宣言は頻出分野
医療に関係する宣言とその内容には、以下のようなものがあります。
- ジュネーブ宣言:医師の倫理
- ヘルシンキ宣言:医学研究
- アルマ・アタ宣言:健康
- リスボン宣言:患者の権利
- シドニー宣言:死亡判定
- マドリード宣言:医師会の在り方
国試の必修分野では、宣言とその内容の組み合わせ問題が頻出です。
組み合わせとして出題されそうなものは覚えておきましょう。

ジュネーブ宣言は平成30年度のガイドライン改定で新たに盛り込まれまたんだ。むしろ今まで入ってなかったことに驚きだよ。
ジュネーブ宣言
ジュネーブはスイスの都市です。
紀元前に書かれた「ヒポクラテスの誓い」を宣言として、医の倫理について明確化したものです。

ヒポクラテスの誓いには、「First, do no harm.(ラテン語:Primum non nocere、日本語:何よりもまず害をなすなかれ)」という有名な言葉があるよ。
類似の内容として、「医師憲章」や「医師の職業倫理指針」があります。
ヘルシンキ宣言
ヘルシンキはフィンランドの都市です。
ヒト(被験者)を対象とする医学研究の倫理についての宣言です。
類似の内容として、「人を対象とする医学研究に関する倫理的指針」や「ニュルンベルグ綱領(こうりょう)」があります。
アルマ・アタ宣言
アルマ・アタ(現・アルマティ)はカザフスタンの都市です。
「すべての人々に健康を(Health For All)」を理念とした、プライマリヘルスケアについての宣言です。
プライマリヘルスケアは、「primary(最初の)」という名前通り、病気を防ぐための基盤について言及しています。
プライマリヘルスケアの例)環境衛生、予防接種の普及、食糧や医薬品の確保など
類似の内容として、ヘルスプロモーションについての宣言である「オタワ憲章」と「バンコク憲章」があります。
ヘルスプロモーションは、「promote(促進する)」という名前通り、健康を促進するための取り組みについて言及しています。
ヘルスプロモーションの例)健康的な公共政策づくり、コミュニティの活動強化。個人的スキルの強化など
健康に関する宣言・憲章の覚え方「バンコクのヘルスであたってオワタ」
バンコクの→バンコク憲章
ヘルスで→健康(ヘルス)に関する宣言・憲章 ※ヘルス=風俗店のこと
あたって→アルマ・アタ宣言
オワタ→オタワ憲章

アルマ・アタ宣言はプライマリヘルスケア、オタワ・バンコク憲章はヘルスプロモーションだよ。「ア」に注目してみよう。
おまけ:MDGsとSDGs
MDGsとは
ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)とは、2000年の国連サミットで採択された「ミレニアム宣言」をまとめたもので、2015年までに達成すべき8つのゴール・21のターゲット・60の指標を示したものです。
以下に8つのゴールを紹介します。
- 極度の貧困と飢餓の撲滅(達成)
- 初等教育の完全普及の達成
- ジェンダー平等推進と女性の地位向上
- 乳幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止(達成)
- 環境の持続可能性確保
- 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
達成目標に掲げられているものが、発展途上国が直面している課題であることがポイントです。
SDGsとは
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」をまとめたもので、2030年までに達成すべき17のゴール・169のターゲット・232の指標を示したものです。
以下に17のゴールを紹介します。
- あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
- 飢餓をゼロに
- あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
- 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する
- レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
- 国内および国家間の不平等を是正する
- 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
- 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する
- 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する

アジェンダは「議題」という意味だよ。ビジネス横文字として使われることも多いよね。
MDSsを達成しようとする中で浮き彫りになった「格差」に対しての目標を加えてMDGsを引き継いだものが、SDGsに当たります。
MDGsが発展途上国をメインとしてきたのに対し、SDGsは「世界中の誰一人として取り残さない(leave no one behind)」ことをスローガンとして先進国自身も取り組むユニバーサル(普遍的)なものとなっています。
SDGsの3つ目のゴール「全ての人に健康と福祉を(Good Health and Well-being)」には、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成という項目が含まれています。
おまけ:ODAとJICA
先進国が途上国を援助することを政府開発援助(ODA)といいます。
なかでも、日本と途上国の二国間でのODAを取り仕切る組織を、日本国際協力機構(JICA)といいます。
2016年の時点では、日本はODAの中でもアジア諸国(1位インド2位ベトナム)に対する二国間の有償援助(貸与)を重視しており、支出額は世界4位です。
練習問題①:104B13
第1回健康増進(ヘルスプロモーション)国際会議で採択されたのはどれか。
- WHO憲章
- オタワ憲章
- リスボン宣言
- ヘルシンキ宣言
- アルマ・アタ宣言
練習問題②:108G4
国連ミレニアム開発目標〈MDG〉に含まれないのはどれか。
- 初等教育の普及
- 高度医療の推進
- 極度の貧困の撲滅
- 乳幼児死亡率の削減
- HIV/エイズの蔓延防止