの確認)を意識しました。
ちなみにAKIの定義としては以下の三つがあります。
- 48時間以内に血清Cr値が0.3mg/dl上昇した場合
- 血清Cr値がそれ以前7日以内に分かっていたか、予想される基準値より1.5倍の増加があった場合
- 尿量が6時間にわたって0.5ml/kg/時 未満に減少した場合
この患者さんの場合、3か月前の健康診断の値から予想される血清クレアチニン値より高い値を示す為AKIと診断されます。3か月前の健康診断では腎に問題はなかったため、CKD(慢性腎臓病)ではないことが分かると思います。
C55 腎 臨床総論長文
問題
【C54続き】
次に行うものとして考慮すべき検査はどれか。
- 腎生検
- 膀胱鏡
- 腎動脈造影
- レノグラム
- 75gOGTT
解説
【テーマ】急性腎不全(AKI)
【正答】a
蛋白と血尿を認める場合、腎生検が考慮されます。
C56 腎 臨床総論長文
問題
【C55続き】
適切でない対応はどれか。
- 血液透析を行う。
- 原因薬物があれば中止を検討する。
- 激しい運動があればCKを測定する。
- サプリメントを飲んでいれば成分を確認する。
- 重症化した場合はステロイド使用を検討する。
解説
【テーマ】急性腎不全(AKI)
【正答】a
今回は血液透析を考慮するような検査結果はみられません。
腎機能低下が原因でKが6mEq/l以上を呈したり、肺水腫が見られたりする場合考慮されます。
緊急に血液透析を行う場合、シャントなどを増設する訳ではなく、末梢からカテーテルを入れて、中心静脈に留置したりします。
穿刺部位としては 大腿静脈、内経静脈、鎖骨下静脈などが候補にあがります。
作問者コメント

AKIの鑑別、対応を聞いてみることで「あ!AKI! あったなー! 腎前性、腎性ってどう鑑別するんだっけ?」となって復習がはかどってほしいなという気持ちを込めました。FENaの計算式とかGFRの計算とか練習しましょ 僕もするので・・・はー嫌だ。
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C57 循環器 臨床総論長文
問題
78歳の男性、めまいを主訴に来院した。
現病歴:1ヵ月前、夕食の準備をしていたところ気が遠くなるようなめまいを自覚したが、食後に症状が改善した。7日前、朝食前に新聞を読んでいたところ同様のめまいを自覚したが、食後に症状が改善した。今朝起床後に散歩をしていたところ、冷汗とめまいを自覚したため救急外来を受診した。
既往歴:心房細動と高血圧に対して5年前から薬物治療を受けている。心不全や糖尿病、脳卒中やTIAの既往はない。
現症:意識は清明。身長170cm、体重68kg。体温36.0℃、脈拍96/分、整。血圧132/80mmHg。生あくび、冷汗を認める。心音と呼吸音ともに異常を認めない。下腿に浮腫を認めない。呂律不良はなく、四肢麻痺を認めない。
本症例のCHADS2スコアはどれか。
- 0点
- 1点
- 2点
- 3点
- 4点
解説
【テーマ】CHAD2スコア
【正答】c
CHAD2スコアは以下の通りである。
C | 心不全, 左室機能不全 | 1点 |
H | 高血圧症 | 1点 |
A | 年齢75歳以上 | 1点 |
D | 糖尿病 | 1点 |
S | 脳梗塞, 一過性脳虚血発作の既往 | 2点 |
この症例では、「年齢75歳以上」「高血圧症」が当てはまるため、合わせて2点となる。
C58 循環器 臨床総論長文
問題
【C57続き】
この患者でまず行うべき検査はどれか。
- 頭部CT
- 胸部X線
- 血糖測定
- 12誘導心電図
- トロポニン測定
解説
【テーマ】まず行う検査
【正答】c
典型的な低血糖症状を認めるため、まず血糖測定を行う。
C59 循環器 臨床総論長文
問題
【C58続き】
症状の原因となったと考えられる薬剤はどれか。2つ選べ。
- シベンゾリン
- ジソピラミド
- アミオダロン
- アムロジピン
- ビソプロロール
解説
【テーマ】抗不整脈薬の副作用
【正答】a,b
シベンゾリン、ジソピラミドは副作用として低血糖、心不全などを起こす。
作問者コメント

CHADS2スコアを計算できること、救急でよく出会う低血糖症状を把握すること、糖尿病薬以外に低血糖を起こしうる薬剤を把握することを意図に作問しました。
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C60 公衆衛生 臨床総論長文
問題
運転免許センターに普通自動車免許の更新に来た150名に、「運転事故を起こした経験」および「運転中にスマートフォンを覗き見る習慣」の有無を質問した。事故経験者は50名で、このうち50%がスマートフォンを覗き見ていた。事故未経験者におけるスマートフォンの覗き見率は20%であった。
スマートフォンの覗き見習慣の運転事故に対するオッズ比を求めよ。
解説
【テーマ】オッズ
【正答】40(%)
オッズ比の計算である。
まずは、2×2表を完成させる。
事故経験あり | 事故経験なし | ||
スマートフォンを見ていた | 25名(50名の50%) | 20名(100名の20%) | 45名(25+20) |
スマートフォンを見ていなかった | 25名(50-25) | 80名(100-20) | 105名(25+80) |
50名 | 100名(150-50) | 150名 |
この表より、オッズ比は25×80/20×25=4.0となる。
作問者コメント

疫学の効果指標に関する出題である。相対危険度、寄与危険度、寄与危険割合、集団寄与危険割合、オッズ比、NNTの意味と計算はできるようになっておこう。予想正答率:60%
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